ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「あら、アビロス? どうしたんです。ボロボロですよ?」
 「まあ、アビロスさま、そんな傷まみれで。大丈夫ですか?」

 銀髪の聖女ステラと金髪の王女エリスが不思議そうに俺を見る。
 俺は食事の手を止めた。

 「いや、ちょっと朝練をやりすぎただけだ」

 マリーナのやつめ、ガチの全力で打ち込んできやがった。
 体中が痛い。

 「そうですか。訓練はいいですがほどほどにしてくださいよ」
 「ああ、わかっているステラ」

 まったく……誰のおかげでこうなったと思ってるんだ。

 しかしステラたちの様子を見る限り、俺は何もやらかしてはいないようだ。
 取り合えずはホッとして、朝食のパンを再び口に運ぶ。


 「―――よし、食事をしながら聞け!」

 俺たちが朝食を取っていると、ラビア先生が野営地の中央で声をあげた。

 「食事が済み次第、各チームは植物採取に向かえ! 今日の夕飯はおまえたちが取って来た草だ! 食える草を取ってこいよ!」

 植物採取イベント。原作にはないイベントだ。
 本来ならば魔物の森に入るところを予定変更したからな。

 よって、俺も何が起こるかはわからん。



 ◇◇◇



 植物採取にあたり次の事が決められた。

 各チームは探索エリアを決めてラビア先生に報告する。
 また不測の事態が起これば、魔法を上空に3発打ち上げること。

 なにか起こった際に、ラビア先生が出来る限り早く駆けつけるためだ。

 野営地を離れて小一時間。もうすぐおれたちの探索エリアに到着する。
 といっても、森には入らない。あくまで森の外周部分での活動だ。


 「わ~い、草~草~~」
 「フフ、ブレイルさんたら。嬉しそうですね」
 「うん、聖女さま。僕はすっごい田舎農家の生まれだから。けっこう野草とか食べてたんだよ~~」
 「まあ、それは頼もしいですね。私も教会で一通りの野草は学びました、ともに頑張りましょう」
 「そっか~~じゃあ美味しい草をいっぱい食べれそうだね~」

 主人公と聖女(メインヒロイン)か。
 本来おまえたちがペアとなってストーリーを進めていくんだよな。

 そんな2人を見ていると、ブレイルがおもむろに地面の草を手に取った。

 「こういうのとか~~美味しいよ~~モグモグ~~」

 おい! ブレイル勝手に食うなよ……

 いかに野草に詳しくても、今回はチームプレイだ。みんなで集めて、みんなで判断する。
 俺は、ブレイルの元に行った。

 その瞬間、ステラが顔を真っ青にして叫ぶ。

 「ああ! それはわらい草で……食べたら―――笑い死にします!」


 「―――なにぃいいい! ブレイル吐け! 吐くんだ!」


 俺はブレイルの背中をドンドンと叩いた。
 なにが詳しいだよ! アホか、死んじまうぞ!

 「うわっ! うっぷぅ……アビロス君、なにするの~~ごっくん!」

 飲むんじゃねぇえええ!! 
 なにやってんだ!

 「ステラ、常態異常回復魔法をはやく―――」
 「ええ、アビロス!」

 だが、ステラが詠唱を開始するまえに、むっくり起き上がるブレイル。

 ケロッとしてやがる!?
 頭のネジが取れてしまったのか?

 「あ~~美味しかった~~」

 なんだと……

 「あれ? 2人とも、どうしたの?」

 「ステラ、これはどういうことなんだ?」
 「アビロス、私にもわかりません。わらい草を食べて無事な人とかよくわかりません」

 聖女をして、よくわからない人。

 このゲームの主人公なんだが。

 「やっぱりわらい草は大好き~~畑仕事しながらいつもつまんじゃうんだよね~~」

 いつもだと……

 おい、まさかこれ毎日食ってたのかブレイル……

 「ぶ、ブレイルさん……体調は? お腹の具合は大丈夫なのですか?」
 「ええ? もちろんだよ~食べちゃダメだった? でも、おなか下した事とか無いけどなぁ~~」

 ブレイルよ、それはたぶん主人公耐性だ。
 普通の人なら死んでるぞ。
 にしても主人公の高スペックをそんな耐性に使うなよ……

 そして俺の中で仮説が立てられる。

 ブレイル……

 おまえのその良く分からんキャラ、それを作ったのはこの草なんじゃないか。
 本来ならば笑い死にする草だぞ。いかにゲーム上の主人公チート耐性があるからといって、影響が全くないとは思えない。

 これがストーリー改変の影響なのかはわからない。

 が、平気だからといって。こんなものを永久に食べさせるわけにはいかない。

 「とにかく……ブレイル、いきなり草を食べるな」
 「うん! わかった。アビロス君!」

 屈託のない笑顔をみせる主人公。無邪気と言うか打算がないというか。


 序盤から良く分からない展開になってしまったが、その後は気を取り直して植物採取にいそしんだ俺たち。
 探索エリアには様々な種類の植物が自生しており、けっこう楽しめた。

 ブレイルだけは猛毒の草をやたら取って来るので、ポイさせたが。

 「さて、こんなもんでいいだろう」

 俺はみんなを集めて、帰路に就くことを伝える。

 「アビロス、色々採取できましたね」 
 「聖女さま、これお肌にいいんだよね。最高っしょ!」
 「こちらの薬草は疲労回復効果があるみたいです。わたくしお夕飯が楽しみです」

 みんな満足そうな顔をしている。

 いや、原作にはないイベントだったが、これはこれで良かったな。


 しかし帰り支度を始める俺たちに異変が起こる。

 「……光!?」
 「え? なにこれ!?」

 突如、俺たち全員を囲むように光が浮かび上がった。

 「あ、アビロス! これは魔法陣です!」

 そう叫んだステラの姿が消えていく。
 マリーナもエリスも、みんな。

 「―――チッ、転移魔法陣か!」

 俺の身体もみんなと同じようにその場から消えていく―――


 なるほど、そう簡単には終わるわけはないか。