実は咲良菜緒の息子です。
隠し子です。
なんて琉唯に打ち明けられるはずもない。
「――他人……ね」
映像研究部の部室は特に部活名の掲示札はない。
部室へと琉唯を招き入れると物珍しそうに室内を観察し始めた。
「へえ、何ここ?」
「プロジェクターで一人で映画観るしかしてないけど、歴とした部活動で部室」
「ここ優陽だけがつかえてんの?」
「うん。卒業した先輩から、こっそり合鍵ももらってる」
「何それ、最高だろ」
上機嫌そうな琉唯はDVDが入れてある入り口側の壁に沿って置かれた棚を眺めていた。
「咲良菜緒の出演作、多いな。全部ある」
全部あるってわかるほど、琉唯は咲良菜緒の出演映画を熟知してるってことか。
セブファクの所属俳優が出演した映画やドラマのは全てもらえるから、少しずつ僕もここに移していた。
元々歴代の先輩たちが置いていったDVDの中に咲良菜緒が出演しているものも多かったけど。
「これ食べていい?」
まるで自宅のように琉唯はソファーに腰掛け、丸いサイドテーブルを指差す。
テーブル下の収納には木製の収納ボックスを置いていて、宮永さんから大量にもらった北海道土産のお菓子を僕はここに移していた。
たっちゃんや美織さんにお裾分けしようと思ったけど、それぞれ宮永さんから別にお土産をもらっていたから僕が全部消費することになって。
期限の早いものから少しずつ映画のお供に食べていた。
「どうぞ」
「やった。この間まで撮影で身体絞るために摂生してたから糖分嬉しい」
琉唯は勝手にテーブルに置いてあったウェットティッシュで手を拭くと、包装を開けてホワイトチョコが挟んであるラングドシャを食べ始めた。
僕よりもくつろいでるし、もっと大人びていると思ってたけど、こうしていると、ちゃんと高校2年生の等身大の男って感じだ。
「何か映画つけろよ」
「え!?」
琉唯は鑑賞までしていくつもりなのか?
僕だけだった空間が琉唯に侵食されていく。
「咲良菜緒が出てるやつ。『星屑の街並みで』がいい」
それ、僕も好きなやつだ。
咲良菜緒が18歳の時に出演した60分程度の短編映画。
咲良菜緒と中学で一緒になったクラスメイトの男の子の10年に及ぶ恋物語だ。
映画の時間軸に合わせて、ちゃんと中学生から社会人まで年齢を重ねているように見えるのが咲良菜緒の演技力の高さゆえだろう。
不承不承ながら、琉唯の指示通りに暗幕を閉め、DVDをセットしてプロジェクターを再生した。
「優陽も早く隣、座れって」
「うわっ……!」
琉唯に腕を引かれて、ソファーに着陸する僕の身体。
抗っても意味ないと思ったから、従順に隣へ座った。
琉唯はホワイトチョコレートでコーティングされているフリーズドライされた苺のお菓子を食べながら、スクリーンに見入っている。
暗い中で映画が映し出されているスクリーンの光のみに照らされる琉唯の横顔は感動すら覚えるくらい綺麗だった。
「優陽も咲良菜緒のファン?」
「……え? あ、うん……」
優陽もってことは琉唯自身が咲良菜緒のファンだということで。
それはそうか。
咲良菜緒に似てるってだけで僕を探すくらいだし。
「どうしたらこんな役にはまりこんだ演技、出来るんだろ。何回見てもすっげ……」
映画を映し出す真剣な琉唯の瞳は宝石が散りばめられたように煌めいている。
何でだろう。
僕には胸の辺りがぎゅっと搾られているような感覚がした。
60分の短編映画は没入していたからか時間を感じさせないくらい、あっという間に終わる。
いつもの日課のように棚からノートを取り出した僕に対して琉唯が「何それ」と質問してきた。
「一応、学校の部活動ではあるから。観た映画はノートに記録して、簡単だけど感想を残してる」
「そこのノートって全部それ?」
「そう。歴代の先輩たちがつけていた記録」
DVDが陳列されている棚の一番下はびっしり何十冊もノートが並べられている。
僕が今つけているノートが記念すべき30冊目だ。
「へえ。俺も明日から読もうかな。映画好きの率直な感想って自分の役作りに活かせそう」
琉唯はそんなに自分の仕事に勉強熱心なんだ……。
と、思う以前にひっかかった台詞。
「明日からって何?」
「俺も入部する。映像研究部」
「いや、困るって」
若手No. 1人気俳優・注目度が学校一高い一条琉唯が部活動なんて始めたら、あっという間にここが知れ渡ってしまう。
「何が困るんだよ」
「僕の大事な秘密の場所だって言ったよね?」
「じゃあ入部まではしなくても、ここに来る。優陽はいつここに居るんだよ」
「昼休みと放課後は大体この部屋に居るけど……」
「俺も学校に居られる時は絶対に来る。LINE交換しろよ」
隠し子です。
なんて琉唯に打ち明けられるはずもない。
「――他人……ね」
映像研究部の部室は特に部活名の掲示札はない。
部室へと琉唯を招き入れると物珍しそうに室内を観察し始めた。
「へえ、何ここ?」
「プロジェクターで一人で映画観るしかしてないけど、歴とした部活動で部室」
「ここ優陽だけがつかえてんの?」
「うん。卒業した先輩から、こっそり合鍵ももらってる」
「何それ、最高だろ」
上機嫌そうな琉唯はDVDが入れてある入り口側の壁に沿って置かれた棚を眺めていた。
「咲良菜緒の出演作、多いな。全部ある」
全部あるってわかるほど、琉唯は咲良菜緒の出演映画を熟知してるってことか。
セブファクの所属俳優が出演した映画やドラマのは全てもらえるから、少しずつ僕もここに移していた。
元々歴代の先輩たちが置いていったDVDの中に咲良菜緒が出演しているものも多かったけど。
「これ食べていい?」
まるで自宅のように琉唯はソファーに腰掛け、丸いサイドテーブルを指差す。
テーブル下の収納には木製の収納ボックスを置いていて、宮永さんから大量にもらった北海道土産のお菓子を僕はここに移していた。
たっちゃんや美織さんにお裾分けしようと思ったけど、それぞれ宮永さんから別にお土産をもらっていたから僕が全部消費することになって。
期限の早いものから少しずつ映画のお供に食べていた。
「どうぞ」
「やった。この間まで撮影で身体絞るために摂生してたから糖分嬉しい」
琉唯は勝手にテーブルに置いてあったウェットティッシュで手を拭くと、包装を開けてホワイトチョコが挟んであるラングドシャを食べ始めた。
僕よりもくつろいでるし、もっと大人びていると思ってたけど、こうしていると、ちゃんと高校2年生の等身大の男って感じだ。
「何か映画つけろよ」
「え!?」
琉唯は鑑賞までしていくつもりなのか?
僕だけだった空間が琉唯に侵食されていく。
「咲良菜緒が出てるやつ。『星屑の街並みで』がいい」
それ、僕も好きなやつだ。
咲良菜緒が18歳の時に出演した60分程度の短編映画。
咲良菜緒と中学で一緒になったクラスメイトの男の子の10年に及ぶ恋物語だ。
映画の時間軸に合わせて、ちゃんと中学生から社会人まで年齢を重ねているように見えるのが咲良菜緒の演技力の高さゆえだろう。
不承不承ながら、琉唯の指示通りに暗幕を閉め、DVDをセットしてプロジェクターを再生した。
「優陽も早く隣、座れって」
「うわっ……!」
琉唯に腕を引かれて、ソファーに着陸する僕の身体。
抗っても意味ないと思ったから、従順に隣へ座った。
琉唯はホワイトチョコレートでコーティングされているフリーズドライされた苺のお菓子を食べながら、スクリーンに見入っている。
暗い中で映画が映し出されているスクリーンの光のみに照らされる琉唯の横顔は感動すら覚えるくらい綺麗だった。
「優陽も咲良菜緒のファン?」
「……え? あ、うん……」
優陽もってことは琉唯自身が咲良菜緒のファンだということで。
それはそうか。
咲良菜緒に似てるってだけで僕を探すくらいだし。
「どうしたらこんな役にはまりこんだ演技、出来るんだろ。何回見てもすっげ……」
映画を映し出す真剣な琉唯の瞳は宝石が散りばめられたように煌めいている。
何でだろう。
僕には胸の辺りがぎゅっと搾られているような感覚がした。
60分の短編映画は没入していたからか時間を感じさせないくらい、あっという間に終わる。
いつもの日課のように棚からノートを取り出した僕に対して琉唯が「何それ」と質問してきた。
「一応、学校の部活動ではあるから。観た映画はノートに記録して、簡単だけど感想を残してる」
「そこのノートって全部それ?」
「そう。歴代の先輩たちがつけていた記録」
DVDが陳列されている棚の一番下はびっしり何十冊もノートが並べられている。
僕が今つけているノートが記念すべき30冊目だ。
「へえ。俺も明日から読もうかな。映画好きの率直な感想って自分の役作りに活かせそう」
琉唯はそんなに自分の仕事に勉強熱心なんだ……。
と、思う以前にひっかかった台詞。
「明日からって何?」
「俺も入部する。映像研究部」
「いや、困るって」
若手No. 1人気俳優・注目度が学校一高い一条琉唯が部活動なんて始めたら、あっという間にここが知れ渡ってしまう。
「何が困るんだよ」
「僕の大事な秘密の場所だって言ったよね?」
「じゃあ入部まではしなくても、ここに来る。優陽はいつここに居るんだよ」
「昼休みと放課後は大体この部屋に居るけど……」
「俺も学校に居られる時は絶対に来る。LINE交換しろよ」



