ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「―――うらぁあああ!」

 「フシィイイイイイイイ!!」

 俺の黒い斬撃が、キングビーの脚を一本斬り落とす。


 どうした? その程度か? 仮にも一種族の頂点に立つ魔物だろうが。


 キングビーが傷ついた羽を再び動かし始める。だが上空へは浮上できず、低空を浮いている。
 腹部先端からドデカイ針がせり出してきた。

 【猛毒ニードル】か―――

 キング―ビー最大の攻撃方法。ゲーム原作だと喰らうと無条件に即死判定される技。

 「みんな! あの巨大針には触れるな! 即死するぞ!」

 しかし、出すのが遅すぎだよ。
 万全の状態で初めから全力でくるべきだったな。

 俺は【ダークブレイド】に闇魔法を付与すべく魔力を込め始める。

 巨大針をぶち込もうと接近した時に終わらしてやる。


 「さあこい! キングビー!」


 しかしその場から動こうとしないキングビー。
 微妙にキングビーの巨体が揺らぎ始めたような錯覚に陥る。

 いや―――錯覚じゃない!?

 その揺らぎは徐々に大きくなり、キングビーの存在をかき消してしまう。


 「消える……だと」


 「あ、アビロス! 魔力も感じられません!」
 「アビ! 気配も消えているぞ!」

 ステラとマリーナの言う通りだ。
 あんなにでかい図体なのに、魔力も気配もまったく感じられない。羽の音もしないぞ。本当に消えやがった! まさか……

 ―――【完全遮断】か!

 【完全遮断】は隠密系キャラを極めると手に入る能力だ。

 これもストーリー改変の影響なのか。キングビーは本来【完全遮断】など使用できない。
 しかし滅茶苦茶だな。こいつ隠密キャラでもなんでもないぞ、でかいハチじゃねぇか。


 クソっ……どこにいるかわからねぇ。


 「アビロスさま―――10時の方向、距離10メートル! きます!」

 エリス!?

 俺はエリスの声で咄嗟に後方に飛びながら【ダークブレイド】を縦に構えた。

 左10時方向から突然現れる巨大な針が、刃にあたり火花を散らす。

 「ぐっ……あぶねぇ……」

 エリスの知らせがなければ、ヤバかったぞ。
 直前で後方に飛んだおかげで、防御の体勢を整えることができた。

 「エリス! 探知できるのか?」
 「はい、アビロスさま! 任せてください!」

 細腕でガッツポーズを取る金髪の美少女。

 魔力も気配も何もないのに探知するだと……マジかよ。
 ハハッ、凄いぞエリス。顔つきも昨晩とは大違いだ。

 「みんな! エリスの指示で奴の攻撃を見極めろ!」

 エリスの奮闘により、俺たちはキングビーの透明攻撃をなんとかかわしていく。

 キングビーはすでにかなりのダメージを負っている。さらに【完全遮断】なんて上位能力を連続使用しているんだ。そんな長時間にわたって、この攻撃は維持できないだろう。

 「アビロスさま! キングビーが浮上していきます!」

 まだ上空にいけるのか!
 なけなしの力を使って飛んでいるに違いない。

 狙いは……

 「キングビーが急降下してきます! ―――アビロスさまの頭上!」


 だと思ったよ―――


 だがそいつは悪手だぜ。どこから来るか予測してくれって言ってるようなもんだ。
 俺はあえてその場から微動だにしない。


 「―――上級聖光弾魔法(ハイホーリーバレット)!」
 「―――連続赤い炎槍(ガトリングファイアースピア)ぁああ!」

 側面から光の光弾と赤い槍撃が、急降下して来たキングビーの横っ腹に強烈な一撃を与えた。

 ほらな。
 俺はお前と違って仲間がいるんだよ―――


 「フシャアアアアア!!」


 側面に強烈な打撃を受けて、体勢を大きく崩すキングビー。【完全遮断】能力が解除されて、その巨体が露わになる。

 ブブ……ブブブ……

 羽を無理やり動かして、再度巨大針をこちらに向けようとする。


 「そんなチャンスを―――与えるわけがないだろうが!
 ――――――上級重力付与剣(ハイグラビティソード)!!」


 超重力が加わった黒い斬撃が、キングビーの頭部を直撃した。

 ミシっと頭部が潰れて、そのまま仰向けに地響きを立てて崩れ落ちる巨大なハチ。


 「ふう……手強かったが。俺たちを舐めてかかったのが運のつきだ」


 「アビロス! やりましたね!」
 「ハ~ハッハ、最後はアビに取られたか!」

 ステラとマリーナが笑顔で駆け寄ってきた。

 「お、おい……ステラ」

 「アビロス。私たちがサポートしたからいいものの、あんまり無茶はしないでください」

 ステラがその勢いのまま、俺の胸に飛び込んできた。
 そして口をとがらせて、眉をキュッと寄せる。

 「お……おう」

 2人の魔力が急激に上がっていくのを感じたので、間違いなくサポートは入ると思って回避って選択肢ははなっから除外してたんだが……
 たしかに、ちょっと雑なやり方だったかもしれないな。

 「悪かったよ。以後気を付ける」

 そう言うと、ステラはニッコリと微笑み、俺から離れて後ろを向いた。

 「さあ、エリスさまもどうぞ」

 「ええ! わ、わたくしもですか!」

 ステラに不意を突かれたのか、声のトーンが若干おかしいエリス。

 「そ、その……アビロスさま。わたくし、お役に立てたでしょうか?」

 役に立ったかだと?

 「ああ、もちろんだ。エリスがいたからみんな無事なんだ。訓練の成果は十分すぎるほどに出たよ。」

 【完全遮断】した対象物ですら探知できる魔法なんて、聞いたことがない。

 「ほ、本当ですか……!?」」
 「これ以上求めたら罰が当たるぞ」

 小さな声で「やった」と呟いたエリス。
 初日のどんよりした顔はもうそこには無かった。

 「飛び込まなくていいんですか?」
 「そ……それは。ちょっと無理そうです……」

 ステラに茶化されるエリス。
 なんかこの2人、今朝からやけに仲良くないか?

 「よし! エリス、探知魔法はまだ使用できるか? 悪いが休みなしで森を抜けるぞ!」

 森の異変の原因であろうキングビーは討伐したが、森を抜けないといけない。
 他にも魔物はウヨウヨいるからな。

 エリスから元気の良い返事を期待したが、その返答は無かった。

 返事の代わりに俺の腕の中に崩れ落ちるエリス。


 「―――お、おい! エリス!!」


 ――――――なんだこの魔力は!?


 「これは……アビロス! 魔族の魔力です!!」

 俺の腕の中にいるエリスから、おぞましい魔力が漏れ出しはじめている。

 彼女の中に封印されている魔族か。

 このタイミングで登場かよ……

 ―――いいだろう。


 魔族なんざさっさとシバいて、エリスを開放してやるまでだ。