びっくり過ぎて大声で叫んでしまった。
だって、想像していた百倍軽い。告白からのお付き合いって、もっとこう……互いの表情や仕草を窺い、同意を得るものだと思ってた。

マジでもう成立してしたのか? 俺と朋空先輩は恋人同士、と。

嬉しいけど、俺達は男で、つい最近久しぶりに喋った仲だ。冷静に考えたら山ほど問題を抱えている。
だけど先輩は落ち着いている。相変わらずの無表情で、俺の頭をぽんぽんと叩いた。

「お前に怖い思いをさせたくないから、今まで距離をとるようにしてた。でも、俺も馬鹿だな。よく考えたら、守ればいいだけだったんだ」

朋空先輩はなにか腑に落ちた様子で体を起こした。俺のことも抱き起こし、真正面から見つめ合う。

「関わりなくして、お前が他の奴にとられたら本末転倒だし。うん、決めた。付き合うぞ」
「先輩? 何か先輩の頭の中だけでめっちゃ話が進んでる気がするんですけど」

俺だけ置いてけぼり感が否めない。
一旦落ち着いてほしくて手を翳すと、その手にキスされた。

「曖昧にするとお前はどっかフラフラ行きそうだし、はっきり言う」

一本二本と、指を絡めるように手を繋ぐ。朋空先輩の綺麗な口元は、弧を描いた。

「俺はお前が好きだ」
「……っ」

認めざるを得ない。これは確かに告白だ。若干早いもん勝ちみたいなところがあって、遅れて羞恥心がやってくる。

「答え聴かせて?」
「答え……俺が断ったら、どうするつもりなんですか?」
「もちろん、どんな手を使っても手に入れる」

ほら怖い!
どこまで行っても諦める気ないんだよ、この人。
内心半泣きしていたけど、優しく頭を撫でられると、拒絶はできなかった。

撫でられんの気持ちいい……。

「ありがとうございます」
「いーえ」

先輩の撫で方が上手いのか、俺が変態なのか。多分両方だ。
気付けば自分の方から頭を突き出し、彼に擦り寄っていた。

「すごく自惚れたこと言ってもいいか」
「な、何です?」
「お前も多分、俺のこと好きなんだと思うぞ」

……。

「好きじゃない奴を“欲しい”なんて思わないだろ」

図星過ぎて何も言えない。
観念した方がいいんだろう。

「こういう時なんて言うのか分からないんですけど……好きです。よ、宜しくお願いします」

俺の精一杯の告白。それを聴くと先輩は嬉しそうに、笑い、再びベッドに倒れた。
「さあて……無事に確認し合ったし、アラームセットして寝るか」
「……」
そして、なんつー切り替えの速さ。頭が痛くなって俯いていると、不意に「雅月」と名前を呼ばれた。

「もう遠慮しなくていいんだ。……おいで」

断られるなんて微塵も心配してない。
自信満々の笑みを浮かべ、彼は下から手を伸ばした。
遠慮してるつもりはなかったんだけど……先輩は、俺が先輩に抱きつきたくて仕方ないと思ってるんだろうか。
なんて自信家なんだ。

「……ちょっとだけですよ」

で。彼の思惑通り手を取る、俺も大概やばい。

でも今だけは、理性なんてびりびりに破いて捨ててしまおう。
夢の世界に落ちてしまえば、誰にも止められない。俺達しかいない場所でのんびり過ごすのは、そんなに悪くないから。

抱き着いてから朋空先輩が寝落ちするのはあっと言う間だった。

俺はというと、お察しの通り。目ぇバッキバキでアラームが鳴るまで起きていた。

「俺達恋人なんだ……」

恋人という単語自体、あまり口に出したことがない。だからあえて何回も呟いた。
呟けば呟くほど実感して、羞恥心で爆発しそうになったのは内緒だ。

ちなみにこの独り言はちょっとだけ先輩に聞かれていて、後で超絶いじられることになった。