「おはよ」
「おはよう」
家を出ると、丁度菜波も学校に向かおうとしていたらしく、鉢合わせる。
「朝練?」
「そう。菜波も?」
「そんなとこ」
そう言って菜波は少しだけ俯く。
「…どうした?」
「えっ!?」
「元気ないけど」
凪が問うと、菜波は観念したのか口を開く。
「航平に告白された」
「へーおめでとう」
「リアクション薄っ!もうちょい、大袈裟に反応してくれても良くない?」
「だって、俺からすると航平が菜波のこと好きなのもバレバレだったし、やっとか…の気持ちが強いよ」
「嘘!そんなに分かりやすかった?」
菜波は顔を両手で押さえながら引っ張って表情を整える。
「あぁ」
「もー!あんなに緊張してたのに馬鹿みたい!」
プリプリ怒る菜波に後ろから航平が声をかけてくる。
こうして、学校に着くとそのまま授業が始まり日常が過ぎ去っていった。
お昼休み
凪は教室で翔太を待つ。
だが、その日翔太が凪の元へ来ることはなかった。
翔太が来なくなってから数日、凪は翔太君にメールを送る。
『翔太君、最近ずっと教室来てないけど元気?』
だが、翔太からの返事はない。
(珍しいな…何かあったのかな?)
心配になって、翔太のクラスに行こうとするも翔太のクラスも知らなかったことに凪は、今更気付いた。
「俺…翔太君のこと何も知らなかったんだな」
(馬鹿だ…翔太君は自分のことを話さないことになんで気づけなかったんだ…?)
「どうした?そんな切羽詰まった顔して」
航平が凪の顔を覗き込んで言い放つ。
「航平…」
「なんかあったか?」
こくんと顔を縦に振ると
「だろうな」とだけ言った。
「…俺のこと好きになるやつって大体、見た目で選んだだけの人ってのが圧倒的に多いんだよな」
「そうだな」
「だから、ずっとそばに居た菜波と航平以外で初めてだった。その人を助けたいって思うのも、そばにいたいって思うのも」
「うん」
「だから、いきなり連絡が取れなくなって心配なんだ」
「そっか…よし!そいつの名前は分かるか?」
「えっと…羽田 翔太君!」
「おっけー!」
航平はスマホを取り出すと。知り合いの後輩にメールを送っていく。
「お!凪、知ってるやつ居たぞ!」
航平が後輩達にメールを送ってから数時間後
放課後になった頃、航平が凪に声をかけた。
「マジ!?」
良かった、これで翔太君に辿り着ける…と思ったのもつかの間、航平は残念そうな顔で告げる。
「あぁ…でも今日学校休んでるんだと」
「そっか…」
「あぁ、そんでその…翔太君?の住所や連絡先は知らないし、知ってる人は居ないんじゃないか?って話だな。人との関わりをとことん断ち切ってるらしい」
「そっか…ありがとうな」
「おう。でも、ごめんな…何の役にも立てなかった」
「それでも良いよ、ありがとう」
改めて航平にお礼を告げ、航平と別れる。
帰宅すると、メールの通知音が鳴る。
もしやと俺は慌ててスマホを見た。
『凪先輩、今から会えませんか?』
『良いよ、どこにいる?』
『学校の近所にある公園って分かりますか?』
『知ってる。今から行くからそこで待ってて』
スマホを閉じ、慌ててまた出かけて行った俺に母さんが俺を呼び止める声が聞こえる。
(母さん、ごめん。でも、今は…今だけは翔太君の所へ行かなくちゃ!)
心の中で謝罪を述べ、母さんの声を無視して家を出た所で菜波と出くわした。
「こんな時間からどこに行くの?」
「公園!謝りにいく!」
「ちょ、誰に謝りにいくのよ!」
菜波の制止も振り切って、翔太君の所へと駆け寄った。
公園に着くと、ブランコに翔太君は居た。
「翔太君」
「…凪先輩」
ここ数日会ってないだけで翔太がかなり痩せて見え、心配になる。
「どうし…」
「凪先輩、座ってください」
翔太に促され凪は翔太の横に座る。
「…連絡無視しちゃってすみません。でも、我慢出来そうになかったから…」
「我慢?」
翔太は凪の手を取り、震える声で話す。
突然のことで流石に驚くが、声を出すことも出来なかった。
「先輩…好きな人って居るんですか?」
「…?居ないけど、どうしたの?いきなり」
「この前、先輩が女の子と登校してるのを見ちゃって…"先輩は女の子が好きなのかも"とか"知らないだけでもう彼女が居るのかもしれない"とか"僕なんかいつかは捨てられるのかも"とか思っちゃって」
「…そっか。でも、あれは俺の幼馴染でアイツには彼氏が居るから好きになるとかは無いよ?」
「そうなの?」
「あぁ、それに…俺には彼女も居ないから安心して」
「…なんだ…良かった…!」
翔太が胸を撫で下ろす。
そこで凪はふとした疑問をぶつける。
「でも、どうして俺が女の子と登校してるだけでそんなに不安になるの?というか…どうして俺の恋愛事情が気になるの?」
凪が問うと、翔太はポツリポツリと話し始めた。
「僕、家にも外にも居場所がないんです」
「…それは、居づらいってこと?」
「…それもそうですけど、最後は裏切られるんです」
「裏切られる?」
「はい…彼女には振られる、両親はどこかに行ったきり帰って来ない…友達も次第に居なくなって…もう、誰とも付き合わなくても良いやって…そんな時に凪先輩と出逢って、拒まれない環境が心地よくて…僕、凪先輩とずっと一緒に居たい。凪先輩に見捨てられたくない…もう、凪先輩なしでは生きられないんです!」
「…翔太君…良いよ、ずっと一緒に居よう」
翔太が信じられないともう一度確認する。
「…本当に?」
「あぁ」
凪の返事を聞いて、翔太の表情も徐々に晴れていく。
「おはよう」
家を出ると、丁度菜波も学校に向かおうとしていたらしく、鉢合わせる。
「朝練?」
「そう。菜波も?」
「そんなとこ」
そう言って菜波は少しだけ俯く。
「…どうした?」
「えっ!?」
「元気ないけど」
凪が問うと、菜波は観念したのか口を開く。
「航平に告白された」
「へーおめでとう」
「リアクション薄っ!もうちょい、大袈裟に反応してくれても良くない?」
「だって、俺からすると航平が菜波のこと好きなのもバレバレだったし、やっとか…の気持ちが強いよ」
「嘘!そんなに分かりやすかった?」
菜波は顔を両手で押さえながら引っ張って表情を整える。
「あぁ」
「もー!あんなに緊張してたのに馬鹿みたい!」
プリプリ怒る菜波に後ろから航平が声をかけてくる。
こうして、学校に着くとそのまま授業が始まり日常が過ぎ去っていった。
お昼休み
凪は教室で翔太を待つ。
だが、その日翔太が凪の元へ来ることはなかった。
翔太が来なくなってから数日、凪は翔太君にメールを送る。
『翔太君、最近ずっと教室来てないけど元気?』
だが、翔太からの返事はない。
(珍しいな…何かあったのかな?)
心配になって、翔太のクラスに行こうとするも翔太のクラスも知らなかったことに凪は、今更気付いた。
「俺…翔太君のこと何も知らなかったんだな」
(馬鹿だ…翔太君は自分のことを話さないことになんで気づけなかったんだ…?)
「どうした?そんな切羽詰まった顔して」
航平が凪の顔を覗き込んで言い放つ。
「航平…」
「なんかあったか?」
こくんと顔を縦に振ると
「だろうな」とだけ言った。
「…俺のこと好きになるやつって大体、見た目で選んだだけの人ってのが圧倒的に多いんだよな」
「そうだな」
「だから、ずっとそばに居た菜波と航平以外で初めてだった。その人を助けたいって思うのも、そばにいたいって思うのも」
「うん」
「だから、いきなり連絡が取れなくなって心配なんだ」
「そっか…よし!そいつの名前は分かるか?」
「えっと…羽田 翔太君!」
「おっけー!」
航平はスマホを取り出すと。知り合いの後輩にメールを送っていく。
「お!凪、知ってるやつ居たぞ!」
航平が後輩達にメールを送ってから数時間後
放課後になった頃、航平が凪に声をかけた。
「マジ!?」
良かった、これで翔太君に辿り着ける…と思ったのもつかの間、航平は残念そうな顔で告げる。
「あぁ…でも今日学校休んでるんだと」
「そっか…」
「あぁ、そんでその…翔太君?の住所や連絡先は知らないし、知ってる人は居ないんじゃないか?って話だな。人との関わりをとことん断ち切ってるらしい」
「そっか…ありがとうな」
「おう。でも、ごめんな…何の役にも立てなかった」
「それでも良いよ、ありがとう」
改めて航平にお礼を告げ、航平と別れる。
帰宅すると、メールの通知音が鳴る。
もしやと俺は慌ててスマホを見た。
『凪先輩、今から会えませんか?』
『良いよ、どこにいる?』
『学校の近所にある公園って分かりますか?』
『知ってる。今から行くからそこで待ってて』
スマホを閉じ、慌ててまた出かけて行った俺に母さんが俺を呼び止める声が聞こえる。
(母さん、ごめん。でも、今は…今だけは翔太君の所へ行かなくちゃ!)
心の中で謝罪を述べ、母さんの声を無視して家を出た所で菜波と出くわした。
「こんな時間からどこに行くの?」
「公園!謝りにいく!」
「ちょ、誰に謝りにいくのよ!」
菜波の制止も振り切って、翔太君の所へと駆け寄った。
公園に着くと、ブランコに翔太君は居た。
「翔太君」
「…凪先輩」
ここ数日会ってないだけで翔太がかなり痩せて見え、心配になる。
「どうし…」
「凪先輩、座ってください」
翔太に促され凪は翔太の横に座る。
「…連絡無視しちゃってすみません。でも、我慢出来そうになかったから…」
「我慢?」
翔太は凪の手を取り、震える声で話す。
突然のことで流石に驚くが、声を出すことも出来なかった。
「先輩…好きな人って居るんですか?」
「…?居ないけど、どうしたの?いきなり」
「この前、先輩が女の子と登校してるのを見ちゃって…"先輩は女の子が好きなのかも"とか"知らないだけでもう彼女が居るのかもしれない"とか"僕なんかいつかは捨てられるのかも"とか思っちゃって」
「…そっか。でも、あれは俺の幼馴染でアイツには彼氏が居るから好きになるとかは無いよ?」
「そうなの?」
「あぁ、それに…俺には彼女も居ないから安心して」
「…なんだ…良かった…!」
翔太が胸を撫で下ろす。
そこで凪はふとした疑問をぶつける。
「でも、どうして俺が女の子と登校してるだけでそんなに不安になるの?というか…どうして俺の恋愛事情が気になるの?」
凪が問うと、翔太はポツリポツリと話し始めた。
「僕、家にも外にも居場所がないんです」
「…それは、居づらいってこと?」
「…それもそうですけど、最後は裏切られるんです」
「裏切られる?」
「はい…彼女には振られる、両親はどこかに行ったきり帰って来ない…友達も次第に居なくなって…もう、誰とも付き合わなくても良いやって…そんな時に凪先輩と出逢って、拒まれない環境が心地よくて…僕、凪先輩とずっと一緒に居たい。凪先輩に見捨てられたくない…もう、凪先輩なしでは生きられないんです!」
「…翔太君…良いよ、ずっと一緒に居よう」
翔太が信じられないともう一度確認する。
「…本当に?」
「あぁ」
凪の返事を聞いて、翔太の表情も徐々に晴れていく。



