ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「みんな! 大丈夫か!」
 「ええ、アビロス。私は大丈夫です!」

 ステラをはじめ、みんなから無事の声が飛んでくる。

 「アビロス、なぜあのような場所で転移魔法陣が発動したのでしょうか?」
 「俺にもわからん。が、警戒を怠るな!」

 誰が何の目的で、俺たちを転移させたのかはわからない。

 そして俺はあたりをぐるりと見渡した。

 魔物の森だな……

 「エリス? 探知魔法を使えるか?」
 「は、はい! アビロスさま!」
 「現在地を把握したい、やれるか?」
 「やってみます! いえ、やります!」

 即座に探査魔法を展開するエリス。
 彼女の瞳に強い意志を感じる。なんだろうか、今朝から彼女の雰囲気が変わったような気がする。

 「あ、アビロスさま!」
 「現在地がわかったか?」
 「はい……ここは……魔物の森、奥地です……」

 なるほど、俺たちは最大の危険エリアにとばされたってことか。

 「アビロス君……」
 「アビロっち……」

 ナリサとウルネラが不安な表情をして、声を漏らした。
 それはそうだろうな。いきなり奥地に飛ばされたんだ。不安にならない方がおかしい。

 「2人とも安心しろ。必ず生きて帰れる」
 「そうですね。こんな状況ぐらい力を合わせれば、どうとでもできます」
 「ハ~ハッハ、奥地なんだろ? 強い魔物とやれるじゃないか!」

 ステラにマリーナがらしい言葉を発する。

 「とりあえず、救援信号だな。ウルネラ、ファイアーボールを打ち上げられるか?」
 「う、うん。アビロっち。やれるよ」

 ここまで遠くに転移していると、信号自体に気付かれないかもしれないが。
 やれることは全てやっておく。これは重要だ。

 ウルネラが3発ファイアーボールを打ち上げたのち、俺たちは移動の準備をする。


 「―――アビロスさま! 上空から魔物数体が接近してきます!」

 エリスの展開していた探知魔法に、何かが引っかかったらしい。

 早速のおでましか!

 「―――あれは! ジャイアントビーか!」

 しかし様子がおかしい。襲ってくるというよりは、落ちてくるような!?

 ズンズンと鈍い音を立てて、地面に激突していく数体のジャイアントビー。
 落下の土煙が収まってきたと同時に、周辺が暗くなりはじめる。

 「あ、アビロスさま! 上空から巨大な魔物が!」

 再び空を見上げた俺の目に入ったもの―――


 なるほど、こいつがジャイアントビーを食い荒らしていたのか……


 「アビロっち! なにあれ? でかいんだけど!」

 ウルネラが驚くのも無理はない。
 俺たちの頭上には巨大なハチが、大きな羽音を立ててゆっくりと旋回していたのだ。


 ―――キングビーか。


 ハチ型魔物の中では最上位にあたるモンスター。
 原作では野外演習には出てこない魔物だ。
 本来はストーリー後半に出てくるのだが、ここも改変が発生しているのだろう。


 「フシィイイ!」

 キングビーはその巨体をゆっくりと優雅に旋回させながら、不気味な声を発している。
 俺たちを獲物と認定したらしい。

 「みなさん気を付けて! 魔力を集中しています!」

 ステラがみんなに注意喚起を促す。

 キングビーの全身から、黄色いトゲのような突起物が無数飛び出した。

 「ブレイル! ライトスラッシュで迎撃しろ!」
 「う、うん! わかったアビロス君!」

 すでに抜刀して、ライトスラッシュの構えを取っているブレイル。
 いいぞ主人公! だんだんさまになってきてるじゃねぇか!


 ―――んじゃ、俺もいくか!


 【ダークブレイド】を抜き、落下してくる無数のトゲに斬撃を放ちまくる。

 「そらそらそらそら―――!」
 「とお! とお! とお―――!」


 ―――悪役と主人公の乱れ撃ち

 こんなもん―――いくら飛ばしても無駄だ!

 キングビーによる頭上からのトゲ攻撃を防いでいる隙に、後方で魔法が発動する。


 「―――三連火炎魔法(トリプルファイアーボール)!!」
 「―――三連撃氷結槍魔法(トリプルアイスランス)!!」

 3つの火球と3つの氷槍がキングビーに直撃する。
 ウルネラとエリス、三連魔法が使えるのか。たいしたもんだな。

 そして―――

 「―――魔法防御力減少《アンチマジックディフェンス》!」

 ステラがキングビーの魔法耐性をダウンさせる。さらに―――

 「―――上級聖光弾魔法(ハイホーリーバレット)!」


 光の光弾が束になって、キングビーのどてっ腹に次々と命中した。
 防御力を落としてさらに追加攻撃かよ……とんでもない聖女さまだぜ。


 「フシィイイイイイイイ!!」

 不気味な鳴き声を放ちながら、その巨躯を震わせるキングビー。
 ズーーーンと地響きを立てて地上に降り立つ。

 羽の損傷が激しい、おそらく飛行維持ができなくなったのだろう。


 おいおい、降りてきていいのか。キングビー?


 眼前の赤い髪を揺らす少女が、真っ赤に燃えさかる魔力を一気に解放した。

 マリーナだ。

 「連続赤い炎槍(ガトリングファイアースピア)ぁああ!
 ――――――うぉおおおおおお!!」

 機関銃のような連続の赤い槍突きがキングビーを襲う。


 マリーナの怒涛の攻撃を受けて、その巨体を後退させるキングビー。


 ハハッ、格下だとなめていたのか?

 俺たちを侮るなよ。


 どっちが狩られる存在か――――――教えてやる!