ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 巨大な雷の塊が俺に直撃する。

 ぐぬぅううう! やっぱ痛てぇええええ!!

 意識飛びそうだぜぇ……だがな。
 避けるわけにはいかねぇんだよ。

 俺の肉壁が突破されたら―――


 ステラに当たるだろうがぁああ!!


 「ぐっっ……このやろう……クソデカい雷ぶつけやがって……」


 なんとか耐えきったが、俺の両足は体を支える力が残っておらず、膝からガクンと地に落ちる。

 「あ、アビロス―――!」

 ステラが駆け寄り、俺の身体を支えてくれた。
 プスプスと焼けこげた音がして、全身の感覚がない。魔力も使用できずにガチの耐久力だけで防いだんだから当然か。

 聖女の腕の中でぐったりする俺。
 なんかこんなシーンが以前にもあったような気がする。

 しかし、これで俺は使い物にならなくなった。
 次に同じ攻撃が来たら、もはや防ぎようがない。


 ステラの腕から顔をあげて、一人の男に叫んだ。


 「ブレイル――――――次はおまえの番だぞ!!」


 「あ、アビロス君……そんな黒焦げになってまで……」

 「グダグダ言ってんじゃねぇ! さっさとぶちかましやがれ!!」

 「うん、わかったよ。なんだかやれそうな気がしてきた!」


 ブレイルから力が湧きだしてくるのを感じる。以前の地下室の時と同じ。
 そう、覚醒した時の力だ。

 ふぅ……やっと気合入りやがったか。

 「悪役きっかけで感情爆発させてんじゃねぇよ……主人公。」

 デゴン次男に向かって全力疾走する主人公の背中を見て、俺は呟いた。


 「うぉおおおおおおお!
 ――――――栄光の斬撃(シャインフラッシュ)!!」


 少し不格好ながらも、力強い踏み込みからの跳躍。その勢いのまま剣を振りおろす。
 そうだ、例え魔力が付与されて無くても―――思いっきり振りぬけ! ブレイル!


 「ヒャグハッ!! このクソガキがぁあああ!!」

 ブレイルの光の斬撃が、デゴン次男に直撃した。

 三男の【超回復】で即座に傷口をふさぐ次男。

 こいつらは、三男の【超回復】があるので、防御に関してはそこそこ無頓着だ。
 だからブレイルの斬撃も簡単にくらう。

 「でもよぉ―――軽いんだよぉおお!! ヒャハアア!」

 「うあ……ぐっ」

 デゴン次男の強烈なパンチがブレイルの腹を強打し、苦痛の声をあげるブレイル。
 その勢いのまま体が宙を舞い、俺たちの眼前まで吹っ飛ばされてきた。


 「ヒャハァアア!! 歯ごたえねぇなあ~~」


 俺の眼前でぐったりするブレイル。


 「ブレイル……良くやった。これで勝機はみえたぞ」

 俺の言葉を聞いたブレイルは、ぶっ倒れたまま右手のみをグッとあげる。サムズアップしてやがる。
 ハハッ、根性みせたな主人公。良くやった。


 「シャハハハ~~勝機だぁ? てめぇもボロボロのくせにいきがるんじゃねぇよ!」


 「少し黙りなさい、魔族。あなたたちの時間は終りです!
 聖女の名において命ずる、聖なる息吹をこの者に与えよ
 ――――――聖上級回復魔法(ホーリーハイヒール)!!」


 純白の光が俺の身体を包み込む。ステラの優しい匂いがする。


 体の全ての傷がふさがり、新鮮な血液が俺の体中を駆け巡り始めた。
 俺は、スッと立ち上がりデゴン三兄弟をギロリと見据える。


 「おい、クソ魔族――――――誰がボロボロだって?」


 「シャ~~か、回復魔法だとぉ……おい次男! どうなっている!」
 「ヒャ~~あ、兄貴ぃいいい! 俺の【魔力使用禁止】が発動してねぇええ!!」


 たしかに光属性が込められていないブレイルの栄光の斬撃(シャインフラッシュ)は、たいした攻撃力はない。

 だが、斬撃をくらった対象の特殊効果を全て無効にする。

 この能力のみは発動しているんだよ。


 そして俺たちに魔力が戻ったってことはよ―――


 「うぉおおおお!!
 ――――――王家の赤い炎槍(ロイヤルファイアースピア)!!」


 赤毛の王女がとんでもない速度で、デゴン次男に突っ込んでいく。


 ハハッ、こういうことだよ!

 「ステラ! デゴン三男をやれるか!」
 「アビロス! だれに言ってるんですか? 聖女に不可能はありません!」

 「よし……頼んだぞ。【魔力使用禁止】が封じられたといっても手強いことに変わりはない。油断するなよ」
 「わかりました。アビロスも……あまり無茶をしないように! これはおまじないです」

 ステラはそう言うと、走り際に俺の頬に唇を押し付けて行った。


 ―――ハハッ、これは気合が入るぜ。


 「あ、アビロス君……僕……役にたったよね?」
 「ああ、大活躍だブレイル! 本当に良くやった!」

 ブレイルはステラの回復魔法で傷や体力は回復したはずだが、ぐったりとしている。
 無理に覚醒した力を引き出したので、精神負荷が強すぎたのだろう。

 「あとは、俺たちに任せておけ」
 「あ、アビロス君……」
 「なんだ? ブレイル?」
 「ぼ、ぼくも聖女さまみたいに、おまじないしてあげる」

 おい、なぜ唇を突き出す?

 「それはまたの機会にな」

 まあ頑張ったので、ここで全否定するのは可哀そうな気がした。

 「ええ! またの機会! 楽しみだな~~またっていつ? 明日、明後日? それとも1時間後かなぁ~~」

 クソっ。いらん事を言ってしまった……こいつマジで覚えてそうで怖い。

 が、今はそれどころじゃない。

 「ナリサ、ウルネラ! エリスとブレイルを頼んだぞ!」
 「「まかせてアブロス君!」アビロっち!」


 ゲーム原作ではブレイル(主人公)がデゴンを倒すことになっている。


 が―――悪役がデゴンを倒す世界。
 そんな世界が、ひとつぐらいあってもいいだろう。


 俺たちはそれぞれの最終決戦にむけて、進み始めた。