ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 ステラの聖属性閃光弾が―――
 ウルネラの巨大な火球が―――
 マリーナの激烈な炎の突きが―――
 ブレイルの光の斬撃が―――

 そして、俺の超重力を付与した黒い斬撃がデゴン3兄弟に放たれる。

 ―――やつらに動きがまったくない!?

 その場で俺たちを見下すかのようにニヤニヤとする三兄弟。

 なに余裕ぶってやがる! これで終わっちまうぞ―――


 ―――!?


 なんだ! 俺の剣が……軽い!!

 この感覚、魔法付与が解除されているのか!

 横を追走するブレイルの剣も、光が失われている。

 俺とブレイルの斬撃はデゴン長男に達する時には、ただの斬撃に変わっていた。

 「シャハハハ~~よっと!」

 デゴン長男は自身の爪を伸ばして、軽く俺とブレイルの斬撃を弾く。


 「……っ! 魔法が……」
 「うっそ……なにこれ? 意味わかんないんだけど……」

 ステラとウルネラの魔法は、デゴン三男に到達する前に消えてしまった。

 「―――うらぁああああ!!」

 マリーナもその膨大な炎の衣を失い、ただの突きになっている。

 「ヒャハハハ―――軽いなぁ!!」

 構えた盾を振り払い、マリーナはスピアごと後方へ弾き飛ばされた。


 なんだこれ? 

 特殊な魔法防壁か結界でもはっているのか?

 いや……違う。

 俺の中に感じるいつもの感覚がない。


 ――――――魔力だ。


 デゴン次男がニヤリと口角を上げた。

 「ヒャハハハ―――【魔力使用禁止】ぃいいい!!
 てめぇらは一切魔力が使えなくなったんだよぉおおお~~ヒャハハハ!!」


 固有能力か―――


 上位の魔族や魔物が持つ独自能力。
 にしても【魔力使用禁止】ってなんだよ。無茶苦茶だ。原作にもそんな能力は出てこなかった。

 「アビロス君、回復魔法も使えないよ……このままじゃエリスさまが」

 エリスを抱きかかえたナリサが悲痛な声をあげる。


 「シャハハハ~~じゃあそろそろ死んどくかぁ~~ゴミども!
 ―――悪魔雷球魔法(デーモンサンダーボール)!」

 三兄弟から同時に放たれる雷の弾丸。

 チッ、通常の斬撃で防ぐしかないか―――

 そこへ俺の横を赤い人影が飛び出して行く。


 「魔力が使用できないからなんだ!
 であれば―――この鍛え上げた力で押すのみだ! うぉおおおお!!」


 マリーナは正面の雷弾をスピアで突き破り、そのままデゴン次男の腹部に槍を突き立てる。

 「グヒャハ!! こいつ……人間のくせにバカ力じゃねぇか! 弟よぉおお!!」
 「フャハハハ―――ちょ、【超回復】ぅううう!!」

 三男の声とともに、デゴン次男の傷が一瞬にして塞がっていく。

 こいつも、固有能力もちか―――

 「ヒャハハハ~~それ~~」

 再び雷弾を放つデゴン次男

 マリーナは雷弾を交わすためにいったん後方へ跳ぶ。
 ステラは、ウルネラ、ナリサ、エリスの前に立って、近づく雷弾を聖杖で叩き落としている。

 魔法の連撃速度が速い! これじゃ防戦一方になるぞ。


 この状況を打破するには……


 「ブレイル! おまえの【栄光の斬撃(シャインフラッシュ)】が必要だ!」
 「ええ! アビロス君……ぼくそれは上手くできないよ……」

 【栄光の斬撃(シャインフラッシュ)】、相手のいかなる特殊攻撃も無効化する。覚醒後の主人公チート斬撃。特殊攻撃自体は魔力を消費するわけではないので、理論上は使用可能なはずだ。

 訓練では1回だけ発動したが、その後は一度も発動に成功していない。
 その1回は母親をけなされた時―――つまりブレイルにとって大事なものを傷つけられた時だ。

 おそらくブレイルの闘争心が一定以上に上がると、発動可能状態になるのだろう。


 「ブレイル! おまえならやれる! 自分の中の闘志を前面にだしてみろ! ―――グッ!」


 言いながらも、デゴン兄弟の放つ雷弾を必死に叩き落とす。

 クソッ、やっぱ魔力が使用できないのはキツイな。

 「――――――ゴハッ!!」

 そこへ再度突撃したマリーナが飛ばされて来た。回転しつつなんとか受け身を取る赤毛の少女。

 「マリーナ! 大丈夫か?」

 「大丈夫もクソもない! わたしはあいつらを必ず討ち果たす!」
 「そのとおりだ。だが少し落ち着け」

 「ふぅ……そうだなアビ。正直なところ魔力なしはキツイ。しかし攻撃の手を緩めるわけにはいかないぞ」 

 少し一呼吸入れたマリーナ。すでに体はボロボロだ。
 彼女のバカ力は凄まじいが、デゴンは上位魔族である。魔力・身体能力ともに一般レベルを大きく上回る。

 今はマリーナの猛攻がデゴンたちの気を引いているが、長くは続かない。


 「―――ブレイル! まだか!!」
 「あ、アビロス君ちょっと待って……」
 「なんでもいい! 怒れ!」
 「む~~~ん。む~~~ん」

 やはりいきなりは無理か。
 この世界でのブレイルは、闘争心を燃やすようなキャラとして成長してこなかった。

 なにか感情が爆発するきっかけがあればいいのだろうが、敵は待ってはくれない。


 「シャハハハ~~どうした! もう来ないのか~~ならそろそろ終わりにしてやる!」


 三兄弟がそろって魔力を練り込み始める。

 ―――デカい魔法がくる!! こいつは通常斬撃では防ぎきれん。


 しょうがない……久々だがやるしかない。


 「「「シャハハハ~~まとめて死にやがれ!
 ―――三兄弟悪魔雷球魔法(ブラザーデーモンサンダーボール)!!!」」」


 予想通りの巨大な雷球だ……だが―――


 「――――――不屈の肉壁(アビロスシールド)ぇええええ!!!」


 悪役の耐久力―――舐めんなよぉおお!