朋空先輩は、昔家に帰りたくなかった俺を救ってくれた。
────だから俺も、家に帰ろうとしない朋空先輩を放っておけなかったんだ。
時間が流れるのは本当に速い。
自分が進まないと置いていかれてるような怖さがある。
残酷。……だけど時間が解決してくれることもあるし、悪いことばかりじゃないんだ。
俺は眠り姫並に知名度が上がってしまったけど、ファンクラブの人達の協力もあり、楽しく学校生活を送れた。
( 三月か )
カレンダーをめくり、春の暦を数える。
季節は流れ、あっという間に卒業式を迎えた。
俺も来月からは三年生。受験を控え、忙しい毎日が始まる。
気を引き締めないと……!
誰にも名前を覚えてもらえない睡眠研究会は、後輩の子に譲ることにした。俺ももう寝てるわけにはいかないし、あの研究室は朋空先輩と過ごす為の場所になってしまっていたから……もう留まる理由はなかった。
あ、ベッドはさすがに問題なので家に持って帰った。
睡眠に関する資料は残してるから、後は後輩が好きなように使ってくれたら嬉しい。
桜は咲いてないけど、卒業式当日は晴れやかな青空だった。
いつもと変わらない。けど落ち着かない、特別な日。
体育館から卒業生が退場し、保護者も順々に帰っていく。あっという間に寂しくなった空間を後にし、俺も移動した。
絶対に見つけるなら校門だな。
大勢ひとが立ち話をしている門で捜していると、不意に肩を叩かれた。
「入ちゃん! やっほー」
「赤城先輩。卒業おめでとうございます」
「ありがと。やー、思い返すとマジであっという間だったな。入ちゃんもやりたいことあったら後回しにしないで、やった方がいいよ。この感じだと次は気付いたとき四十路だから」
「それは気が早すぎですって」
苦笑しながら、いつもと変わらない調子の赤城先輩にお辞儀した。本当に色々あったけど、彼にも感謝しかない。なんとボタンまでくれたので、有り難くポケットに仕舞った。
「でも先輩、好きな女の子にあげなくていいんですか?」
「あ、違う違う。これはアレ、あいつが来たら見せな」
「あいつ?」


