魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?

 ◇ゲナン副局長視点◇


 魔界の清掃局、ゴミ焼却場。


 「10本(じゅっぽん)? なんだそりゃ?」
 「ええ、バートスさんから聞いてるはずですよ」

 くっせぇ現場を歩いていたら、現場職員がなんか言ってきやがった。

 「ああ? バートスだぁ?」
 「そうですよ、バートスさんが対応していた案件ですよ。まさか対応してないんですか?」
 「はあ? 知るか。あいつの名前は二度と出すんじゃねぇ!」

 んだこいつ。一職員の分際で、気安く副局長の俺様に意見してんじゃねぇ。

 「いやいや……今まで放置とか、絶対マズイでしょう……」

 何をブツブツ言ってんだ、こいつわ。

 「ははぁ~ん。おまえ、なんだかんだ言ってサボる気だな?」
 「ええぇ。なに言ってんですか副局長?」

 「減給!」
 「はい?」
 「だからおまえは給料カットだ。以上」

 当然の処罰を言い渡すと、俺はその場を去る。ここ(現場)はキライだ。くせぇし。
 うしろでなんかわめいているが俺様の知った事じゃない。

 わかってんだよ。おまえらの魂胆は。
 隙をついてはサボろうとしやがる。


 「くそぉ~~~」

 管理塔内の自室に戻って来た俺は、ドカッとソファに寝そべって大きくため息をついた。

 ああ~~ウザいウザい。カルラたんはどっかいくし、職場はむさい野郎ばっかだし。

 「んん?」

 床になんか落ちてんな?

 ―――【引き継ぎ書~10本の対処について~】―――

 なんだこのゴミ? 

 ああ? あのクビにしてやった、クズおっさんの字じゃねぇか!


 ―――グシャ、ポイ! 


 速攻でゴミ箱に放り投げる。

 んだよ。たかが一匹の魔物に引継ぎもクソもねぇだろうが。
 こんなもんアホでも出来る仕事なんだよ!


 あ~~汚ぇもんさわっちまった。手100回あらわねぇとな。



 ◇◇◇



 ◇10本(じゅっぽん)


 魔界ゴミ焼却場内のある洞窟(特別処理施設)にて

 清掃局のゴミ焼却場は広い。
 毎日送られてくる大量のゴミを処理しなければならないからだ。
 その広大な敷地の片隅にある洞窟。

 ここは特別な対応を必要とする処理物が運び込まれる場所である。

 その洞窟の奥で巨大な生物が蠢いていた。

 とてつもない巨体から伸びる10本の首がゆらゆらと動き、10の頭から禍々しい声が漏れ出る。
 全ての首には鎖がついており、ジャラジャラという金属音が洞窟内に響く。


 〖だいぶかいふくした〗
 〖だが、ぜんかいではない〗
 〖おのれマオウめ〗
 〖にくらしい〗
 〖チビのくせに〗
 〖コムスメのくせに〗


 その巨大な生物の名は「カイザーヒドラ」。かつて魔界を何度も蹂躙したヒドラ達の親玉である。

 ヒドラは通常9つの首をもつが、カイザーヒドラは10個目の首を持っていた。ゆえに10本と呼ばれる。

 10本が発する言葉には絶大な魔力があり。これによって普段は個別行動しかしないヒドラをまとめることができた。


 〖あのこむすめ〗
 〖かつてのマオウのなかでも〗
 〖もっともてごわかった〗

 〖だが、われらをかんぜんにほろぼせなかった〗
 〖それは―――〗
 〖てんしどもとのせんそうで〗
 〖やつはつかれていたからだ〗

 〖われらもいたでをうけたが〗
 〖マオウがちからをとりもどすのは〗
 〖もっともっとあと〗


 今までヒドラは個別に暴れるだけであり、その都度歴代の魔王により討伐されていた。
 10本は他のヒドラを引き連れて、魔王に戦いを挑み敗れた。

 今の魔王は若く小さかったが、今まで戦かったどの魔王よりも強かった。
 だが天使との戦争で消耗していた魔王は、10本に完全にとどめを刺すことは出来なかった。


 〖マオウもいまいましいが、あいつ〗
 〖そうあいつ〗
 〖このどうくつにきてからは、あいつ〗

 〖おっさん〗
 〖おっさんにずいぶんやられた〗
 〖マオウのキズがいえないままに〗
 〖もやしにきた、おっさん〗
 〖まいにちきた〗
 〖あのままつづけば、あぶなかった〗

 〖おっさんなのに〗
 〖おっさんめ〗
 〖おっさんのやろう〗


 敗れた10本はこの洞窟に運ばれた。
 ヒドラは再生能力が非常に高い。
 だから、完全に焼却する必要があった。

 若き魔王は、かつての戦友の息子バートスが清掃局で働いていることを思い出す。
 息子は彼と同じ【焼却】という固有能力を持っていた。

 魔王は何度か視察を兼ねて息子のバートスに会ったが、彼は申し分のない実力を持っていると判断した。

 彼の息子なら、10本を完全消滅させることができるだろう。

 そう考えて、清掃局に送って来たのだ。この化け物を。


 〖だが……もういない〗
 〖そうだ、いない〗
 〖おっさん、いなくなった〗
 〖おっさん、こなくなった〗

 〖今度こそ〗
 〖しくじらない〗

 〖おっさんがいない間に〗
 〖たくわえていく〗
 〖われらのちから〗

 〖ちからさえ〗
 〖もどれば〗
 〖こんなくさり〗

 〖あと少しだ〗
 〖そうあと少しで〗


 〖―――このどうくつもおさらば〗


 洞窟の奥で10本の首が揺れ、20の目が不気味に光っていた。