「準備はできましたね。みなさん」
いつもの服装に戻った俺とカルラは頷き、エレナは杖を揺らした。
俺たちは魔王さまの転移魔法で、現場近くまで移動させてもらうことになった。
数名程度なら遠隔でもできるらしい。
さすが魔王、見た目は幼女だけど。
「みなさん気を付けて。バートス、必ず帰ってきてくださいね」
ファレーヌが俺の右手を握ってキレイな瞳をこちらに向ける。そのまま俺の右腕に身体を預けてきた。
いや……仮にも王女だからな。
すると左腕と背中になんか柔らかいのが引っ付いてきた。
リズとカルラだ。
この子達大丈夫か? おっさんに引っ付いてなにをしている?
国王の鬼視線がヤバいぐらい突き刺さっているんだぞ。
〈なんじゃバートス。お主の妻たちか? 見せつけるのう〉
画面越しに魔王さまがニヤニヤしている。
この人、おっさんの窮地を楽しんでるな。
「この子たちは俺の妻じゃない。誤解を招くような発言をしないでくれ」
〈そうかのう、そやつらはまんざらでもなさそうじゃが。人族2人に魔族……それにその杖は天界のやつか……んん? いや、天界の神力を別に感じるが〉
神力ってたしか天使たちの力の源だったか。それがあるのはエレナだけだろう。他に天界の力をもっている子はいない。
「魔王さま、遊んでないでさっさと送ってくれ」
〈ふぅ。まったくノリの悪いやつじゃ〉
ノリで妻とか言うんじゃないよ。
たく、しょうのない人だ。
魔王さまがパチンと指を鳴らすと、俺たちの周囲が輝きはじめる。
「さあ、行くかリズ」
「ええ、バートス」
10本は強敵だ。たぶん俺の力を出し切らないとダメだ。
自然と拳に力が入る。
そんな俺の手をそっと握る小さな手。
「バートス、思いっきりやって大丈夫ですよ」
「リズ……」
「聖女の私がいるんですから」
そうだな、俺にはリズがいる。
俺の目に闘志が宿るとともに、周辺の景色は王城から決戦の地へと変わっていくのであった。
◇◇◇
◇アルバート視点◇
王国、北の砦。
その砦の正面にはとてつもなくデカいヒドラが10の首をうねらせている。
「アルバート師団長~~前衛の騎士団被害甚大! これ以上はもちません!」
「くっ……いったん砦に下がらせよ!」
とんでもないことになった。
処刑を覚悟したわしじゃったが、国王陛下より死ぬまで国に尽くせとのお言葉を頂き、再び現職に戻ることができた。
頂いた命じゃ。今まで関わってきた魔法師団のために出来ることをする。
まずは若手育成のため、北の砦にて実地訓練を行っていたのだが。
〖もろい〗
〖なんだこれは?〗
〖にんげんもろい〗
なんじゃこいつは……
言葉を話す魔物だと。
10本の頭がそれぞれに口を開く。
〖ちまちま〗
〖めんどくさい〗
〖ふきとべ〗
そのうちのひとつがこちらを向いて口を大きく開く。
「ブレスがくるぞ! 魔法師団! 総員―――魔法防御壁用意!」
「「「「「魔力の壁よ、敵の攻撃を拒め!
――――――魔法防御壁!」」」」」
砦に展開される魔法の壁。
成長途中の若造たちなので魔法の練度は荒いが、何重にも重ね掛けしているのだ。
容易く破れはしな……
ぐっ―――!
なんじゃ、あのブレスは!?
あれは炎なのか?
分厚く赤い光の束が、展開している魔法防御壁を粉々に打ち砕いていく。
―――いかん!
「そう簡単には抜かせん!―――七重詠唱!
「「「「「「「――――――上級火炎魔法!!」」」」」」」
わしの放った7つの特大火炎弾が、赤い光の束と衝突する。
とたんに周囲を高熱が吹き荒れて、大爆発を起こした。
砦の外壁がドロリと溶けて、あちらこちらからうめき声が聞こえてくる。
なんという炎じゃ。
たった一度のブレスでこのありさまか……。
「あ、アルバート師団長ぅ……各所で被害発生。外壁の半分近くを消失。負傷者多数!」
ぬぅ……ここで諦めるわけにはいかん。
こいつを行かせてしまったら、すべての町が火の海と化すだろう。
「守備兵は負傷者の対応! 魔法師団に告ぐ! 総員魔法攻撃準備!」
守勢に入ったら確実に全滅じゃ。
もはや砦の意味もほとんどない。
魔物が本領を発揮する前に―――
「――――――魔法師団、総攻撃開始せよ!」
無数の火炎弾が魔物に向かって放たれる。
動ける魔王師団兵、全員の一斉攻撃だ。
何十何百という炎が、赤い軌跡をえがいて敵に降り注ぐ。
わしも、多重詠唱を使い、ありったけの炎を魔物に叩き込んだ。
が―――
「アルバート師団長ぉおお! 魔物は依然健在!」
「なんというやつじゃ……」
「ダメです! か、火力が足りません!」
くそ……これ以上火力など。どこにあると言うのだ。
「し、師団長! 魔物の口がぁああ!」
マズイ! またブレスがくる!!
若造たちの魔力はもうほとんど残っていない。
このままでは……王国はおろか世界が滅びるぞ……
〖くそもろい〗
〖こいつらざこだ〗
〖さっさとほろびろ〗
再度放たれる赤い炎の閃光。
しかも今度は3つの頭からだ。
1つでも壊滅的な威力があるのに……3つ同時だと。
もはやここまでか……
わしを初め、砦を守る兵は誰もが絶望の淵に立たされた。
―――なんだ!!
―――なにかがくる!?
飛んできたのは炎の塊だ。
その炎は魔物の放った赤いブレスと衝突して大爆発が起こり、すべてを空中で相殺してしまった。
「アルバート師団長! こ、後方から炎が! 魔物の動きが止まりました! いったい誰が!?」
これは……見覚えのある炎じゃないか。
忘れろと言われても忘れられんぞ。
「安心せい。味方じゃ」
「ええ? 王国の援軍でしょうか? にしては早すぎるし、あんな大魔法……みたことがありません」
ハハ、こんなことが出来るのはあの男しかいない。
まさか……来てくれるとはな。
「これは生き残れるかもしれんな、わしら」
希望の光が見えてきたぞ。
いつもの服装に戻った俺とカルラは頷き、エレナは杖を揺らした。
俺たちは魔王さまの転移魔法で、現場近くまで移動させてもらうことになった。
数名程度なら遠隔でもできるらしい。
さすが魔王、見た目は幼女だけど。
「みなさん気を付けて。バートス、必ず帰ってきてくださいね」
ファレーヌが俺の右手を握ってキレイな瞳をこちらに向ける。そのまま俺の右腕に身体を預けてきた。
いや……仮にも王女だからな。
すると左腕と背中になんか柔らかいのが引っ付いてきた。
リズとカルラだ。
この子達大丈夫か? おっさんに引っ付いてなにをしている?
国王の鬼視線がヤバいぐらい突き刺さっているんだぞ。
〈なんじゃバートス。お主の妻たちか? 見せつけるのう〉
画面越しに魔王さまがニヤニヤしている。
この人、おっさんの窮地を楽しんでるな。
「この子たちは俺の妻じゃない。誤解を招くような発言をしないでくれ」
〈そうかのう、そやつらはまんざらでもなさそうじゃが。人族2人に魔族……それにその杖は天界のやつか……んん? いや、天界の神力を別に感じるが〉
神力ってたしか天使たちの力の源だったか。それがあるのはエレナだけだろう。他に天界の力をもっている子はいない。
「魔王さま、遊んでないでさっさと送ってくれ」
〈ふぅ。まったくノリの悪いやつじゃ〉
ノリで妻とか言うんじゃないよ。
たく、しょうのない人だ。
魔王さまがパチンと指を鳴らすと、俺たちの周囲が輝きはじめる。
「さあ、行くかリズ」
「ええ、バートス」
10本は強敵だ。たぶん俺の力を出し切らないとダメだ。
自然と拳に力が入る。
そんな俺の手をそっと握る小さな手。
「バートス、思いっきりやって大丈夫ですよ」
「リズ……」
「聖女の私がいるんですから」
そうだな、俺にはリズがいる。
俺の目に闘志が宿るとともに、周辺の景色は王城から決戦の地へと変わっていくのであった。
◇◇◇
◇アルバート視点◇
王国、北の砦。
その砦の正面にはとてつもなくデカいヒドラが10の首をうねらせている。
「アルバート師団長~~前衛の騎士団被害甚大! これ以上はもちません!」
「くっ……いったん砦に下がらせよ!」
とんでもないことになった。
処刑を覚悟したわしじゃったが、国王陛下より死ぬまで国に尽くせとのお言葉を頂き、再び現職に戻ることができた。
頂いた命じゃ。今まで関わってきた魔法師団のために出来ることをする。
まずは若手育成のため、北の砦にて実地訓練を行っていたのだが。
〖もろい〗
〖なんだこれは?〗
〖にんげんもろい〗
なんじゃこいつは……
言葉を話す魔物だと。
10本の頭がそれぞれに口を開く。
〖ちまちま〗
〖めんどくさい〗
〖ふきとべ〗
そのうちのひとつがこちらを向いて口を大きく開く。
「ブレスがくるぞ! 魔法師団! 総員―――魔法防御壁用意!」
「「「「「魔力の壁よ、敵の攻撃を拒め!
――――――魔法防御壁!」」」」」
砦に展開される魔法の壁。
成長途中の若造たちなので魔法の練度は荒いが、何重にも重ね掛けしているのだ。
容易く破れはしな……
ぐっ―――!
なんじゃ、あのブレスは!?
あれは炎なのか?
分厚く赤い光の束が、展開している魔法防御壁を粉々に打ち砕いていく。
―――いかん!
「そう簡単には抜かせん!―――七重詠唱!
「「「「「「「――――――上級火炎魔法!!」」」」」」」
わしの放った7つの特大火炎弾が、赤い光の束と衝突する。
とたんに周囲を高熱が吹き荒れて、大爆発を起こした。
砦の外壁がドロリと溶けて、あちらこちらからうめき声が聞こえてくる。
なんという炎じゃ。
たった一度のブレスでこのありさまか……。
「あ、アルバート師団長ぅ……各所で被害発生。外壁の半分近くを消失。負傷者多数!」
ぬぅ……ここで諦めるわけにはいかん。
こいつを行かせてしまったら、すべての町が火の海と化すだろう。
「守備兵は負傷者の対応! 魔法師団に告ぐ! 総員魔法攻撃準備!」
守勢に入ったら確実に全滅じゃ。
もはや砦の意味もほとんどない。
魔物が本領を発揮する前に―――
「――――――魔法師団、総攻撃開始せよ!」
無数の火炎弾が魔物に向かって放たれる。
動ける魔王師団兵、全員の一斉攻撃だ。
何十何百という炎が、赤い軌跡をえがいて敵に降り注ぐ。
わしも、多重詠唱を使い、ありったけの炎を魔物に叩き込んだ。
が―――
「アルバート師団長ぉおお! 魔物は依然健在!」
「なんというやつじゃ……」
「ダメです! か、火力が足りません!」
くそ……これ以上火力など。どこにあると言うのだ。
「し、師団長! 魔物の口がぁああ!」
マズイ! またブレスがくる!!
若造たちの魔力はもうほとんど残っていない。
このままでは……王国はおろか世界が滅びるぞ……
〖くそもろい〗
〖こいつらざこだ〗
〖さっさとほろびろ〗
再度放たれる赤い炎の閃光。
しかも今度は3つの頭からだ。
1つでも壊滅的な威力があるのに……3つ同時だと。
もはやここまでか……
わしを初め、砦を守る兵は誰もが絶望の淵に立たされた。
―――なんだ!!
―――なにかがくる!?
飛んできたのは炎の塊だ。
その炎は魔物の放った赤いブレスと衝突して大爆発が起こり、すべてを空中で相殺してしまった。
「アルバート師団長! こ、後方から炎が! 魔物の動きが止まりました! いったい誰が!?」
これは……見覚えのある炎じゃないか。
忘れろと言われても忘れられんぞ。
「安心せい。味方じゃ」
「ええ? 王国の援軍でしょうか? にしては早すぎるし、あんな大魔法……みたことがありません」
ハハ、こんなことが出来るのはあの男しかいない。
まさか……来てくれるとはな。
「これは生き残れるかもしれんな、わしら」
希望の光が見えてきたぞ。

