ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「エリス! エリス! しっかりしろ!」
 「お……お姉さ……ま」
 「意識はありますね、エリスさま。こ、この拘束……」
 「ステラ、この拘束はなんだ? わたしの力では引きちぎれないぞ!」
 「マリーナさま。エリスさまは強力な魔力とこの鎖によって、複雑な拘束魔法に縛られているようです。しかもこのにおい……」

 「フハ、無駄だ。その拘束魔法は我らが独自に進化させた魔法だ。学生ごときが開錠できる代物ではないわい! 諦めろ!」

 「黙りなさい! 開錠できないものなどこの世にありません!」

 ハハッ、さすがステラだ。
 そうだよな。諦めなんて、ステラにはもっとも無縁の言葉だぜ。

 「マリーナさま! この強力な魔力に対抗するにはあなたの魔力も必要です! 手伝ってください!」
 「ああ! もちろんだステラ!」

 ステラの周辺に純白の光がともりはじめる。

 よし、向こうはステラたちに任せておけばいい。


 「ムッ……あれは聖属性魔力の光……ステラ……そうか、あの小娘は聖女か」

 「そうだ、あの聖女ははんぱねぇぞ」

 「フハ、聖女とはいえまだまだ小娘。我らの拘束魔法には手も足もでんわい」

 「それは―――
 ―――どうかなぁあああ!」

 俺は司教との距離を一気に詰めると、重力を付与した斬撃を叩き込む。
 先手必勝だ。先ほどから司教が、強力な魔力を練り込んでいるのはわかっている。

 なら、強力な魔法を使用する前に勝負を決める。

 「―――ブハっ!」

 俺の斬撃は司教の右腕を根元から斬り落とした。

 手応えあり! 
 かなりのダメージのはずだ。

 「太陽神よぉおお! そのまばゆい光で我を癒したまえぇええ!
 ―――完全修復魔法(パーフェクトリペア)!」

 眩い光と共に司教の腕が、根元からみるみるうちに再生していく。

 ―――まじかよ!

 欠損部分を再生できる回復魔法だと……そんなのヒールの最上級魔法でも無理だ。聖属性を持つステラですらゲームの終盤になってようやく習得できるレベルの魔法だ。

 聖属性以外でこんな芸当のできる属性なんて、ひとつしかない―――


 「光属性の魔法か―――」


 光属性はゲーム原作においてブレイルのみが持つ属性のはず。
 攻守ともに強力な魔法が使用できる、ゲーム主人公のチート属性である。

 しかし、司教の使用した魔法を俺は知らない。少なくともゲームには登場しない。

 「フハ! いかにも! 我らが神の属性じゃわい! さあ~~~今度はこちらの番だ!
 太陽神よぉおお! そのまばゆい拳で敵を砕けぇええ!―――陽の剛拳(サンナックル)!」
 
 司教から光の打撃が連続して打ち込まれてくる。

 こいつ! 近接戦闘もかなりのものだぞ!

 司教と一進一退の攻防が続くなか、横からするどい一閃が飛んできた。

 「ご主人様を手伝うです!」

 ララが鞭による援護射撃をベストタイミングで入れてくれた。

 これを起点に、再度司教に深いダメージを与えるが……

 「―――完全修復魔法(パーフェクトリペア)!」

 すぐさま、完全修復される司教。
 クソ、完全に消滅させるか、特殊な攻撃をしないとキリがないぞ。

 んん? 特殊な攻撃?

 俺はブレイルをチラッと見る。

 ひとつだけあった。

 「ブレイル! 光の終撃(ラストフラッシュ)できるか!」
 「ふぇええ~~なにそれアビロス君~~」

 やはり無理か……この技は「聖女の口づけ」でブレイルが覚醒しないと使用できない。
 ここまでストーリー改変があるなら、飛び級で習得しているかもと思ったが、そうそう甘くはないよな。

 というかブレイルさっきから戦闘に参加してなくない?
 棒立ちじゃねぇか、なにを出し惜しみしているんだ?

 「フハ、もう無駄な事はやめて諦めるんじゃな。さっさと貴様らを片付けて王女二人の採血をせんとなぁ~~」

 「そんなに王女の血が欲しいのか」
 「ああ、欲しいわい。王族は勇者の血族だからなぁああ!」

 司教は強烈な打撃を放ちつつ、ほくそ笑んだ。

 勇者とははるか昔に魔王を討伐したとされる人物だ。この王国もその勇者が建国した。ゲーム原作の設定ではそういうことになっている。
 つまり今の王族は勇者の末裔ともいえる。

 実はブレイルも勇者の血を引いている。はるか昔に枝分かれした勇者の子孫であり、マリーナの遠い遠い親戚ともいえいよう。
 そして隔世遺伝で、勇者の光属性が最も強く出るのがブレイルなのだ。

 しかしゲーム原作に「勇者の血」なるアイテムは存在しないし、そのようなイベントもない。

 「おい、なんの為に血が必要なんだ。おまえの光属性も関係しているのか?」
 「フハ、なぜじゃろうなぁ。我らの研究には必須のアイテムじゃからなぁ。
 さあ~~~おしゃべりは終わりだぁあ~~そろそろお前らには死んでもらうぞい!」

 司教が両手を天井に掲げて魔力を集中しはじめた。

 今までで一番強い魔力を感じる。
 勝負を決める気だ。

 「太陽神よぉおお! そのまばゆい波動で全てを吹き飛ばせ!
 ――――――極烈太陽衝撃波(グレートサンショックウェーブ)!」

 俺たちに迫りくる高濃度の魔力を含んだ光の衝撃波。

 これはヤバい!

 俺は咄嗟にララとブレイルの前に出て、両足に思いっきり重力をかける。

 「ララ! ブレイル! 頭を手で覆ってしゃがめぇええ! 
 ―――きやがれ! 不屈の肉壁(アビロスシールド)!!」

 ―――痛ってぇええええ! 

 強烈な衝撃波が通過する。
 地下室の地面が衝撃波によってえぐられていく。

 「ララ、大丈夫か!」
 「ハイです! ご主人様!」

 さすがだ、ララは大丈夫そうだな。そして、もう一人―――

 「ブレイル―――!?」

 ブレイルは吹っ飛ばされて壁面に強く体を打ち付けたのか、その場にうずくまっていた。

 「あ、アビロス君。ごめん……ぼくやっぱり役立たずだったよ」
 「ブレイル、しゃべるな」

 腹部に出血、それに吐血。クソッ……急がないと手遅れになる。
 ステラに回復魔法をかけてもらうしかない。

 「アビロスくん……さいごに君の顔をみせてよ……」
 「バカなことを言うな。ステラのところに行くぞ」

 なにがさいごだ。主人公が簡単に諦めてんじゃねぇよ。

 ララが司教とやりあって、踏ん張ってくれている。

 その間にステラの元へ……

 両手で俺の顔にスッと手をそえるブレイル。
 おい、ステラのところへ行く言ってるだろ……んんちゅ???

 ―――?☆$&#!!

 なんだ!! なんか目の前が急に真っ暗になったぞ!?

 この唇の柔らかい感触……


 おいおいおいおいおいおいおいおいおい~~~~!!


 俺は速攻でブレイルの顔を引きはがす。

 「お、おまえなにやってんだ……!?」
 「プはぁ~ありがとうアビロス君……さいごに最高の……思い出が……」

 そしてブレイルの身体がぱぁ~と輝きだす。

 「あ、あれ? アビロス君! ぼくなんか痛くなくなったよ! それになんだか力が湧いてくるよ~~すごい!」


 おい、主人公。冗談はよせ……


 俺の口づけで覚醒してんじゃねぇえええええ!!