朝の通勤ラッシュ、駅に併設されたコンビニで

俺、佐久間 凪(17)は、人混みを掻き分けながら今日の昼食を選ぶ。

昼食を選び終え、レジに並ぶ。

会計を済ませた後

「あ、あの…!」

小さな声が聞こえて後ろを振り向くと、170cmある凪よりも10cmくらい大きく、俺と同じグレー基調のブレザーを着た男が見えた。

「何?」

「これ、落としましたよ」

差し出されたボタンに見覚えしかなく、凪はカーディガンを見る。

案の定、カーディガンのボタンが取れていた。

「ありがとう」

ボタンを受け取り、カーディガンのポケットにボタンを仕舞う。

お礼も述べたし、コンビニから出ようとしたその時…

カーディガンの裾を掴まれる。

「それ、校則大丈夫なんですか?」

「流石に頭髪検査の時には着ないよ」

「ですよねー…あ、引き止めてすみません。それじゃ」

名前も知らない彼が去って行く。

遅れてコンビニを出ると、あの彼が傘を忘れたようで途方に暮れていた。

「俺、折り畳み傘あるからそれ貸すよ」

声をかけると、彼は凪を見つめて「ありがとうございます。いやー、助かりました」

「君、ここから俺が出るのを待ってたでしょ…」

あははと笑って誤魔化す彼を怒る気にもなれず、そのまま受け流し、学校に着いた。




「本当にありがとうございました!お礼がしたいので、連絡先交換しても良いですか?」

傘を閉じ、翔太は凪に話しかける。

「良いよ」

凪が返事をしてスマホを出すと、彼もスマホを取り出す。

ササッと連絡先を交換すると、彼はペコペコとお辞儀をして走り去って行った。

これが凪と翔太の始まりのきっかけだった。