夜刀はその晩、紗良を抱きしめたまま夜を過ごした。

 ひとつの布団に横たわり身を寄せ合うと、夜刀は紗良の手や足を温めるように包む。

 「夜刀さんは温かいですね」

 「俺は寒さにも強いし、平熱が高い方なんだろう。おかげで紗良の手足を温めてやれる。この体温に生まれてよかったと初めて思ったよ」

 夜刀は紗良の冷たい手の指先に、そっと口づけをした。

 紗良と一緒なら安心してうなされないというのは口実で、夜刀は手足の冷える紗良を温めてあげたいと思ってくれたからなのだろう。

 紗良は手足どころか、顔にまで熱が上った気がした。

 一緒に寝るだけでなにもしないと言われたし、紗良は夜刀を信じている。けれど同衾(どうきん)するなんて緊張で眠れないのではないかと想像していた。

 しかし、夜刀に温められたおかげだろうか。紗良はあっという間に、夢すら見ない深い眠りに落ちたのだった。