不本意ながら素直に答える。
答えなければ永久に一条琉唯が離してくれなさそうだったからだ。
「優陽って男? 女?」
「男ですけど」
制服が男のものだし、普通わかるだろう……。
声だってハスキー気味だけど、ちゃんと低音だ。
でも、余り履いている人はいないけど、今は女子の制服にスラックスもあるから、男女で制服差は少なかったと思い直した。
それに出会った時の僕は男女共通の学校指定のジャージ姿だった。
「ふーん。ま、どっちでもいいか」
いやいや、どっちでも良くないだろう。
女顔でも咲良菜緒似だとしても、僕は歴とした男だから。
「俺は一条琉唯。芸術総合コースの2年」
「……充分に存じ上げております」
律儀に一条琉唯は僕に自己紹介をしてくれた。
一条琉唯を知らない人間なんて華澄高に居ないだろう。
「というか俺とタメだろ。優陽も敬語やめろよ」
最初から僕を呼び捨てしてきている一条琉唯。
いつまでものんきに一条琉唯の腕の中に収まっているわけにはいかない。
「あの僕、もう行きたいんだけど……」
「どこに?」
「どこって部活」
「優陽、何やってんの?」
「……映像研究部だけど」
「そんなの、あるんだ」
「部員は僕一人しかいないし」
「へえ。じゃあ俺もついていく」
何で!?
一条琉唯は僕をやっと解放すると、落ちていた眼鏡を拾い、まじまじと観察している。
どうやら落下の衝撃で僕の眼鏡に傷が出来ていないか確認してくれているようだ。
「こんなの、つけてるのか」
「わ、悪い?」
「いや、これだけ優陽はかわいいのに学校で何の話題にもなっていないのが不思議だと思ってただけ」
一条琉唯は眼鏡を僕に差し出した。
「ありがとう」
受け取って分厚いレンズの大きな眼鏡を装着する。
学校ではこれをつけていないと落ち着かない。
「何で、眼鏡してるんだよ。それ度が入っていないだろ」
「それは……」
「優陽が美しいの、隠せてないって」
僕が美しい……?
初めて言われた。
しかも、とびきり美しいご尊顔をお持ちの若手人気№1俳優である一条琉唯に。
一条琉唯なんて、芸能界で普通の人より整った顔をたくさん見てきているはずなのに。
「ぼけっとしてないで早く連れていけよ」
「え?」
「優陽の部活」
「本気で僕についてくるつもり?」
「何で俺が優陽に冗談言う必要があるんだよ」
「だって一条琉……一条くん忙しいよね?」
「琉唯でいいって。俺、ネットドラマ撮了したばかりだから今日は仕事ない。だから放課後に出られなかった分の授業の補講してもらってた」
そう言われてみれば、この間までハニーブロンドだった琉唯の髪色がグレージュ系に落ち着いている。
映像研究部の部室は学校で唯一落ち着ける僕だけのオアシスだ。
否が応でも注目を浴びている琉唯の影響で他の人たちにも知られて、荒らされたりしたら困る。
いつまでも煮え切らない僕の様子をじっと観察していた琉唯。
「2年5組の桜庭優陽の素顔は咲良菜緒に似ていて、誰よりも綺麗だって言いふらそうか?」
「な!?」
「俺も連れて行くよな」
うっとりするような優美な笑顔で琉唯に微笑まれながら、そこはかとない無言の制圧を感じて慄く。
絶対この男、俺様だろう。
仕方なく僕は琉唯を伴って映像研究部の部室へと向かった。
「――僕の大事な秘密の場所だから荒らすようなことだけはしないで」
「わかってる。優陽次第で黙ってるよ」
僕次第ってどういうことなのか。
僕は誰かに見つからないか、周りをきょろきょろ見回しながら廊下を歩く。
僕の半歩あとには琉唯が続いた。
「優陽って何でそんなに咲良菜緒に似てんの? 咲良菜緒の親類?」
「……違う。他人の空似」
答えなければ永久に一条琉唯が離してくれなさそうだったからだ。
「優陽って男? 女?」
「男ですけど」
制服が男のものだし、普通わかるだろう……。
声だってハスキー気味だけど、ちゃんと低音だ。
でも、余り履いている人はいないけど、今は女子の制服にスラックスもあるから、男女で制服差は少なかったと思い直した。
それに出会った時の僕は男女共通の学校指定のジャージ姿だった。
「ふーん。ま、どっちでもいいか」
いやいや、どっちでも良くないだろう。
女顔でも咲良菜緒似だとしても、僕は歴とした男だから。
「俺は一条琉唯。芸術総合コースの2年」
「……充分に存じ上げております」
律儀に一条琉唯は僕に自己紹介をしてくれた。
一条琉唯を知らない人間なんて華澄高に居ないだろう。
「というか俺とタメだろ。優陽も敬語やめろよ」
最初から僕を呼び捨てしてきている一条琉唯。
いつまでものんきに一条琉唯の腕の中に収まっているわけにはいかない。
「あの僕、もう行きたいんだけど……」
「どこに?」
「どこって部活」
「優陽、何やってんの?」
「……映像研究部だけど」
「そんなの、あるんだ」
「部員は僕一人しかいないし」
「へえ。じゃあ俺もついていく」
何で!?
一条琉唯は僕をやっと解放すると、落ちていた眼鏡を拾い、まじまじと観察している。
どうやら落下の衝撃で僕の眼鏡に傷が出来ていないか確認してくれているようだ。
「こんなの、つけてるのか」
「わ、悪い?」
「いや、これだけ優陽はかわいいのに学校で何の話題にもなっていないのが不思議だと思ってただけ」
一条琉唯は眼鏡を僕に差し出した。
「ありがとう」
受け取って分厚いレンズの大きな眼鏡を装着する。
学校ではこれをつけていないと落ち着かない。
「何で、眼鏡してるんだよ。それ度が入っていないだろ」
「それは……」
「優陽が美しいの、隠せてないって」
僕が美しい……?
初めて言われた。
しかも、とびきり美しいご尊顔をお持ちの若手人気№1俳優である一条琉唯に。
一条琉唯なんて、芸能界で普通の人より整った顔をたくさん見てきているはずなのに。
「ぼけっとしてないで早く連れていけよ」
「え?」
「優陽の部活」
「本気で僕についてくるつもり?」
「何で俺が優陽に冗談言う必要があるんだよ」
「だって一条琉……一条くん忙しいよね?」
「琉唯でいいって。俺、ネットドラマ撮了したばかりだから今日は仕事ない。だから放課後に出られなかった分の授業の補講してもらってた」
そう言われてみれば、この間までハニーブロンドだった琉唯の髪色がグレージュ系に落ち着いている。
映像研究部の部室は学校で唯一落ち着ける僕だけのオアシスだ。
否が応でも注目を浴びている琉唯の影響で他の人たちにも知られて、荒らされたりしたら困る。
いつまでも煮え切らない僕の様子をじっと観察していた琉唯。
「2年5組の桜庭優陽の素顔は咲良菜緒に似ていて、誰よりも綺麗だって言いふらそうか?」
「な!?」
「俺も連れて行くよな」
うっとりするような優美な笑顔で琉唯に微笑まれながら、そこはかとない無言の制圧を感じて慄く。
絶対この男、俺様だろう。
仕方なく僕は琉唯を伴って映像研究部の部室へと向かった。
「――僕の大事な秘密の場所だから荒らすようなことだけはしないで」
「わかってる。優陽次第で黙ってるよ」
僕次第ってどういうことなのか。
僕は誰かに見つからないか、周りをきょろきょろ見回しながら廊下を歩く。
僕の半歩あとには琉唯が続いた。
「優陽って何でそんなに咲良菜緒に似てんの? 咲良菜緒の親類?」
「……違う。他人の空似」



