琉唯の左手が僕の頬に触れてきて、肩がびくんと跳ねる。
まるで琉唯の手のひらの温度が僕へと移ってくるみたいだ。
何も答えられずに困っているのが僕の答えだとわかっているのか、目を逸らしていても琉唯にじっくり見つめられているのがわかる。
自分からノアさんの話題を選んだことに僕は深く後悔していた。
例え恋人同士じゃなかったとしても、いろんなもので琉唯とノアさんは繋がっているんだと琉唯の口から言われると実感できてしまって。
何か話題を変えなくては。
「琉唯は咲良菜緒の出演映画で何が一番好き?」
「ん、そうだな。その時の気分によっても変わる。優陽は?」
「僕もそうだけど、一番は……」
「あ、待って。せーので言おっか? せーの……」
「「『夢幻の春』」」
僕と琉唯の視線と声がピタリと重なる。
思わず琉唯も僕も少し無言になって、同じタイミングで二人揃って噴き出してしまった。
「優陽も? あれ、いいよな。咲良菜緒の役が実は死んでいたって話」
「うん。咲良菜緒の表情の演技を見てると自分も胸が苦しくなる」
「わかる。あの映画の咲良菜緒って演技だけで本当に身体が透けていきそうに見えるんだよな。どうしたら、あんな風に演じられるんだろ」
そう語る琉唯の活き活きとした表情はやっぱり無邪気な美少年へと変化する。
昨日今日と琉唯と話していて感じるのは僕と琉唯は咲良菜緒の映画の見方が違う。
僕は純粋に映画鑑賞しているけれど、琉唯は咲良菜緒がどう役を演じているのか、自分だったらこの演技が出来るのか、どうしたらこの演技が自分に出来るのか、まるで咲良菜緒をお手本とするように自分に落とし込みながら見ている。
咲良菜緒と同じ俳優という仕事をしている琉唯ならではの視点だと感じた。
「……琉唯はもうちゃんと働いていて、俳優としての実績も重ねていてすごいな……」
僕じゃなく咲良菜緒が生きていたら良かったのに……。
何のために生きているのかわからない僕とみんなに求められている琉唯。
人気も実力も兼ね備えている若手№1ともいわれる俳優。
何もかも僕と違いすぎる……。
「――俺は優陽に褒められるような人間じゃねぇよ」
琉唯の声音が一段と低くなった。
「この仕事してるのも金目当てってだけ」
また、この綺麗だけど自嘲気味な笑みを琉唯にされると、僕の胸が苦しいと悲鳴をあげる。
僕と違いすぎる琉唯なのに、哀愁をたたえたような目をされるとその心の裡で何を考えているのか気になって仕方なくなった。
「今日の放課後は仕事でこれない」
「そうなんだ」
「俺のスケジュール3年先までぎっしりなんだと」
「大変だね」
「ん。だから……」
また僕の頬に琉唯は手を添えてくる。
どうしても肌に触れられると、びくっと身体が震えてしまう。
「何その反応? 優陽は何から何までかわいいよな」
「かわいいって言われても僕は男だし嬉しくないよ。いきなり触らないでほしい」
琉唯が見ているのは僕じゃなくて咲良菜緒なのだから。
力が抜けたように琉唯は柔らかく微笑むと、
「優陽が俺を癒してよ」
と、俺の肩口に頭をのせて抱き締めてきた。
僕は咲良菜緒の代わりでしかないのに……。
どうしようもなく琉唯が傷を負っているようになぜか見えてしまって、返事の代わりにそのままにされていた。
まるで琉唯の手のひらの温度が僕へと移ってくるみたいだ。
何も答えられずに困っているのが僕の答えだとわかっているのか、目を逸らしていても琉唯にじっくり見つめられているのがわかる。
自分からノアさんの話題を選んだことに僕は深く後悔していた。
例え恋人同士じゃなかったとしても、いろんなもので琉唯とノアさんは繋がっているんだと琉唯の口から言われると実感できてしまって。
何か話題を変えなくては。
「琉唯は咲良菜緒の出演映画で何が一番好き?」
「ん、そうだな。その時の気分によっても変わる。優陽は?」
「僕もそうだけど、一番は……」
「あ、待って。せーので言おっか? せーの……」
「「『夢幻の春』」」
僕と琉唯の視線と声がピタリと重なる。
思わず琉唯も僕も少し無言になって、同じタイミングで二人揃って噴き出してしまった。
「優陽も? あれ、いいよな。咲良菜緒の役が実は死んでいたって話」
「うん。咲良菜緒の表情の演技を見てると自分も胸が苦しくなる」
「わかる。あの映画の咲良菜緒って演技だけで本当に身体が透けていきそうに見えるんだよな。どうしたら、あんな風に演じられるんだろ」
そう語る琉唯の活き活きとした表情はやっぱり無邪気な美少年へと変化する。
昨日今日と琉唯と話していて感じるのは僕と琉唯は咲良菜緒の映画の見方が違う。
僕は純粋に映画鑑賞しているけれど、琉唯は咲良菜緒がどう役を演じているのか、自分だったらこの演技が出来るのか、どうしたらこの演技が自分に出来るのか、まるで咲良菜緒をお手本とするように自分に落とし込みながら見ている。
咲良菜緒と同じ俳優という仕事をしている琉唯ならではの視点だと感じた。
「……琉唯はもうちゃんと働いていて、俳優としての実績も重ねていてすごいな……」
僕じゃなく咲良菜緒が生きていたら良かったのに……。
何のために生きているのかわからない僕とみんなに求められている琉唯。
人気も実力も兼ね備えている若手№1ともいわれる俳優。
何もかも僕と違いすぎる……。
「――俺は優陽に褒められるような人間じゃねぇよ」
琉唯の声音が一段と低くなった。
「この仕事してるのも金目当てってだけ」
また、この綺麗だけど自嘲気味な笑みを琉唯にされると、僕の胸が苦しいと悲鳴をあげる。
僕と違いすぎる琉唯なのに、哀愁をたたえたような目をされるとその心の裡で何を考えているのか気になって仕方なくなった。
「今日の放課後は仕事でこれない」
「そうなんだ」
「俺のスケジュール3年先までぎっしりなんだと」
「大変だね」
「ん。だから……」
また僕の頬に琉唯は手を添えてくる。
どうしても肌に触れられると、びくっと身体が震えてしまう。
「何その反応? 優陽は何から何までかわいいよな」
「かわいいって言われても僕は男だし嬉しくないよ。いきなり触らないでほしい」
琉唯が見ているのは僕じゃなくて咲良菜緒なのだから。
力が抜けたように琉唯は柔らかく微笑むと、
「優陽が俺を癒してよ」
と、俺の肩口に頭をのせて抱き締めてきた。
僕は咲良菜緒の代わりでしかないのに……。
どうしようもなく琉唯が傷を負っているようになぜか見えてしまって、返事の代わりにそのままにされていた。



