それから、俺は依頼内容にあった鱗と爪、後は食べるための肉の塊を解体してエイラたちと分かれてから冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルトのカウンターにそれらの素材を置くと、冒険者ギルド職員の女性は目をぱちぱちとさせてから俺を見た。
「えっと、博さんって昨日冒険者登録したばかりですよね?」
「ええ。そうですね」
「登録した翌日にハイリザードを討伐って、凄まじいですね。あっ、ノエルも一緒だったのか」
冒険者ギルドの女性はそう言って俺の隣にいるノエルを見た。すると、ノエルは小さく首を横に振った。
「いいや。うちは周りにいたリザードを倒しただけだぞ。おっさんが一人でハイリザードを倒したんだ。瞬殺だったんだぜ!」
「ハイリザードを瞬殺っ……博さんっ!」
ノエルの言葉を聞いたギルド職員の女性はノエルの言葉を聞くなり、俺の両手を力強く握ってきた。
俺が突然のギルド職員の行動に驚いていると、握っている手の力をさらに強めた。
「博さん! これからもこの街の冒険者ギルドをよろしくお願いしますね!」
「か、可能な限り頑張ります」
俺がそう答えると、冒険者ギルド職員の女性は何度も力強く頷いた。
それからふと視線に気づいて辺りを見ると、冒険者ギルドにいる冒険者たちが俺たちのことを興味深げに見ていた。
何だろうかと思い、俺は声を潜めてギルド職員に聞いてみる。
「なんか凄い視線感じるんですけど、気のせいですかね?」
すると、ギルド職員の女性が辺りを見渡して小さく笑った。
「初日にあれだけの薬草を取ってくれば噂にもなりますよ。今度ハイリザードの依頼を受けたからって、みなさんどんな成果になるか楽しみだったみたいでした」
「なるほど。だからですか」
カウンターの上に置いていあるハイリザードの素材を指さして何か言っている気がしたが、単に俺たちがハイリザードを倒してきたことに驚いているのだろう。
「魔物がいる森の中、あれだけの薬草を見つけてきたわけですからね。昨日なんて、博さんが冒険者ギルドを出てから、『あいつは何者だ!』ってちょっとした騒ぎだったんですから。期待の新人なんていう人もいてーー」
「はんっ、何が期待の新人だ。ただのおっさんじゃねーかよ」
すると、冒険者ギルド職員の女性の言葉を遮るように、一人の男が俺たちのいるカウンターに近づいてきた。
男は挑発するような笑みを浮かべながら、俺の肩をぽんぽんっと叩く。
「田舎から出てきたんだろ? おっさんは痛い目見る前に、実家に帰った方がいいんじゃねーか?」
田舎のヤンキーみたいな風貌だが、歳は二十歳前後のような幼さを感じる。
ヤンキーは苦手だが、さすがに十歳以上も歳が離れた若造相手に必要以上にビビったりはしない。
でも、このタイプって下手に刺激したりしたら逆上してきそうなんだよな。どうしたものか……。
俺がそんなふうに頭を悩ませていると、ノエルが俺の腕を引いて田舎のヤンキーみたいな男を強く睨んだ。
「おっさんはただのおっさんじゃないからな。ワードなんかじゃ相手にならねくらい強いぞ」
あっ、下手に刺激したらまずいってば。
そう考えたところですでに遅かったらしく、ワードという男は青筋を立ててノエルにがんを飛ばして近づいてきた。
「このガキッ、誰がおっさんに負けるって?」
これ以上はノエルが危ないと思った俺は、ノエルとワードの間に入って仲裁する。
「そんなに怒ることないだろ。子どもがふざけて言っただけのことだぞ」
「黙ってろおっさん。今はそこのクソガキと俺が話してんだ」
ワードはそう言うと、俺をぐいっと押してノエルに迫ろうとした。
俺が何も言い返さなかったから、ノエルが言い返してくれたのに、ここでノエルに危険が及ぶようなことはさせたくない。
それに、小学生と大学生が喧嘩してたら、おっさんなら誰でも止めるだろ。
俺は素の状態だと力負けすると思って、スキル『おっさん』を使うのことにした。
けんかを止めるのに一番いいのは……やっぱり、合気道とかだろう。
俺がおっさん合気道の力を使おうと考えると、カチッと頭の中で何かがハマる音が聞こえた。
なんとかこいつを押さえ込まないと。そう考えた瞬間、俺を押してきたワードの腕を取って、力を利用してそのままワードをカウンターの机に叩きつけてしまった。
ドンッという鈍い音が響いた後、ワードのみっともない悲鳴が聞こえてきた。
「ぐっ! いてててっ! は、離せよ!」
「あっ、申し訳ない! 体が勝手に動いてしまった」
俺はやり過ぎたかと思って慌ててワードの体から手を離す。しかし、ワードは俺に制圧されたことが気に食わなかったのか、俺に殴りかかってきた。
俺はおっさん合気道の力を使っていたこともあり、何でもないようにワードの一撃をかわした。
「は?」
ワードの間の抜けた声を聞きながら、俺はワードの手を取り、足を引っかけて空中で一回転させてしまった。
あっ、またやり過ぎたかもしれない。
しかし、そう思った時にはすでに遅く、ワードは床に背中を叩きつけてしまった。
「がはっ!!」
ワードは背中を強打してしばらくバタバタを暴れてから、呼吸を荒くさせていた。俺は大衆の前でやり過ぎたと反省して眉を下げる。
「……本当に申し訳ない。少し大人げなかったよな」
俺が立ち上がりやすいように手を差し出すと、ワードはその手を弾いて俺を強く睨んだ。
「このっ、ただで済むと思うなよっ!」
それから、ワードはそんな捨て台詞を吐いて逃げるように冒険者ギルドを後にしたのだった。
大人げないことをしてしまったなぁ。
大学生くらいの子のプライドを傷つけてしまった気がして、俺は頬を掻いて少しだけ反省するのだった。
冒険者ギルトのカウンターにそれらの素材を置くと、冒険者ギルド職員の女性は目をぱちぱちとさせてから俺を見た。
「えっと、博さんって昨日冒険者登録したばかりですよね?」
「ええ。そうですね」
「登録した翌日にハイリザードを討伐って、凄まじいですね。あっ、ノエルも一緒だったのか」
冒険者ギルドの女性はそう言って俺の隣にいるノエルを見た。すると、ノエルは小さく首を横に振った。
「いいや。うちは周りにいたリザードを倒しただけだぞ。おっさんが一人でハイリザードを倒したんだ。瞬殺だったんだぜ!」
「ハイリザードを瞬殺っ……博さんっ!」
ノエルの言葉を聞いたギルド職員の女性はノエルの言葉を聞くなり、俺の両手を力強く握ってきた。
俺が突然のギルド職員の行動に驚いていると、握っている手の力をさらに強めた。
「博さん! これからもこの街の冒険者ギルドをよろしくお願いしますね!」
「か、可能な限り頑張ります」
俺がそう答えると、冒険者ギルド職員の女性は何度も力強く頷いた。
それからふと視線に気づいて辺りを見ると、冒険者ギルドにいる冒険者たちが俺たちのことを興味深げに見ていた。
何だろうかと思い、俺は声を潜めてギルド職員に聞いてみる。
「なんか凄い視線感じるんですけど、気のせいですかね?」
すると、ギルド職員の女性が辺りを見渡して小さく笑った。
「初日にあれだけの薬草を取ってくれば噂にもなりますよ。今度ハイリザードの依頼を受けたからって、みなさんどんな成果になるか楽しみだったみたいでした」
「なるほど。だからですか」
カウンターの上に置いていあるハイリザードの素材を指さして何か言っている気がしたが、単に俺たちがハイリザードを倒してきたことに驚いているのだろう。
「魔物がいる森の中、あれだけの薬草を見つけてきたわけですからね。昨日なんて、博さんが冒険者ギルドを出てから、『あいつは何者だ!』ってちょっとした騒ぎだったんですから。期待の新人なんていう人もいてーー」
「はんっ、何が期待の新人だ。ただのおっさんじゃねーかよ」
すると、冒険者ギルド職員の女性の言葉を遮るように、一人の男が俺たちのいるカウンターに近づいてきた。
男は挑発するような笑みを浮かべながら、俺の肩をぽんぽんっと叩く。
「田舎から出てきたんだろ? おっさんは痛い目見る前に、実家に帰った方がいいんじゃねーか?」
田舎のヤンキーみたいな風貌だが、歳は二十歳前後のような幼さを感じる。
ヤンキーは苦手だが、さすがに十歳以上も歳が離れた若造相手に必要以上にビビったりはしない。
でも、このタイプって下手に刺激したりしたら逆上してきそうなんだよな。どうしたものか……。
俺がそんなふうに頭を悩ませていると、ノエルが俺の腕を引いて田舎のヤンキーみたいな男を強く睨んだ。
「おっさんはただのおっさんじゃないからな。ワードなんかじゃ相手にならねくらい強いぞ」
あっ、下手に刺激したらまずいってば。
そう考えたところですでに遅かったらしく、ワードという男は青筋を立ててノエルにがんを飛ばして近づいてきた。
「このガキッ、誰がおっさんに負けるって?」
これ以上はノエルが危ないと思った俺は、ノエルとワードの間に入って仲裁する。
「そんなに怒ることないだろ。子どもがふざけて言っただけのことだぞ」
「黙ってろおっさん。今はそこのクソガキと俺が話してんだ」
ワードはそう言うと、俺をぐいっと押してノエルに迫ろうとした。
俺が何も言い返さなかったから、ノエルが言い返してくれたのに、ここでノエルに危険が及ぶようなことはさせたくない。
それに、小学生と大学生が喧嘩してたら、おっさんなら誰でも止めるだろ。
俺は素の状態だと力負けすると思って、スキル『おっさん』を使うのことにした。
けんかを止めるのに一番いいのは……やっぱり、合気道とかだろう。
俺がおっさん合気道の力を使おうと考えると、カチッと頭の中で何かがハマる音が聞こえた。
なんとかこいつを押さえ込まないと。そう考えた瞬間、俺を押してきたワードの腕を取って、力を利用してそのままワードをカウンターの机に叩きつけてしまった。
ドンッという鈍い音が響いた後、ワードのみっともない悲鳴が聞こえてきた。
「ぐっ! いてててっ! は、離せよ!」
「あっ、申し訳ない! 体が勝手に動いてしまった」
俺はやり過ぎたかと思って慌ててワードの体から手を離す。しかし、ワードは俺に制圧されたことが気に食わなかったのか、俺に殴りかかってきた。
俺はおっさん合気道の力を使っていたこともあり、何でもないようにワードの一撃をかわした。
「は?」
ワードの間の抜けた声を聞きながら、俺はワードの手を取り、足を引っかけて空中で一回転させてしまった。
あっ、またやり過ぎたかもしれない。
しかし、そう思った時にはすでに遅く、ワードは床に背中を叩きつけてしまった。
「がはっ!!」
ワードは背中を強打してしばらくバタバタを暴れてから、呼吸を荒くさせていた。俺は大衆の前でやり過ぎたと反省して眉を下げる。
「……本当に申し訳ない。少し大人げなかったよな」
俺が立ち上がりやすいように手を差し出すと、ワードはその手を弾いて俺を強く睨んだ。
「このっ、ただで済むと思うなよっ!」
それから、ワードはそんな捨て台詞を吐いて逃げるように冒険者ギルドを後にしたのだった。
大人げないことをしてしまったなぁ。
大学生くらいの子のプライドを傷つけてしまった気がして、俺は頬を掻いて少しだけ反省するのだった。



