「アビロス! あなたなぜ従者と一緒に逃げなかったのですか! キャッ……アビロス背中が……回復魔法を!」
「話はあとだ! 口を閉じろ、舌を噛むぞ!」
「え? ちょっ―――!?」
そのままステラを抱き上げて、再び馬を爆走させる俺。
「に、ニガスカ……赤い閃光! 赤い閃光!」
ぐっ……危ないっ!
魔族ガルバの放つレーザーが前方に直撃して、行く手を阻む。
「クソ、やはり逃げ切るのは無理か……」
どうする? とりあえずステラを危機から救ったものの、次の手が浮かばない。
下級魔族とはいえ、容易く倒せる相手ではないぞ。
たしか、魔族ガルバの弱点は頭にある角だったはず。
今の俺たちで魔族ガルバに通用する攻撃は、ステラの聖属性魔力を付与した打撃ぐらいだ。
それもガルバの弱点に、クリーンヒットしなければ決定打にはならない。
子供のステラが、人の倍はあろうかというガルバの頭に打撃を与えるのは至難の業だ。
アビロスはなんかないのか? 思い出せ俺―――。
……んん!?
あった!
思い出したぞ! アビロスがいつも使っていたあれ。
学園に入ったあと、しょっちゅうやってたあれ。
ことあるごとに、やっていたあれ。
だが、あれをやれば俺の破滅フラグは間違いなくデカくなる。
が、今はそんなことは言ってられない。このままだと2人とも魔族ガルバに殺されて終わりだ。
―――やるしかない!
「漆黒の闇よ、その禍々しき黒で奪い取れ―――
――――――重力減魔法!」
体から何かが抜けていく感覚。
恐らく魔力を消費しているのだろう。怠惰を貪っていたアビロスだが、僅かばかりでも魔力はあるようだ。
そして―――
「キャァアアアア!!」
美少女の叫び声が戦場に舞う。
そう、アビロスの得意魔法――――――スカートめくりである。
ふわりとステラの法衣がめくれ上がっている……黒がチラチラと見え隠れして。
当然だが、ステラのスカートをめくりたかったわけでは断じてない。
「ちょ! アビロス! なにふざけてるんですか! 張ったおしますよ!」
「いや違うんだ、魔力がうまくコントロールできないんだ」
「と、とにかく早くやめなさい!」
ダメだ……ここでやめるわけにはいかない。
「ステラ……あとでいくらでも張ったおしてくれていい。だが少しだけ我慢してくれ」
「なんだかわかりませんが、あとで覚悟なさい! 生き延びたらの話ですけど!」
「おう―――絶対に生き延びるさ。だからちゃんと馬につかまっていてくれ!」
アビロスの使用できる魔法は【闇魔法】。
重力減魔法は【闇魔法】のひとつ。
実はゲーム設定上この【闇魔法】なる使い手は、なんとアビロスのみなのだ。
というかこんな設定を知っているプレイヤー自体が、ほとんどいないだろうというマニアックな情報である。
なんか、ファンブックかなにかの隅の方にチョロと書いてあった。
ようは、ゲーム制作側は【闇魔法】でなにかをするのではなく、単にアビロスにスカートめくりをさせたかっただけである。悪役アビロスが行う悪事のひとつとして。
だから実際のバトルでも使用されることはないし、そもそも誰も習得できない。
そして、設定上の重力減魔法は、対象物の重力を減らして浮かすことができる。
ならば俺の考えが正しければ―――
そうだ、浮かぶのはステラのスカートだけじゃない―――
「え? ちょ、ちょっとなんですかこれ! 」
俺たちを乗せた馬が、ふわりと上昇を開始する。
「う、ウソ……アビロス! 私たち、浮いてます!」
ステラが俺の腕の中で騒ぎ出す。
俺は、初めからこの馬に重力減魔法を使用していた。
が、転生した俺自身が魔法を初めて使用したこともあり、うまくコントロールが出来きなかった。また、悲しくも元アビロスのクセが残っているのかもしれない。ステラには本当に悪いことをした。
しかしまさかこんなクソ設定が、実際のバトルで使用される日がこようとは、制作側も夢にも思わなかっただろう。
ハハッ、やればできるじゃないかアビロス。
なんだかゾクゾクしてきたぜ。
「あ、オイ、ゴラ! 飛ぶなんてズルイゾ!」
俺たちを見上げてわめきだすガルバ。
よし! 上空からであればガルバの頭部に攻撃するチャンスがあるはずだ。
俺はステラにガルバの弱点について説明する。
「ステラ! 聖杖に聖属性魔力を付与しておくんだ! 決めるのはおまえだぞ!」
「わ、わかったわ! 乙女のパンツをこんなにしたんだから……絶対生きて帰るわよっ!」
聖杖をグルんと一回転させて、打撃の構えを取るステラ。
ハハッ、いいぞ聖女も吹っ切れてきた。頼もしい。
「ところでアビロス。どうやって下に降りるのです?」
ステラがその綺麗な青い瞳をこちらに向ける。
ふっ、魔法初心者を舐めてらっちゃ困る。
浮いただけで奇跡なのだ。自在になど、どうあがいても動けん。
ぶっちゃけ、ガルバの上空をフワフワ浮いているのでやっとだ。
「だから―――こうするしかない! 魔法解除!」
「アビロス……ウソでしょ―――キャァアアアア~~落ちるぅうう!」
上空からガルバにむけて急落下する俺とステラ……に馬。
「からの~~~重力減魔法!!」
今の俺の実力ではすぐには浮かないが、急降下の勢いを多少殺すぐらいはできる!
が、ガルバもただ俺たちを見上げているわけではない。
例の赤いレーザーをこちらに向けて放ってくる。
「これは俺に任せておけ! おらぁああ! 不屈の肉壁!!」
死ぬほど痛いが、ここで踏ん張らないとステラに当たる。
背にレーザーを受けながら、ステラに視線を向け―――
「今だステラ! 聖属性魔力―――全部叩き込んでやれぇええ!」
「この魔族ぅう! こんな辱めを受けるのもあなたのせいですよ! ―――ええいっ!!」
「話はあとだ! 口を閉じろ、舌を噛むぞ!」
「え? ちょっ―――!?」
そのままステラを抱き上げて、再び馬を爆走させる俺。
「に、ニガスカ……赤い閃光! 赤い閃光!」
ぐっ……危ないっ!
魔族ガルバの放つレーザーが前方に直撃して、行く手を阻む。
「クソ、やはり逃げ切るのは無理か……」
どうする? とりあえずステラを危機から救ったものの、次の手が浮かばない。
下級魔族とはいえ、容易く倒せる相手ではないぞ。
たしか、魔族ガルバの弱点は頭にある角だったはず。
今の俺たちで魔族ガルバに通用する攻撃は、ステラの聖属性魔力を付与した打撃ぐらいだ。
それもガルバの弱点に、クリーンヒットしなければ決定打にはならない。
子供のステラが、人の倍はあろうかというガルバの頭に打撃を与えるのは至難の業だ。
アビロスはなんかないのか? 思い出せ俺―――。
……んん!?
あった!
思い出したぞ! アビロスがいつも使っていたあれ。
学園に入ったあと、しょっちゅうやってたあれ。
ことあるごとに、やっていたあれ。
だが、あれをやれば俺の破滅フラグは間違いなくデカくなる。
が、今はそんなことは言ってられない。このままだと2人とも魔族ガルバに殺されて終わりだ。
―――やるしかない!
「漆黒の闇よ、その禍々しき黒で奪い取れ―――
――――――重力減魔法!」
体から何かが抜けていく感覚。
恐らく魔力を消費しているのだろう。怠惰を貪っていたアビロスだが、僅かばかりでも魔力はあるようだ。
そして―――
「キャァアアアア!!」
美少女の叫び声が戦場に舞う。
そう、アビロスの得意魔法――――――スカートめくりである。
ふわりとステラの法衣がめくれ上がっている……黒がチラチラと見え隠れして。
当然だが、ステラのスカートをめくりたかったわけでは断じてない。
「ちょ! アビロス! なにふざけてるんですか! 張ったおしますよ!」
「いや違うんだ、魔力がうまくコントロールできないんだ」
「と、とにかく早くやめなさい!」
ダメだ……ここでやめるわけにはいかない。
「ステラ……あとでいくらでも張ったおしてくれていい。だが少しだけ我慢してくれ」
「なんだかわかりませんが、あとで覚悟なさい! 生き延びたらの話ですけど!」
「おう―――絶対に生き延びるさ。だからちゃんと馬につかまっていてくれ!」
アビロスの使用できる魔法は【闇魔法】。
重力減魔法は【闇魔法】のひとつ。
実はゲーム設定上この【闇魔法】なる使い手は、なんとアビロスのみなのだ。
というかこんな設定を知っているプレイヤー自体が、ほとんどいないだろうというマニアックな情報である。
なんか、ファンブックかなにかの隅の方にチョロと書いてあった。
ようは、ゲーム制作側は【闇魔法】でなにかをするのではなく、単にアビロスにスカートめくりをさせたかっただけである。悪役アビロスが行う悪事のひとつとして。
だから実際のバトルでも使用されることはないし、そもそも誰も習得できない。
そして、設定上の重力減魔法は、対象物の重力を減らして浮かすことができる。
ならば俺の考えが正しければ―――
そうだ、浮かぶのはステラのスカートだけじゃない―――
「え? ちょ、ちょっとなんですかこれ! 」
俺たちを乗せた馬が、ふわりと上昇を開始する。
「う、ウソ……アビロス! 私たち、浮いてます!」
ステラが俺の腕の中で騒ぎ出す。
俺は、初めからこの馬に重力減魔法を使用していた。
が、転生した俺自身が魔法を初めて使用したこともあり、うまくコントロールが出来きなかった。また、悲しくも元アビロスのクセが残っているのかもしれない。ステラには本当に悪いことをした。
しかしまさかこんなクソ設定が、実際のバトルで使用される日がこようとは、制作側も夢にも思わなかっただろう。
ハハッ、やればできるじゃないかアビロス。
なんだかゾクゾクしてきたぜ。
「あ、オイ、ゴラ! 飛ぶなんてズルイゾ!」
俺たちを見上げてわめきだすガルバ。
よし! 上空からであればガルバの頭部に攻撃するチャンスがあるはずだ。
俺はステラにガルバの弱点について説明する。
「ステラ! 聖杖に聖属性魔力を付与しておくんだ! 決めるのはおまえだぞ!」
「わ、わかったわ! 乙女のパンツをこんなにしたんだから……絶対生きて帰るわよっ!」
聖杖をグルんと一回転させて、打撃の構えを取るステラ。
ハハッ、いいぞ聖女も吹っ切れてきた。頼もしい。
「ところでアビロス。どうやって下に降りるのです?」
ステラがその綺麗な青い瞳をこちらに向ける。
ふっ、魔法初心者を舐めてらっちゃ困る。
浮いただけで奇跡なのだ。自在になど、どうあがいても動けん。
ぶっちゃけ、ガルバの上空をフワフワ浮いているのでやっとだ。
「だから―――こうするしかない! 魔法解除!」
「アビロス……ウソでしょ―――キャァアアアア~~落ちるぅうう!」
上空からガルバにむけて急落下する俺とステラ……に馬。
「からの~~~重力減魔法!!」
今の俺の実力ではすぐには浮かないが、急降下の勢いを多少殺すぐらいはできる!
が、ガルバもただ俺たちを見上げているわけではない。
例の赤いレーザーをこちらに向けて放ってくる。
「これは俺に任せておけ! おらぁああ! 不屈の肉壁!!」
死ぬほど痛いが、ここで踏ん張らないとステラに当たる。
背にレーザーを受けながら、ステラに視線を向け―――
「今だステラ! 聖属性魔力―――全部叩き込んでやれぇええ!」
「この魔族ぅう! こんな辱めを受けるのもあなたのせいですよ! ―――ええいっ!!」

