ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「あ、あの、アビロスさま、みなさま。今日はわたくしもお招き頂きありがとうございます」

 第4王女のエリスが丁寧なお辞儀をする。
 ここは王都にある焼肉屋だ。短期間に色々あったので、ぱぁ~と楽しもうぜってことで、みんなで来たのである。

 「わあ~~エリス様も来てくれて嬉しいです~~」

 マリーナとエリスにはさまれて、キャッキャッするララ。
 なぜか2人の王女に完全に気に入られたっぽい。まあ、唇をつけあった仲ではあるしな。

 エリスがSクラスに入った表向きの理由は、それに足る成績をおさめたとのことだが、魔族封印の件も関わっているのだろう。
 同じクラスにいれば、マリーナも常に傍にいてやれる。

 「エリス、焼肉に遠慮はいらないぞ。思いっきり食べてくれ」

 ちなみに俺は第4王女をエリスと呼び捨てである。
 だって、どうしてもそうしてくれとエリスに言われたから。

 「は、はい! アビロスさま! わたくし焼肉初めてです! 楽しみです」

 そしてなぜかエリスは俺を様呼びという……王族の考えることは良く分からん。
 エリスは淡いクリーム色のワンピースを着ており、黄金色の髪をキュッと後ろで止めている。

 ふむ、とても可愛らしい。


 が―――こいつは着けてもらう。


 「ひゃぁ! あ、アビロスさま……!?」

 「エリス、焼肉初心者ならばエプロンは必須だぞ」

 「は……はい。ありがとうございます」

 俯いて頬を赤めるエリス。まあ本来エプロンなんぞ付けたくないのはわかる。

 が―――つけなくていいのは俺のような上級者だけだ。

 「アビロっち……ナリサにもつけてあげて」

 俺の耳元でウルネラが囁いた。


 ―――そうか、ナリサも焼肉初心者か。よかろう。


 「え? アビロス君!? あ……ありがとう」

 ナリサの顔が真っ赤だ。たしかにエプロンは初心者の象徴だ(←違います)
 だが、恥じることは無い。

 少しづつ、極めて行けばいいのだ。
 何度も言うようだが、エプロンなしは上級者だからこそできる。

 そう―――この俺のように。

 おれが自分の席に座ると、服の袖をちょいちょい引っ張られた。

 ステラだ。

 ハハッ、わかっている。忘れるわけがないだろ。

 俺は聖女にエプロンをかけてやった。
 なにせ、純白の制服だからな。なんなら2重でもいいぐらいだ。

 「ありがとう、アビロス」
 「おう、当たり前だ。いつでもつけてやる」


 「はい、《《前回もアビロスにかけてもらいました》》から、これからも《《ずっとアビロスにつけてもらいます》》」


 それは言わなくてもいいのでは? 
 ステラもいつかはエプロン卒業を目指さなければならない。
 エリスやナリサがピクッとしてムゥ……とか言っているぞ。

 いや、まてよ。初心者であることを恥じないという心意気のあらわれか。
 なるほど、さすが聖女だ。他者を思いやってこその「安心してください、わたしも初心者です」発言というわけか。

 ふむ、他の者もみなエプロンを着用したようだな。


 では、肉を焼いていくか――――――って!!


 「おい、ブレイル……なにをやっている?」
 「アビロス君~~みんなの分も置いてみたよ~~」

 それはいいことだ。

 だがな……

 ―――野菜で網を埋めるんじゃない!

 これじゃあ野菜炒めになってしまうだろ。

 「うわ~~ブレイルさん野菜好きですか~~」
 「ふふ、野菜を焼くときのブレイルさんはいい笑顔ですね」
 「ハ~ハッハ、ブレイル野菜まみれじゃないか~~だが豪快でいいぞ!」

 いや……そうだよな。なにを心の狭い事言ってんだ俺は。
 四の五の言わずに食べればいいよな。

 みんなでブレイルの焼いた野菜を食べる。
 網で焼くとまたいつもと違った味がして―――美味い!

 そして~~お待ちかねのお肉様の登場だぜ!

 「褒美で貰った万能タレをつけて―――」

 ――――――!?

 美味いっ!!

 やっぱ、焼肉は肉だぜ! 

 しかもこの万能タレ、使用者の気持ちに合わせて味が変わるぞ!
 醤油べーす、塩ベースなど、気分によりベストの味にしてくれる。


 いや、最高かよ。


 〖聖女ステラ……美味しいですね〗
 「ええ、次はロースを焼きますね」

 ステラ!? 

 誰としゃべってんだ? いやこの声どこかで……

 「おい……もしかして女神か?」
 〖聖女ステラ! ロースですか? 上ロースですか! それは上なんですか!!〗

 話を聞けよ! 

 女神が上とか言うんじゃない!

 「アビロス、女神さまは時折降臨されるのです」
 「そ、そうなのか。天啓でも授けるのか? 女神」
 〖天啓? アビロス、何を言っているのですか? 焼肉を食べに来たんです〗
 「焼肉だと……」
 〖だって、こんなにいい匂いがしたら誰でも出てくるでしょう〗

 たしかに……焼肉の力は偉大だ。女神が出てきてもおかしくはないか。

 ―――いやいや、やっぱおかしいだろ!

 「しかし、実体もなく味なんかわかるのか?」
 〖アビロス、女神の力を侮ってはなりません。聖女ステラを通じて、焼肉を楽しむことができるのです。どうですか? 凄いでしょモグモグ〗

 「お……おう」

 なにに力を使っているんだ、この女神。
 ゲーム原作を逸脱しすぎてる……これもストーリー改変の影響か?

 〖―――聖女ステラ、そこのカルビもいきたいです〗

 おい、女神。自由すぎるぞ。

 「わぁ~~女神さまと焼肉~楽しいです~~」
 「わ、わたくし初めて女神さまのお声を聞きました。しかもご一緒に食べられるなんて!」
 「女神さまと焼肉とか~~うける~楽しいね~~」

 〖そうですね、わたしもみなさんと食べることが出来て嬉しいですよ〗

 みんなで食べるか―――

 前世でも、こんなにワイワイみんなで焼肉食べるなんて無かったよな。
 基本、1人焼肉だった。

 みんなで食べたら、こんなにも美味いのか……

 悪役に転生した時は終わったかと思ったけど。
 俺は案外いい人生を送れているのかもしれない。


 〖ところでアビロス―――なぜ、あなただけエプロンをつけていないのですか?〗

 ハハッ、面白い事をいう女神だ。

 「決まっている。俺は焼肉マスターだ。一滴の肉汁ものがさな―――」
 〖―――聖女ステラ、そこのタレを取ってください〗

 おい、聞けよ! 人の話を! 振っといてどういうことだ。

 〖まあ! タレとごはんだけでもいけそう! 最高の組み合わせですね♡―――はい、続けてくださいアビロス〗

 ぐっ……

 「だから俺は焼肉マスターなんだ。上級者はエプロンはつけない! 跳ねた肉汁を逃すなどあり得ないからな」
 〖……………〗

 ハハッ、どうだ女神。
 俺の凄さが分かったのだろう。黙ったようだな。

 「「「あ! アビロス」さま」君」

 いきなり3人の美少女が寄ってきた。なに? どうした??

 ステラが純白のハンカチで俺の口元を
 エリスが金色のハンカチで俺の胸元を
 ナリサが桃色のハンカチで俺の腕を

 フキフキフキ


 「ああ~~ご主人様~~またベチョベチョです~~」


 くっ……俺は焼肉マスター! エプロンなんぞつけん!