この『葦原(あしはら)皇国(こうこく)』は、かつて四柱の神々によって築かれた神の国である。

 神々はこの豊かな地で、人と平穏に暮らしていた。

 しかし、国の中央に位置し、黒い尖峰(せんぽう)を持つ『禍山(まがやま)』から数多の妖魔が湧き()でて、人を襲うようになった。

 神々はそれを憂い、武を司る戦神が刀を振るって妖魔を討ち倒し、人を守った。

 戦神の妻である織女神は(もり)(ぬの)を織り、夫のための戦装束をこしらえた。

 治癒の力を持つ『(いやし)(がみ)』は、戦神の怪我を治し、結界を司る『(むすび)(がみ)』は、人の住む里に妖魔が入らぬよう、禍山の周囲に結界を張った。

 しかし、妖魔は絶えることはなかった。

 やがて神の時代が終わりを迎え、神々の力も少しずつ失われていく。

 神々は人に未来を託し、自らの力を分け与えることを選んだ。そしてその後、空に昇り、四つの星となった。

 残されたのは、神の力を受け継ぐ『加護持ち』と呼ばれる人々と、戦神の刀だけであった。