佐伯くんと一緒に過ごす時間が増えたある日
いつものように昼食を食べていると、

「先輩!!今日放課後空いてますか??」
と佐伯くんが質問してきた。

「あっうん。大丈夫だよ?」

「良かった~!」

僕の答えを聞くと、よしっと小さく呟く。


「じゃあまた放課後!」
と僕に手を振る。

「うんまたね」

いつもとは違う様子を少し、
不思議に感じたけれど僕も小さく手を振った。


放課後のチャイムがなる。
用事ってなんだろう??
相談事かな?僕にアドバイスできるだろうか。
やっぱり少し様子が違ったことが
気になり、足が止まる。
すると、
「凪先輩~!!遅れてすみません~!」
遠くから走ってくる佐伯くんが見えた。

相変わらず元気いっぱいに近づいてくる。

「ううん待ってないよ。」

「先輩!すみません!!」

「大丈夫」

「ありがとうございます!帰りましょう!」 

「うん帰ろう。」
そんな会話をしながら
最寄りの駅までの道を歩く。


「先輩今日はいい天気ですね」

「うん」

「、、、。」

「どうしたの??」

「えっと、そのいい天気だなって」

いつもと様子が明らかに違う佐伯くんに
体調が悪いの?何か悩んでる?
どんな言葉をかけたらいいのか悩んでいると、

突然
「あのっ!!凪先輩!!」
と名前を呼ばれた。

「はっはい!」
僕も思わずはいっと答えるしかなかった。

「俺と、、」
またこっ告白される??

「俺と、、連絡先を交換してください!!!」

「あのっ付き合うとかは、、え??」

「れっ連絡先??」

「はい!!」

自分の早とちりでまた告白と勘違いしてしまい
急に恥ずかしさが込み上げてきて
顔が一気に暑くなる。

「先輩だめですか??」

幸い佐伯くんは気づいていなかった。
僕は急いで顔をの火照りを冷ますように手で
あおぎながら
「うん。大丈夫だよ」
と頷く。
正直誤魔化せているかは不安だった。

「やった~!!!!先輩ありがとうございます!」

けれど、佐伯くんは僕の答えが嬉しかったのか
ガッツポーズをしていた。
良かった。バレてない。
僕はほっと吐息をつく。



「これ俺の連絡先です!」
佐伯くんは制服のポケットから
おもむろにスマホを取り出す。

僕の連絡先リストに佐伯くん名前が入る。

「学校以外でも先輩とお話出来るなんて
嬉しすぎます!」

「そんなに嬉しいの?」
佐伯くんがあまりに嬉しそうに笑うから
僕もつられて

「あははっ」と笑みがこぼれる。

「、、、、、。」

「佐伯くん??」

「えっ?いや!なんでもないです!」

「あの、顔真っ赤だよ??」
 
「いやっその!そうだ太陽のせいですよ!きっと!」

その時まもなく電車の到着を知らせる
アナウンスが流れる。
「やばいっ!先輩走りましょ!」
佐伯くんは話を逸らすと僕の手を引き
駅の階段を駆け上がり、ホームへ向かう。

「駆け込み乗車お止めください」
後1歩のところで電車は発車してしまった。

「電車行っちゃったね」

「すみません!俺が喜びすぎて、、」

「大丈夫だよ。只ちょっとびっくりしてる」

「嫌でしたよね、、すみません!」

「ぜっ全然大丈夫」
と謝る佐伯くんにそう伝えた。


繋がれていた手をそっと離れ、
2人でホームのベンチに座る。


「つっ次の電車まで一時間はあるね。」

「えっあっそうですね!」

「、、、。」

「せっ先輩、、」

「うっうん。」

「さっき手繋いですみません、、おれ無意識に」


「だっ大丈夫。その、よく分からないけど
えっといっ嫌じゃないから、」

「あっありがとうございます!!」

「はっはい!」

「、、、。」

「なんか俺ら謝ったり、
お礼を言ったりばっかですね」
佐伯くんは自分の髪に触れながら
照れ臭そうに話す。

「うんっ確かに」
僕はまたクスッと笑う。

他愛もない会話をしながら
僕は電車が来るのを待った。