週明けの月曜日。
この日は朝からどんよりとした天気だ。
天気予報でも、午後から雨が降ると言っていた。
私が朝、教室に入った頃にはざわざわと人だかりが出来ている状況だった。
何かが起こっていることは明らかであろう。
「おはよう、琴乃ちゃん。何の騒ぎ?」
「ああ、優子ちゃん、おはよう。それが……」
琴乃ちゃんは困惑した表情を教室の中心に向ける。
私も琴乃ちゃんの視線を追い、教室の中心に目を向けた。
二年六組の教室にはとんでもないものがばら撒かれていた。
それは写真だった。
何が写っているのかというと、ラブホテルから腕を絡めて出て来る宮野くんと石田さんだった。
随分と生々しい写真だと、私は感じた。
おまけに宮野くんは相川さんと付き合っていたはずだ。
これは立派な浮気だろう。
「ちょっと翔! これどういうことなの!? あんた愛梨と関係持ってたってこと!?」
当然のように相川さんは宮野くんに詰め寄っている。
鋭いナイフのような口調だ。
おまけにその浮気相手が現在喧嘩中(?)の石田さんだから、より一層怒りが強いのだろう。
「いや、これは……ほら、今色々言われてる生成AIが作ったコラージュだって」
宮野くんはいつもの明るくはっきりとした様子ではなく、しどろもどろな状態になっていた。
そこへ石田さんが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「理奈って六月から翔と付き合ってるのに、まだヤッてないんだね。ごめんね、翔と一線超えちゃった」
「おい、愛梨!」
宮野くんは焦った様子だ。
もう浮気確定で言い逃れは出来ないだろう。
石田さんに関しても、正直そんな生々しい話をクラスの大勢の前で告げるのはどうかと思ったが、どうやら彼女の頭にはそんな考えはないらしい。
私は誰にもバレないようにはあっとため息をつき、私は自身のスマートフォンに視線を移した。
きっと誰かがこの修羅場を止めてくれるだろう。
私は呑気にそう考えていた。
「あ、『暇つぶし』のアカウントにも書き込まれてる」
クラスの誰かがそう言ったので、SNSのアカウントを持っている者達はほぼ全員自身のスマートフォンで『暇つぶし』のアカウントを見た。
「あ、本当だ。優子ちゃん、見て」
琴乃ちゃんはSNSのアプリをスマートフォンにインストールしていない私に『暇つぶし』の書き込みを見せてくれた。
私は自身のスマートフォンを制服のスカートのポケットに入れる。
@himatsubushi
A川とI田の友情はやっぱり脆いものだった
@himatsubushi
M野もヤバい
A川と付き合いつつI田と浮気中
証拠は明日の二年六組の教室で
書き込みは更新されていた。
「俺これ昨日見たよ。マジかって思って今日来たら相川さんと宮野と石田さんがこの状態」
「あ、実は私は金曜に見てさ。友情脆いのやつ」
「私、昨日の夜にその友情脆いってやつが流れてきた。多分浮気の件はタイムラインが流れて見逃してると思うけど」
「俺も。タイムライン流れんの早いよな」
どうやら『暇つぶし』による書き込みを既に昨日以前の段階で見ていたクラスメイト達がいるようだ。
「A川は相川さんだとして、I田は石田さんだよな?」
「え? じゃあM野って、宮野くんのこと?」
「じゃあこの『暇つぶし』って人の書き込み、信憑性あるってことか?」
「ていうか、『暇つぶし』って、このクラスにいるってこと?」
今『暇つぶし』による書き込みを見たクラスメイト達は困惑気味に口にする。
相川さんと石田さんの友情の脆さに関する書き込みは、金曜日の夕方頃。私が部活中の時だ。
そして宮野くんの浮気に関する投稿は昨日の夜。つまり、日曜日の夜だった。
「何か……ちょっとアレだね」
上手い言葉が見つからず、私は苦笑するしかなかった。
とりあえず私も再び制服のスカートのポケットから自分のスマートフォンを取り出して、そちらに目を向けた。
相川さんの怒号、宮野くんの聞き苦しい言い訳、石田さんの挑発的が言動が飛び交っている。
まさか朝から相川さん、宮野くん、石田さんの三角関係の修羅場に遭遇するとは思わなかった。
「これから体育祭あるのに、うちのクラスどうなっちゃうんだろう?」
琴乃ちゃんは不安そうな表情だった。
「そうだね」
私は何となく琴乃ちゃんの制服の袖を握った。
「てかこれどうなんだろうね? 相川さんはさ、ただ家がお金持ちとか豪邸に住んでるとか、偽ブランドとかで見栄を張ってただけじゃん。でもさ、石田さんと宮野くんは何というか、罪の度合いが相川さんより重くない?」
クラスの子がそう口にした。
「確かに、宮野くんって相川さんと付き合ってるけど今回石田さんと浮気して裏切ったわけだよね。石田さんも同罪だわ」
「だよね。しかもその……ホテルって何か生々しい」
女子達はやや嫌悪した表情だ。
「宮野の奴、相川さんと付き合うだけじゃなくて石田さんと浮気かよ」
「イケメンは何しても良いってか?」
男子達は宮野くんに対して嫉妬による嫌悪や怒りを露わにしている。
「てかさ、マジでこの『暇つぶし』って誰なわけ? さっきも誰かが言ってたけど、このクラスにいる感じじゃね?」
「ああ、確かに」
クラスの中に『暇つぶし』がいると疑う人達も出て来た。
ある意味当然の流れかもしれない。
「ていうかさ、相川さん、石田さん、宮野くんに何というか、裏があるんだったらさ、吉岡くんも怪しくない?」
スクールカースト一軍メンバーの中で唯一無傷な吉岡くんのことを疑い出す人も出て来た。
ちなみに、吉岡くんはまだ登校して来ていない。
私と琴乃ちゃんは、クラスの様子を端の方で見ているのが精一杯だ。
「おはよう! どうした? 何かあったのか?」
そこへ、タイミング良く吉岡くんが現れた。
相川さん、石田さん、宮野くんはまだ教室の中心で言い争っている。
三角関係の修羅場は続いているようだ。
「えっと、吉岡くん、それがね、相川さんと石田さんと宮野くんの三人が……」
吉岡くんに詳細を話したのは澤村さんだった。
困ったような表情で上目遣いをしている。
「マジか。澤村、教えてくれてありがとな。俺、三人を止めるて来るわ」
澤村さんに対してニッと笑う吉岡くん。
頼もしそうな表情だった。
流石は一軍男子だ。
「おい、翔も理奈も愛梨も落ち着けって! 教室で言い合っても仕方ないだろ。他の奴らもいるんだしさ」
吉岡くんは相川さん、石田さん、宮野くんの争いを止めに行く。
三人を諌めるその姿はまさしく救世主だとクラスのみんなは思っただろう。
伊達にスクールカースト一軍をやっているわけではなさそうだなと、私も感じていた。
この日は朝からどんよりとした天気だ。
天気予報でも、午後から雨が降ると言っていた。
私が朝、教室に入った頃にはざわざわと人だかりが出来ている状況だった。
何かが起こっていることは明らかであろう。
「おはよう、琴乃ちゃん。何の騒ぎ?」
「ああ、優子ちゃん、おはよう。それが……」
琴乃ちゃんは困惑した表情を教室の中心に向ける。
私も琴乃ちゃんの視線を追い、教室の中心に目を向けた。
二年六組の教室にはとんでもないものがばら撒かれていた。
それは写真だった。
何が写っているのかというと、ラブホテルから腕を絡めて出て来る宮野くんと石田さんだった。
随分と生々しい写真だと、私は感じた。
おまけに宮野くんは相川さんと付き合っていたはずだ。
これは立派な浮気だろう。
「ちょっと翔! これどういうことなの!? あんた愛梨と関係持ってたってこと!?」
当然のように相川さんは宮野くんに詰め寄っている。
鋭いナイフのような口調だ。
おまけにその浮気相手が現在喧嘩中(?)の石田さんだから、より一層怒りが強いのだろう。
「いや、これは……ほら、今色々言われてる生成AIが作ったコラージュだって」
宮野くんはいつもの明るくはっきりとした様子ではなく、しどろもどろな状態になっていた。
そこへ石田さんが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「理奈って六月から翔と付き合ってるのに、まだヤッてないんだね。ごめんね、翔と一線超えちゃった」
「おい、愛梨!」
宮野くんは焦った様子だ。
もう浮気確定で言い逃れは出来ないだろう。
石田さんに関しても、正直そんな生々しい話をクラスの大勢の前で告げるのはどうかと思ったが、どうやら彼女の頭にはそんな考えはないらしい。
私は誰にもバレないようにはあっとため息をつき、私は自身のスマートフォンに視線を移した。
きっと誰かがこの修羅場を止めてくれるだろう。
私は呑気にそう考えていた。
「あ、『暇つぶし』のアカウントにも書き込まれてる」
クラスの誰かがそう言ったので、SNSのアカウントを持っている者達はほぼ全員自身のスマートフォンで『暇つぶし』のアカウントを見た。
「あ、本当だ。優子ちゃん、見て」
琴乃ちゃんはSNSのアプリをスマートフォンにインストールしていない私に『暇つぶし』の書き込みを見せてくれた。
私は自身のスマートフォンを制服のスカートのポケットに入れる。
@himatsubushi
A川とI田の友情はやっぱり脆いものだった
@himatsubushi
M野もヤバい
A川と付き合いつつI田と浮気中
証拠は明日の二年六組の教室で
書き込みは更新されていた。
「俺これ昨日見たよ。マジかって思って今日来たら相川さんと宮野と石田さんがこの状態」
「あ、実は私は金曜に見てさ。友情脆いのやつ」
「私、昨日の夜にその友情脆いってやつが流れてきた。多分浮気の件はタイムラインが流れて見逃してると思うけど」
「俺も。タイムライン流れんの早いよな」
どうやら『暇つぶし』による書き込みを既に昨日以前の段階で見ていたクラスメイト達がいるようだ。
「A川は相川さんだとして、I田は石田さんだよな?」
「え? じゃあM野って、宮野くんのこと?」
「じゃあこの『暇つぶし』って人の書き込み、信憑性あるってことか?」
「ていうか、『暇つぶし』って、このクラスにいるってこと?」
今『暇つぶし』による書き込みを見たクラスメイト達は困惑気味に口にする。
相川さんと石田さんの友情の脆さに関する書き込みは、金曜日の夕方頃。私が部活中の時だ。
そして宮野くんの浮気に関する投稿は昨日の夜。つまり、日曜日の夜だった。
「何か……ちょっとアレだね」
上手い言葉が見つからず、私は苦笑するしかなかった。
とりあえず私も再び制服のスカートのポケットから自分のスマートフォンを取り出して、そちらに目を向けた。
相川さんの怒号、宮野くんの聞き苦しい言い訳、石田さんの挑発的が言動が飛び交っている。
まさか朝から相川さん、宮野くん、石田さんの三角関係の修羅場に遭遇するとは思わなかった。
「これから体育祭あるのに、うちのクラスどうなっちゃうんだろう?」
琴乃ちゃんは不安そうな表情だった。
「そうだね」
私は何となく琴乃ちゃんの制服の袖を握った。
「てかこれどうなんだろうね? 相川さんはさ、ただ家がお金持ちとか豪邸に住んでるとか、偽ブランドとかで見栄を張ってただけじゃん。でもさ、石田さんと宮野くんは何というか、罪の度合いが相川さんより重くない?」
クラスの子がそう口にした。
「確かに、宮野くんって相川さんと付き合ってるけど今回石田さんと浮気して裏切ったわけだよね。石田さんも同罪だわ」
「だよね。しかもその……ホテルって何か生々しい」
女子達はやや嫌悪した表情だ。
「宮野の奴、相川さんと付き合うだけじゃなくて石田さんと浮気かよ」
「イケメンは何しても良いってか?」
男子達は宮野くんに対して嫉妬による嫌悪や怒りを露わにしている。
「てかさ、マジでこの『暇つぶし』って誰なわけ? さっきも誰かが言ってたけど、このクラスにいる感じじゃね?」
「ああ、確かに」
クラスの中に『暇つぶし』がいると疑う人達も出て来た。
ある意味当然の流れかもしれない。
「ていうかさ、相川さん、石田さん、宮野くんに何というか、裏があるんだったらさ、吉岡くんも怪しくない?」
スクールカースト一軍メンバーの中で唯一無傷な吉岡くんのことを疑い出す人も出て来た。
ちなみに、吉岡くんはまだ登校して来ていない。
私と琴乃ちゃんは、クラスの様子を端の方で見ているのが精一杯だ。
「おはよう! どうした? 何かあったのか?」
そこへ、タイミング良く吉岡くんが現れた。
相川さん、石田さん、宮野くんはまだ教室の中心で言い争っている。
三角関係の修羅場は続いているようだ。
「えっと、吉岡くん、それがね、相川さんと石田さんと宮野くんの三人が……」
吉岡くんに詳細を話したのは澤村さんだった。
困ったような表情で上目遣いをしている。
「マジか。澤村、教えてくれてありがとな。俺、三人を止めるて来るわ」
澤村さんに対してニッと笑う吉岡くん。
頼もしそうな表情だった。
流石は一軍男子だ。
「おい、翔も理奈も愛梨も落ち着けって! 教室で言い合っても仕方ないだろ。他の奴らもいるんだしさ」
吉岡くんは相川さん、石田さん、宮野くんの争いを止めに行く。
三人を諌めるその姿はまさしく救世主だとクラスのみんなは思っただろう。
伊達にスクールカースト一軍をやっているわけではなさそうだなと、私も感じていた。



