「おはよーさん!」

教室にたどり着き、席に座る凪に友達の航平が元気いっぱいに挨拶をしてきた。

「おはよ」

「お前、今日遅かったじゃん。どしたの?」

「どうもしないよ」

凪がスマホを取り出し、ゲームを始めると小さすぎるだろとツッコミたくなる155cmの航平が俺の幼馴染の菜波に肩を叩かれていた。

「おはよーおチビちゃん。凪、今日お裾分け持ってって良い?」

菜波は凪に尋ねながら、航平の頭に肘を乗せる。

「良いよ」

「いぃ痛い!痛い!おい!」

「いやー、おチビちゃんは肘置きに丁度良いからさ」

「はぁー!?」

(いい加減に付き合えば良いのに…)

今日もふたりの遣り取りを見て平和な時が過ぎていった。






昼休みになると、凪はスマホにメッセージが来ていることに気付く。

どうやら、今朝の彼の名前は翔太というらしく、御礼がしたいと駅前のファストフード店に凪を誘っている内容だった。

了承の旨のメールを送り、教室でひとり昼食を食べる。

航平と菜波は中庭で昼食を食べるらしく、ふたりでいつものように言い争いながら去って行った。








昼食を食べ終わり、のんびりスマホで漫画を読む。

しばらく読み耽っていると、教室の入り口から声が聞こえて来た。

「失礼します!」

「あれ?翔太君?」

「良かった、まだ居た!あの、もし良かったらこれから一緒にお昼ご飯でも…」

息を切らしながら、翔太君は凪に声をかける。
「あー…ごめん、ご飯はもう全部食べちゃったんだ…」

「…で、ですよねー…あ、それならここで食べても大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど…」

ずいずい入って来る翔太君に意外と大胆な人なんだなと思いながら、凪は翔太君が座る椅子を用意する。

「ありがとうございます」

翔太君が椅子に座るのを見て、凪も椅子に座る。
「どうしたの?」

「…どうもしないんですけど、僕が凪先輩に逢いたくなってしまったので…あ、凪先輩って呼んで大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど…」

(す、凄いグイグイ来る人だな…距離の詰め方も上手い)

「良かったー!凪先輩、これからよろしくお願いしますね!」

「よろしく、翔太君…というか今更だけど、翔太君って呼んで大丈夫だった?」

「大丈夫です!むしろ、嬉しいです!」

その日から翔太君は毎日のように俺のクラスに来てはご飯を食べて、談笑してと一気に仲良くなっていった。