「これ自分で作ってんの?」
「ううん。その……家族が作ってくれてる」
本当は僕に家族なんて呼べる人は居ないけれど……。
僕は「ごちそうさまでした」と手を合わせ、全て食べ終わったお弁当箱を袋に包み直した。
「昼は映画、観ないのか?」
「うーん。観る時と観ない時と半々。映画観ながらだとお弁当食べるの遅くなるし、僕も昼休みは勉強していることが多いから」
「LINEの登録名見て思ったんだけど、いつも優陽って定期テスト学年1位だろ?」
「うん。一応」
「やっぱり。綺麗な名前のやつだと思って漢字の形だけ記憶に残ってたんだよな」
琉唯って紡ぐ言葉がストレートだからか、いちいち胸の辺りがざわめきだしてしまう。
名前だとしても褒められたんだから、お礼くらい言ったほうがいいのか迷っていた。
「優陽。俺に勉強、教えて」
「え?」
「仕事と学業の両立しんどいんだって。この学校、芸術総合コースがあって支援は手厚いけど、テスト期間と撮影が重なると頭の中、混乱してる」
「僕、うまく教えられるかわからないよ」
「俺が聞いたことに答えてくれればいい」
「……僕でわかることなら……」
そう答えれば、琉唯は「よっしゃ」と大人びた顔立ちに子どもみたいな無邪気さを浮かべて笑った。
「この学校、咲良菜緒が卒業してるって優陽は知ってるか?」
知っている。
咲良菜緒が”芸名”で華澄高に通うことが出来ていたのは頼政さんと華澄高の学校法人を経営している一族が懇意にしているからだ。
たっちゃんと僕がこの高校を受験したのも、実はそういった絡みもあったりする。
知っているって素直に答えていいものなのか?
ネットにも出ている情報だから、知っていてもおかしくはないけれど……。
「……そうなんだ」
僕は知らないふりをすることに決めた。
建前は咲良菜緒のファンってことになってるから知らないほうが不自然だったかもしれない。
「俺も咲良菜緒と同じ時代に生まれてみたかったって思ってたけど」
「……」
「今は優陽が居るからいいか」
胸の奥がちくりと痛む。
琉唯は本当に咲良菜緒が好きなんだということを思い知らされる。
僕はその代わりってだけ。
「琉唯は昼休みここに居ていいの?」
「ん? 何で?」
「その、琉唯は3年の滝川ノアさんと付き合っているって、噂で聞いたから」
始業式の日に二人で言い合いをしていたのを聞いている。
しかも、あの話しぶりだと、ただの友だちって関係では絶対になさそうだった。
琉唯の美しい面貌は僕の口からノアさんの名前が出ると、スッと真顔に切り替わった。
「ノアとは付き合ってねぇよ」
「だけど……」
僕にはわからない大人の会話を交わしていた。
でも、あの現場を僕が見ていたことを琉唯は知らない。
「あえて言うなら主従関係か」
「主従……?」
「俺はノアに鎖で繋がれてんの。ノアの要求に応えているだけ」
「要求?」
「犬がお手って言われたら手を差し出すように、ノアにセックスしろって言われたら抱いてるだけ」
僕の目を真っ直ぐ見つめながら、琉唯は自嘲気味に笑う。
『ノアの機嫌を損ねれば、例え琉唯だって、簡単に芸能界から干されるわ。お父さんのためにも琉唯の仕事が無くなったら困るんでしょ?』
そうノアさんは琉唯に言っていた。
琉唯の事情はわからないけど、何だか琉唯が傷ついているように僕には見えてしまって……。
「そんな困ってるなよ。優陽には刺激が強かった?」
ずっと黙って、困り顔をしていた僕を安心させるように琉唯は笑う。
「セックスって単語だけでこんなに優陽は照れてくれるんだ?」
「違っ……」
「優陽は新雪みたいに真っさらって感じで何も知らなさそうだよな。俺にいろいろ教えてほしい?」
「ううん。その……家族が作ってくれてる」
本当は僕に家族なんて呼べる人は居ないけれど……。
僕は「ごちそうさまでした」と手を合わせ、全て食べ終わったお弁当箱を袋に包み直した。
「昼は映画、観ないのか?」
「うーん。観る時と観ない時と半々。映画観ながらだとお弁当食べるの遅くなるし、僕も昼休みは勉強していることが多いから」
「LINEの登録名見て思ったんだけど、いつも優陽って定期テスト学年1位だろ?」
「うん。一応」
「やっぱり。綺麗な名前のやつだと思って漢字の形だけ記憶に残ってたんだよな」
琉唯って紡ぐ言葉がストレートだからか、いちいち胸の辺りがざわめきだしてしまう。
名前だとしても褒められたんだから、お礼くらい言ったほうがいいのか迷っていた。
「優陽。俺に勉強、教えて」
「え?」
「仕事と学業の両立しんどいんだって。この学校、芸術総合コースがあって支援は手厚いけど、テスト期間と撮影が重なると頭の中、混乱してる」
「僕、うまく教えられるかわからないよ」
「俺が聞いたことに答えてくれればいい」
「……僕でわかることなら……」
そう答えれば、琉唯は「よっしゃ」と大人びた顔立ちに子どもみたいな無邪気さを浮かべて笑った。
「この学校、咲良菜緒が卒業してるって優陽は知ってるか?」
知っている。
咲良菜緒が”芸名”で華澄高に通うことが出来ていたのは頼政さんと華澄高の学校法人を経営している一族が懇意にしているからだ。
たっちゃんと僕がこの高校を受験したのも、実はそういった絡みもあったりする。
知っているって素直に答えていいものなのか?
ネットにも出ている情報だから、知っていてもおかしくはないけれど……。
「……そうなんだ」
僕は知らないふりをすることに決めた。
建前は咲良菜緒のファンってことになってるから知らないほうが不自然だったかもしれない。
「俺も咲良菜緒と同じ時代に生まれてみたかったって思ってたけど」
「……」
「今は優陽が居るからいいか」
胸の奥がちくりと痛む。
琉唯は本当に咲良菜緒が好きなんだということを思い知らされる。
僕はその代わりってだけ。
「琉唯は昼休みここに居ていいの?」
「ん? 何で?」
「その、琉唯は3年の滝川ノアさんと付き合っているって、噂で聞いたから」
始業式の日に二人で言い合いをしていたのを聞いている。
しかも、あの話しぶりだと、ただの友だちって関係では絶対になさそうだった。
琉唯の美しい面貌は僕の口からノアさんの名前が出ると、スッと真顔に切り替わった。
「ノアとは付き合ってねぇよ」
「だけど……」
僕にはわからない大人の会話を交わしていた。
でも、あの現場を僕が見ていたことを琉唯は知らない。
「あえて言うなら主従関係か」
「主従……?」
「俺はノアに鎖で繋がれてんの。ノアの要求に応えているだけ」
「要求?」
「犬がお手って言われたら手を差し出すように、ノアにセックスしろって言われたら抱いてるだけ」
僕の目を真っ直ぐ見つめながら、琉唯は自嘲気味に笑う。
『ノアの機嫌を損ねれば、例え琉唯だって、簡単に芸能界から干されるわ。お父さんのためにも琉唯の仕事が無くなったら困るんでしょ?』
そうノアさんは琉唯に言っていた。
琉唯の事情はわからないけど、何だか琉唯が傷ついているように僕には見えてしまって……。
「そんな困ってるなよ。優陽には刺激が強かった?」
ずっと黙って、困り顔をしていた僕を安心させるように琉唯は笑う。
「セックスって単語だけでこんなに優陽は照れてくれるんだ?」
「違っ……」
「優陽は新雪みたいに真っさらって感じで何も知らなさそうだよな。俺にいろいろ教えてほしい?」



