そして一日が過ぎ、寝る時刻になった。

 「夜刀さん、今日は大丈夫でしょうか」

 「大丈夫。うなされていても放っておいて構わない」

 「でも……」

 「ほら、またこんなに冷たい手をして」

 夜刀に手を握られる。こうして温めてもらえるのは嬉しいが、紗良も夜刀の力になりたいのだ。

 「俺がうなされてうるさいようなら、離れた部屋を用意させようか?」

 「そ、そうじゃなくて。私は心配なんです。立花先生に診てもらった方が……」

 紗良は優しく握られていた手に力を入れ、ギュッと握り返す。

 「そこまでのことだとは思えないが……そうだ」

 夜刀はなにかを考えついたようで、珍しくイタズラっぽい笑みを浮かべている。

 「では、俺がうなされないように、一緒に寝てくれないか?」

 「えっ……?」

 意味を理解した紗良は、じわじわと顔が熱くなる気がした。

 「紗良が一緒に寝てくれたなら、きっと安心してうなされない気がするんだ」

 「で、でも……私たち、結婚前ですし……」

 紗良はモゴモゴと口ごもった。

 「嫌ならいいんだ。紗良が嫌がることはしない。変な話をしてすまなかった」

 夜刀がわずかに眉を下げる様子を見て、紗良はハッとした。

 表情が変わらない紗良では、考えていることを口に出さないと伝わらないという当たり前のことに気づいたのだ。夜刀はいつも紗良の感情を理解してくれると感じていたから失念していた。

 離れようとした夜刀の寝巻きの端をちょこんと掴む。ドキドキして、手が震えてしまう。

 「い、嫌ではなくて……恥ずかしいだけなんです。だから、あの……一緒に……」

 心臓が激しい音を立てているから、夜刀に聞こえてしまっているかもしれない。

 「いいのか、紗良」

 耳元でそう尋ねられ、紗良はおずおずと頷いた。