私と涼成くんの間には、沈黙が流れている。
雨音はどんどん強まる。
「……いつから気付いてたの?」
私はフッと笑い、楽譜から涼成くんに目を向ける。
「この前の金曜日。高辻さんがSNSで『暇つぶし』として書き込んでるの、見ちゃった。相川さんと石田さんの友情についてさ」
「あれ、見られてたんだ」
私はふうっとため息をついた。
涼成くんの言う通り、『暇つぶし』の正体は私、高辻優子で間違いない。
私も実はSNSのアカウントを持っていた。
琴乃ちゃんに言われるよりも前に、ブラウザからログイン出来ることも知っていた。
疑いがかからないよう、スマートフォンにSNSのアプリをインストールしていなかったのだ。
「高辻さんさ、何であんなことしたの? 相川さん達の関係引っ掻き回して何がしたいの?」
涼成くんは怪訝そうな表情を私に向けて来る。
「単なる暇つぶしだよ」
高辻家は、父、母、私の三人家族。両親は共働きで、今時ごく普通の家庭。
一つだけ普通の家庭と違う点があるとすれば、両親共に本業の会社員以上に副業で稼いでいること。
そのお陰で、私は小学四年生の時から年に一回、多い時で年に二回海外旅行を家族と楽しんでいる。ゴールデンウィークにも、国内旅行を楽しむ家庭だ。
旅行から得られる刺激は凄く良いものだ。
今年の海外旅行も非常に満足だった。
しかし、この夏休み、お盆の海外旅行から帰って来て以降、日常が何だかつまらなくて、刺激が足りないと感じていた。
普段から海外旅行や国内旅行をしているので、平和な日常生活が短調でつまらないと感じてしまったのだ。
「贅沢な悩み」
涼成くんは呆れている。
「知ってる。それでさ、思い付いたんだよね。私や私の周囲は平和で、他のところで何かトラブルとか起きないかなって。それを高みの見物したら、多少は刺激になるかなって」
だから今回相川さん、石田さん、宮野くん、吉岡くんの関係を引っき回してみた。
「それにさ、あの四人はスクールカースト一軍。一軍の人達って、私達三軍のことを空気だと思ってるじゃん。まあ別にいいんだけど、そう思っている人達なら、私の玩具として人間関係とか引っ掻き回しても良いよねって思ったわけ」
私は悪びれもせずに笑う。
「悪趣味」
涼成くんは引いたような表情だ。
「でも、宮野くんが中学時代に彼女を妊娠させたって書き込みは危なかったかも。私、宮野くんと同じ中学だっだからさ、向こうが気付いたら私の立場一気に危うくなってたよね」
あの書き込みは我ながら迂闊だった。
でも幸い、宮野くんは私が同じ中学であることに全く気付いていなかったようだ。
本当にラッキーである。
「宮野はともかくよく他の三人の証拠集められたね」
呆れながらため息をつく涼成くんだ。
「別に、相川さん、石田さん、吉岡くんを見張ってたりしたわけじゃないよ。偶然知った感じ。相川さんのブランドは見たことあって、何かデザインが本物と微妙に違ってたし、両親と買い物していた帰りに石田さんと宮野くんがホテルから出るのを見かけたし、吉岡くんの裏垢は何かおすすめ欄に出てきたからさ」
今回、私が宮野くん以外の三人の秘密(?)を知ったのは、本当に偶然だった。
「涼成くん、このこと別に誰かに言って良いよ。でもさ、何を言うか、より誰が言うか、だよ。私達みたいな地味な三軍が言うこと、みんな間に受けないと思う」
「別に、言う気はない。ただ本当に呆れてるだけ。恵まれてる人なのに、わけ分かんないことするなって」
涼成くんは相変わらず呆れ顔だ。
「まあ安心して。この遊び、続ける気はないから。あんな風に一軍の人達が壊れていくの見るの、それなりに楽しかったし」
それなりに満足するものが見られたので、私はフッと口角を上げた。
私の周りは平和で、何かトラブルは私達とは関係のない所で起こって欲しい。
それを高みの見物していたい。
これが私の本性なのだから。
雨音はどんどん強まる。
「……いつから気付いてたの?」
私はフッと笑い、楽譜から涼成くんに目を向ける。
「この前の金曜日。高辻さんがSNSで『暇つぶし』として書き込んでるの、見ちゃった。相川さんと石田さんの友情についてさ」
「あれ、見られてたんだ」
私はふうっとため息をついた。
涼成くんの言う通り、『暇つぶし』の正体は私、高辻優子で間違いない。
私も実はSNSのアカウントを持っていた。
琴乃ちゃんに言われるよりも前に、ブラウザからログイン出来ることも知っていた。
疑いがかからないよう、スマートフォンにSNSのアプリをインストールしていなかったのだ。
「高辻さんさ、何であんなことしたの? 相川さん達の関係引っ掻き回して何がしたいの?」
涼成くんは怪訝そうな表情を私に向けて来る。
「単なる暇つぶしだよ」
高辻家は、父、母、私の三人家族。両親は共働きで、今時ごく普通の家庭。
一つだけ普通の家庭と違う点があるとすれば、両親共に本業の会社員以上に副業で稼いでいること。
そのお陰で、私は小学四年生の時から年に一回、多い時で年に二回海外旅行を家族と楽しんでいる。ゴールデンウィークにも、国内旅行を楽しむ家庭だ。
旅行から得られる刺激は凄く良いものだ。
今年の海外旅行も非常に満足だった。
しかし、この夏休み、お盆の海外旅行から帰って来て以降、日常が何だかつまらなくて、刺激が足りないと感じていた。
普段から海外旅行や国内旅行をしているので、平和な日常生活が短調でつまらないと感じてしまったのだ。
「贅沢な悩み」
涼成くんは呆れている。
「知ってる。それでさ、思い付いたんだよね。私や私の周囲は平和で、他のところで何かトラブルとか起きないかなって。それを高みの見物したら、多少は刺激になるかなって」
だから今回相川さん、石田さん、宮野くん、吉岡くんの関係を引っき回してみた。
「それにさ、あの四人はスクールカースト一軍。一軍の人達って、私達三軍のことを空気だと思ってるじゃん。まあ別にいいんだけど、そう思っている人達なら、私の玩具として人間関係とか引っ掻き回しても良いよねって思ったわけ」
私は悪びれもせずに笑う。
「悪趣味」
涼成くんは引いたような表情だ。
「でも、宮野くんが中学時代に彼女を妊娠させたって書き込みは危なかったかも。私、宮野くんと同じ中学だっだからさ、向こうが気付いたら私の立場一気に危うくなってたよね」
あの書き込みは我ながら迂闊だった。
でも幸い、宮野くんは私が同じ中学であることに全く気付いていなかったようだ。
本当にラッキーである。
「宮野はともかくよく他の三人の証拠集められたね」
呆れながらため息をつく涼成くんだ。
「別に、相川さん、石田さん、吉岡くんを見張ってたりしたわけじゃないよ。偶然知った感じ。相川さんのブランドは見たことあって、何かデザインが本物と微妙に違ってたし、両親と買い物していた帰りに石田さんと宮野くんがホテルから出るのを見かけたし、吉岡くんの裏垢は何かおすすめ欄に出てきたからさ」
今回、私が宮野くん以外の三人の秘密(?)を知ったのは、本当に偶然だった。
「涼成くん、このこと別に誰かに言って良いよ。でもさ、何を言うか、より誰が言うか、だよ。私達みたいな地味な三軍が言うこと、みんな間に受けないと思う」
「別に、言う気はない。ただ本当に呆れてるだけ。恵まれてる人なのに、わけ分かんないことするなって」
涼成くんは相変わらず呆れ顔だ。
「まあ安心して。この遊び、続ける気はないから。あんな風に一軍の人達が壊れていくの見るの、それなりに楽しかったし」
それなりに満足するものが見られたので、私はフッと口角を上げた。
私の周りは平和で、何かトラブルは私達とは関係のない所で起こって欲しい。
それを高みの見物していたい。
これが私の本性なのだから。



