魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?

 王都に滞在して10日ほどが経ちました。

 厳罰を覚悟していたアルバート先生は、国王陛下のはからいにより「死ぬまで国の為に働け」という罰をもらいました。
 大好きなお孫さんとの再会もそこそこに、北の砦へ新兵訓練のために王都を立つことになった先生。

 まだまだ若いやつには負けんとか言ってるらしいですが、やりすぎないようにと出立前の先生に釘を刺しておきました。でも、ブツブツ言いながらも嬉しそうな顔をする先生を見れて、本当に良かったです。

 ちなみに、色々とやらかした……

 ザーイ王子ですが……

 ミスリル像のままです。

 とりあえず自室に置かれていたらしいのですが、今は地下牢に置かれているそうです。メイドさんたちが夜中に王子の部屋から声がするとか、アフロがたまに動くとか、変な噂が流れたからだとか。

 まあ、どうでもいいのですけどね。

 ちなみに私たちは王城でのんびりとした時間を過ごしています。

 近日中にパレードがあるので、それまではいて欲しいと。


 「リズぅ~~うまくひっくり返らないよぉ~~」
 「リズぅ~~これうまいのじゃ。こっちは~~ハフハフ、あちっ!」

 で、今日は何をしているのかといいますと。

 みんなでたこ焼きです。

 これがバートスへの褒美だからと、ファレーヌ第三王女が急遽開始したのです。

 「ねえファレーヌ。こんな王城の一室でたこ焼きなんてしていいの?」

 ドレスの袖をまくって、姫らしからぬハチマキ姿の第三王女に視線を向ける。

 「もちろんよ。お父様にも言ってあるし。 あら? もしかしてリズは嫌だった? 無理に参加しなくてもいいのよ? わたくしとバートス2人きりでも良かったのだけど」
 「なっ! そんなのダメに決まってます!」

 「なぜダメなのです? 国の英雄を王族が労う。自然なことだと思うのだけど」
 「え……そ、その。たこ焼きは焼くのが難しんです。私がいないと……」

 難しいはずなのだが……

 ファレーヌの手元を見て、私の言葉は尻すぼみになっていく。

 カルラやエレナはうまくひっくり返せず苦戦しているのだが……この王女は。

 軽やかにピッピッとたこ焼きをひっくり返しているではないか。

 「それなら大丈夫です。当然ながら予習してきてますから」

 フフっと微笑むファレーヌ。
 なんだかいつもの彼女の笑みとは違う感じがしてしまう。

 そして、負けたくないという感情が私の中で強くなっていきます。

 勝負でもなんでもないのに。

 「リズ~~ファレーヌは出来てんるんだからこっちみてよ~~」

 カルラに呼ばれて一緒にコロコロ転がします。

 「新たなライバル登場だけど、あたしは誰にも負けないからねぇ~~」

 ライバル……

 やっぱりそうなんでしょうか?

 ファレーヌは馬車に乗ったあたりから急に雰囲気が変わりました。
 そして、なんか私はずっとモヤモヤしてます。

 「よ~~し、あたしのたこ焼きが一番おいしいんだから~もっとたくさんやこ~」

 鉄板に油を引いて、鼻歌交じりで生地を流し込んでいくカルラ。

 たこ焼きの中に入れる具材は、各々が調達してくることになりました。
 同じものを作るより、色んな味を楽しんでもらおうというわけです。

 生地を流し終わったカルラも、自身の選んだ具材を手際よく入れていきます。
 初めは失敗していたカルラですが、何回かやるうちに上手くなってきました。

 む……失礼ですが、ちょっと意外です。

 もしかしたらカルラは女子力が高いのかもしれません。

 「さあ~て、とっておきの入れちゃお~~と」

 ……!?


 いや、ちょっとまって! なんか茶色っぽいの入れてる!?


 「か、カルラ……これまさか?」

 「ふふ~~ん。チョコレートだよぉ~~」


 ええぇ! それはどうなの? 


 たぶんダメなんじゃ……

 チョコレートはドロドロに溶けて、たこ焼きと一体化し始めている。
 なんだか茶色と黄色のマーブル玉みたいな感じに。

 「おお! カルラのたこ焼きは変わった色だな」

 そこへバートスが後からあらわれて、カルラのたこ焼きに興味を示した。

 「は~~い、あ~~ん」

 ええぇ。味見もしないで! 

 っていうか「あ~~ん」ってなにそれ!!

 「うむ、なんか甘くて香ばしい」
 「へへ~~、いま王都で流行っているチョコレートってお菓子なんだよ~」
 「そうなのか。カルラは新しいもの好きだからな。さっそくたこ焼きにも取り入れたわけだ」

 意外にもバートスには好評のようですね……

 というかズルくないですか。

 「あ~~ん」パクっとか!

 味はともかくとして、シチュエーションが大きく加点材料になっています。

 それにしても……

 なんか「あ~ん」へのアプローチが流れるようにうまい!
 くぅうう……やりますねカルラ。

 はっ! そうだ! 私もやればいいんだ!

 自分のたこ焼きを一つバートスの傍に持っていき……

 「あ、あ、あ………」
 「ん? どうしたんだリズ?」

 くっ……なにこれ!? 

 恥ずかしすぎてできない……

 「あ~ん」って言うだけなのに!

 い、いったんやめましょう。

 バートスも頭のうえに「?」が浮かんでいる様子ですし。

 で、でも私の焼いたたこ焼きが、バートスの一番に決まってます。


 「バートス! 我のも食すのじゃ!」

 次はエレナですか。
 ま、まあいいでしょう。バートスの意識もエレナの方に向いてくれましたし。

 ―――って! なんですかこれ?

 タコがそのままギュウギュウに押し込められている!?

 「エレナ……生地はどうしたんだ?」
 「きじ? バートス、なんじゃそれは?」

 「ほら、リズやカルラが入れてるだろう?」
 「ほぇ~~知らなかったのじゃ……というかわれたこ焼きってタコを焼くのかと思っていたのじゃ」

 ああ、ちゃんと見てあげれば良かったです。

 この子、調理がはじまるなりバクバク食べてたから、放置でした……。

 「うむ、だがうまいな! これはこれで!」
 「じゃろう! われは30個たべたからのう」
 「おいおい、相変わらずだなエレナは」

 なんだかんだでバートスの好評をもらっていますね。

 はっ! ……なるほど。

 ドジを演出するのもありということですか……奥が深いです。


 次にバートスが向かったのは。

 ―――きましたね。

 ―――いちばんの強敵。

 第三王女ファレーヌの元へ。


 この戦い……

 ――――――負けるわけにはいかないです!!