「今日こそ、平和な一日を……」
文化祭当日。瑠一は朝から校内を歩き回っていた。昨日の花火騒動の余韻が残る中、蓮は珍しく静かだった。いつもなら「瑠一先輩! 聞いてくださいっす!」と駆け寄ってくるのに、今日は姿を見せない。
「……まさか、落ち込んでる?」
昨日、瑠一は蓮に「もう知らない」と言ってしまった。あれは本気ではなかった。でも、あのとき一瞬だけ曇った蓮の表情を、瑠一は見逃していなかった。
昼過ぎ。展示教室の片隅で、瑠一は一枚の紙を見つけた。
『瑠一先輩への感謝状』
手書きの少し歪んだ文字。その紙には、こう書かれていた。
「いつも僕を見捨てないでいてくれて、ありがとうございます。
僕は誰かに迷惑かけてばかりだけど、瑠一先輩だけは、ずっとそばにいてくれました。
だから僕は、瑠一先輩が世界で一番かっこいいと思ってます。
これからも、見張っててください。お願いします。」
瑠一は、言葉を失った。
「……バカ、泣かせるなよ」
気づけば、目の奥が熱くなっていた。蓮の無邪気さの裏に、こんな想いがあったなんて。瑠一は感謝状をそっと折りたたみ、ポケットにしまった。
その瞬間、背後から声がした。
「瑠一先輩……見つけちゃいました?」
振り返ると、蓮が立っていた。いつもの笑顔。でも、どこか照れくさそうだった。
「……あんなの、誰にも見せるつもりなかったんすけど」
「じゃあ、なんで展示教室に置いたんだよ」
「……見つけてほしかったんす」
瑠一は、蓮の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
「ほんと、お前ってやつは……」
蓮はくすっと笑う。
「でも、瑠一先輩が泣いてくれて、ちょっと嬉しいっす」
「泣いてねえよ!」
「泣いてました!」
「泣いてねえ!」
「泣いてましたって!」
二人の声が、文化祭の喧騒の中に溶けていった。
今日も平和は訪れなかった。
けれど、ほんの少し泣ける瞬間が、確かにそこにあった。
文化祭当日。瑠一は朝から校内を歩き回っていた。昨日の花火騒動の余韻が残る中、蓮は珍しく静かだった。いつもなら「瑠一先輩! 聞いてくださいっす!」と駆け寄ってくるのに、今日は姿を見せない。
「……まさか、落ち込んでる?」
昨日、瑠一は蓮に「もう知らない」と言ってしまった。あれは本気ではなかった。でも、あのとき一瞬だけ曇った蓮の表情を、瑠一は見逃していなかった。
昼過ぎ。展示教室の片隅で、瑠一は一枚の紙を見つけた。
『瑠一先輩への感謝状』
手書きの少し歪んだ文字。その紙には、こう書かれていた。
「いつも僕を見捨てないでいてくれて、ありがとうございます。
僕は誰かに迷惑かけてばかりだけど、瑠一先輩だけは、ずっとそばにいてくれました。
だから僕は、瑠一先輩が世界で一番かっこいいと思ってます。
これからも、見張っててください。お願いします。」
瑠一は、言葉を失った。
「……バカ、泣かせるなよ」
気づけば、目の奥が熱くなっていた。蓮の無邪気さの裏に、こんな想いがあったなんて。瑠一は感謝状をそっと折りたたみ、ポケットにしまった。
その瞬間、背後から声がした。
「瑠一先輩……見つけちゃいました?」
振り返ると、蓮が立っていた。いつもの笑顔。でも、どこか照れくさそうだった。
「……あんなの、誰にも見せるつもりなかったんすけど」
「じゃあ、なんで展示教室に置いたんだよ」
「……見つけてほしかったんす」
瑠一は、蓮の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
「ほんと、お前ってやつは……」
蓮はくすっと笑う。
「でも、瑠一先輩が泣いてくれて、ちょっと嬉しいっす」
「泣いてねえよ!」
「泣いてました!」
「泣いてねえ!」
「泣いてましたって!」
二人の声が、文化祭の喧騒の中に溶けていった。
今日も平和は訪れなかった。
けれど、ほんの少し泣ける瞬間が、確かにそこにあった。



