『独りなら、夜まで一緒にいるよ』
ずっと昔に掛けられた言葉が、今でも耳に残っている。
急に、小学生のときのことを思い出してしまった。
……マンションに帰ってきたはいいものの、誰もいない部屋に入りたくなくて。一階の共用スペースで時間を潰していた俺に、優しく微笑む男の子がいた。
変わった名前だったから、すぐに覚えた。笑うととても綺麗で、声も透き通っていて。
傍から見ればすごく懐いてたんだろう。同じマンションの人は、俺達が常に一緒にいることを分かっていた。
本当の兄弟みたいと言われたこともある。
あの時は嬉しかった。けど、今は思う。兄弟じゃなくてほんとに良かったと。
誰を好きになってもいいなら、俺はやっぱり……この人以外には考えられない。
久しぶりに話して、触れて、ずっと押し殺してた感情が溢れて出してしまった。
「俺も、朋空先輩が欲しい」
優しい声とか、柔らかい掌とか。視線も関心も、全部独り占めしたい。
こんな気持ちになったのは初めてだ。我ながら傲慢だと思うけど、今さら撤回や訂正はできない。
俺の言葉を聞いた朋空先輩はきょとんとしていたけど、すぐに意味を理解し、微笑んだ。
「もちろん、やるよ」
額にチュッと音の鳴るキスをされる。こんな甘い行為も、普段の先輩を知ってる人からしたら想像もできないだろう。
俺だってそうだ。こんなに表情豊かで、可愛い人だなんて────二人きりにならなかったら絶対知らないままだった。
「あの……俺達のこれって、告白になるんですか?」
「……」
純粋に疑問で問いかけると、彼はうーん、と天井をあおいだ。
そして非常に淡々と言い放つ。
「告白。からの、カップル成立」
「は……はや!!」


