ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「アビロス、ステラどう思う?」
 「はい、ラビア先生。おそらくは奥地にもっと強い個体がいるのかと」

 アビロスと私は、ラビア先生にジャイアントビーの一件を報告していた。

 「そう考えるのが道理だな。突然変異か、他から来たのか。いずれにせよ森での戦闘演習はなしにする。野営地付近での植物採取までだ」
 「ですね。俺もそれがいいと思います」
 「私もラビア先生の意見に賛成です」

 こんな状況で奥地にまで行くのはリスクが高いですから。演習を中止せずに続けるなら、妥当な対応だと思います。

 「フフ、なんだか行きたそうな顔をしているな、アビロス」
 「え? いや……どんなやつか見てみたかったってのはありますよ」
 「おまえとステラだけなら容赦なく奥地に放り込むんだが、この大所帯ではな」

 ラビア先生が、各々夕飯の準備をする生徒たちを見回す。

 フフ、相変わらずですね。この先生。
 はじめてご指導いただいた時から、貴族令嬢の淑女な扱いはこれっぽちもされないです。

 でもそのおかげで、ここまで強くなれたんですけどね。

 「ステラの夕食か~~いや~~楽しみだな~~」

 笑顔で私を見つめるアビロス。その瞳が大きく開かれて期待にランランと揺れています。


 ―――もう、そんなに無邪気にはしゃがないでください。子供ですか。


 ―――頑張っちゃいますよ。

 アビロスが期待してくれているのですから。



 ◇◇◇


 さて、手元にある食材は。

 ・バラの骨付き肉
 ・トウモロコシ
 ・卵
 ・バター

 持ち込みが出来る食材で鮮度が持つのは今日まで。
 明日からは携帯食料の日々です。なら今日はいいもの作りましょう。

 はい、決まりました。

 お肉は、スペアリブにします。
 あとの食材はコーンスープにしましょう。

 ―――アビロスに選んでもらったまな板を出して。

 ふふ、アビロスったら、私の手料理毎日食べたいとか言っちゃて~~

 新居を構えるなら、お台所が広いお屋敷がいいですね。
 シェフは雇いますけど、私もお料理を作るから、そうなるとシェフの方はやりずらいでしょうか?

 う~ん、でも雇わないというわけにも……私も聖女として貴族としてのお勤めはありますからね。

 アビロスに相談しないと……って!

 なにニヤけた顔してるんです! 私! 

 けません、手が止まってました……お料理しないと! 
 ちょっと妄想がすぎました。


 ~それからしばしの間、料理に集中~


 「よし、こんなもんですかね」

 準備したお料理は2品。
 野営地にしてはいいものができました。

 「では、最後に―――」

 聖杖を掲げて、祈りを捧げます。
 最後のは秘密の味付けです。


 「おお! ステラ! できたのか? できたんだな!」

 早速アビロスが来ました。
 そして、それに続いてみなさんも。

 焚き木の周りに座って、食事をはじめます。

 「す、すごい! お料理全体が輝いている……!?」
 「ハ~ハッハ。ステラはなんでもできるな! これはうまい!」
 「聖女さまって才女だね~~こんなお嫁さんいたら最高っしょ」
 「う、うわ~~すごい、このコーンスープどうやって作ったの? 野菜もはいってるよ~~」

 良かった。満足頂けたようです。

 ちなみに最後の味付けは、聖女の力である【祝福】をお料理にふりまいたんです。
 効果は……食べた人それぞれに少しだけ幸福を与えます。

 まあ、ちょっとズルですけどね。

 でも使えるものは全て使え。これラビア先生の大事な教えです。


 さて―――私の本命さんに感想を伺いましょうか。


 「アビロス、どうですか?」

 「おお! ステラ! 美味い! モグっ! う、うま! こ、このにく! モグモグ!!」

 お行儀が悪いですよ。話すか食べるかどっちかになさい。


 でも……一番欲しい人から、一番うれしいお言葉を頂きました。


 はぁ~~もう満足です。なんかおなかいっぱいな気分。
 でも明日も実習は続きますからね。私も少しはお腹に入れておかないと。

 みなさんにも好評なようで良かったです。楽しそうでなにより。
 一番隅っこでどんよりしている姫君以外は……

 「―――エリスさま、お味はいかがですか?」
 「おいしいです……ステラさま」

 エリスさまは力なく俯く。
 食事の手もあまり進んでいないようだった。


 ふぅ―――しょうがないですね。



 ◇◇◇



 食事後は簡単に明日のミーティングを済ませて、お片付け。
 そして、就寝です。

 女性用のテントではすでにナリサさん、ウルネラさんが熟睡してますね。
 疲れが溜まっていたのでしょう。すぐに寝れるのはいいことです。

 私もすぐに寝たいところですが、やることがあります。
 スッと寝袋から出て、寝間着の上に制服のブレザーを羽織る。

 「ステラ―――」

 私を呼び止めたのは、マリーナさま。

 「大丈夫です。すこし妹君をお借りしますね」
 「ああ、すまないな。あのとおり不器用な子なんだ。今はわたしよりステラの方がいいだろう」

 フフ、マリーナさまは本当に妹君を大切にしてますね。
 テントから出ると、エリスさまは焚き木の前にポツンと佇んでいた。

 「となりよろしいですか?」
 「はい……ステラさま……」

 「眠れませんか?」
 「はい……寝る気になれません。せっかく訓練して頂いたのに……」

 エリスさまが俯きながらポソっと呟いた。

 「はじめて魔族と戦った時―――アビロスも私も今のエリスさまと変わりませんでしたよ」
 「え……アビロスさまやステラさまが……わたくしと一緒!? ウソ……」
 「フフ、ウソなんかじゃありません。アビロスなんてスカートをめくる魔法しか使えませんでした」
 「それって、わたくしを助けて頂いたときの魔法ですね」
 「そうです。ちょっと聞いてください。酷いんですよ! 私、その時もめくられたんですからっ!」
 「まあ、アビロスさまったら、フフフ」

 「やっと顔を上げましたね。エリスさま」

 エリスさまは、ハッとして私に視線を向ける。

 「あ、ありがとうございます……わたくしの為に」

 さてと、あとは元気を取り戻してもらいましょうか。
 これは彼女にもしっかりと宣言しておかないといけないですし。

 「ふふ、あとライバルとしても負けませんよ。アビロスは渡しません。どちらかというと今日の本題はそこでした」
 「す、ステラさま……」

 「まあ、今のエリスさまには負ける気がしませんけどね」
 「わ、わたくしだって負けません! 今からアビロスさまと思い出いっぱい作るんだから!」


 エリスさまは私の瞳をキッと見据えて、両手をグッと握る。


 「なるほど、やっぱり強敵かもしれませんね、フフ」
 「あ……ステラさま。私……!」

 その瞳の奥に活力が出てきたエリスさま。
 はぁ~~ライバルを復活させちゃいました。


 でも、まったく負ける気はありませんよ。たとえ王女が相手だろうが。
 ですが、今日は休戦としましょう。


 「さて、元気の戻ったエリスさま」
 「はい? なんでしょう元気を戻してくれたステラさま?」

 「今日は頑張りましたよね、私たち」
 「えと、そうですね」
 「でしたら―――ご褒美をもらわないと」
 「そういうものなんでしょうか?」

 「当たり前です! 頑張った女の子にご褒美をあげられない男はダメです!」
 「え? 男? ごほうびって……誰から貰う気なのでしょうか?」

 エリスさまは目を白黒させてわたしを見つめた。


 「はい、あそこです―――ご褒美」


 私は小さなテントを指さしました。

 「ふふ、じゃあ2人で行きましょうか」
 「え? え? 行く?? アビロスさまのテント……えぇええええ!?」

 「エリスさま? 行かないんですか? では私だけで―――」
 「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 「どうしたんです? 行かないのでは?」
 「わ、わたくしも、い、い、い、いきまひゅ」

 ふふ、かわいいですねエリスさま。
 なにを想像してらしゃるのでしょう?

 ちょっと、アビロスの寝顔を見るだけですよ。

 まあ、状況にっよては添い寝ぐらいは……って何考えているんですか私!


 その夜、アビロスのテントに聖女と王女の影が潜り込んでいくのであった。