その日の放課後。
私はいつも通り琴乃ちゃんと部活に行き、個人練習を始める準備をした。
「雨、止まないね」
バスクラリネットを組み立てながら、琴乃ちゃんは窓の外に目を向けてため息をついた。
「だね。天気予報だと午後からずっと雨っぽいよ」
「そっかー」
私の言葉に琴乃ちゃんは再びため息をついた。
私はそんな琴乃ちゃんを横目に、カチャリとユーフォニアムのケースを開ける。
銀色に輝いているユーフォニアムが、ケースから顔を出した。
毎回部活終わりにユーフォニアムの手入れをするので、当然と言えば当然だ。
相変わらず、天気は雨。
窓の外から雨音がザーザーと聞こえる。
昼休みの時より雨は酷くなっていた。
灰色の暗い雨雲が広がっている。
概ね、天気予報通りである。
雨音と、吹奏楽部の部員達が各々の楽器をケースから出す音。そして、話し声。
楽器を保管している部屋は、色々な音が響く空間になっていた。
個人練習をする教室に行く為には、渡り廊下を通らなければならない。
今日は雨が降っているので、サッカー部の部員達が渡り廊下で走り込み練習をしている。
その中に、吉岡くんの姿はない。
停学になったのだから当然だ。
窓の外の雨の音と、サッカー部の部員達の足音が聞こえる中、私は渡り廊下をいつものように通る。
サッカー部の部員達は、走り込みの練習をしながら私を上手く避けてくれた。
こちらはユーフォニアムと譜面台とメトロノームなどを持っているのだから、当然と言えば当然だと思う。
割と大きめの楽器を持っているのだから。
私がいつも個人練習で使う、二年六組の教室は幸いにも誰にも取られていなかった。
時々チューバ担当の部員や、その他金管楽器、木管楽器担当の部員にお目当ての教室を取られていたりするのだ。
ユーフォニアムと譜面台を一旦床に置き、廊下側の端の一番後ろの席に座る。
確かこの席は川島くんの席だっただろうか。
私はそのままユーフォニアムの基礎練習を始めた。
「高辻さん」
休憩中、涼成くんが教室に入って来た。
恐らくコントラバスも近くの教室で個人練習をしていたのだろう。
「涼成くん、休憩なんだ」
「まあね」
涼成くんは、廊下側の壁にかるくもたれかかる。
「結局さ、二年六組はどうなるんだろう?」
天井を見ながらそう呟く涼成くん。
「さあ?」
私は楽譜に目を向ける。
「高辻さんってさ、毎年ゴールデンウィークには国内旅行で、夏は海外旅行してるじゃん」
「……それがどうしたの?」
いきなり話が変わり、私は少し戸惑ってしまう。
「ユーフォだって、買ってもらえてるし」
涼成くんは、私のユーフォニアムに目を向ける。
話の脈絡が分からない。
雨の音が妙に煩く聞こえる。
「色々と恵まれてるのにさ、何でこんなことするわけ? 高辻さん、いや……『暇つぶし』さん」
私はいつも通り琴乃ちゃんと部活に行き、個人練習を始める準備をした。
「雨、止まないね」
バスクラリネットを組み立てながら、琴乃ちゃんは窓の外に目を向けてため息をついた。
「だね。天気予報だと午後からずっと雨っぽいよ」
「そっかー」
私の言葉に琴乃ちゃんは再びため息をついた。
私はそんな琴乃ちゃんを横目に、カチャリとユーフォニアムのケースを開ける。
銀色に輝いているユーフォニアムが、ケースから顔を出した。
毎回部活終わりにユーフォニアムの手入れをするので、当然と言えば当然だ。
相変わらず、天気は雨。
窓の外から雨音がザーザーと聞こえる。
昼休みの時より雨は酷くなっていた。
灰色の暗い雨雲が広がっている。
概ね、天気予報通りである。
雨音と、吹奏楽部の部員達が各々の楽器をケースから出す音。そして、話し声。
楽器を保管している部屋は、色々な音が響く空間になっていた。
個人練習をする教室に行く為には、渡り廊下を通らなければならない。
今日は雨が降っているので、サッカー部の部員達が渡り廊下で走り込み練習をしている。
その中に、吉岡くんの姿はない。
停学になったのだから当然だ。
窓の外の雨の音と、サッカー部の部員達の足音が聞こえる中、私は渡り廊下をいつものように通る。
サッカー部の部員達は、走り込みの練習をしながら私を上手く避けてくれた。
こちらはユーフォニアムと譜面台とメトロノームなどを持っているのだから、当然と言えば当然だと思う。
割と大きめの楽器を持っているのだから。
私がいつも個人練習で使う、二年六組の教室は幸いにも誰にも取られていなかった。
時々チューバ担当の部員や、その他金管楽器、木管楽器担当の部員にお目当ての教室を取られていたりするのだ。
ユーフォニアムと譜面台を一旦床に置き、廊下側の端の一番後ろの席に座る。
確かこの席は川島くんの席だっただろうか。
私はそのままユーフォニアムの基礎練習を始めた。
「高辻さん」
休憩中、涼成くんが教室に入って来た。
恐らくコントラバスも近くの教室で個人練習をしていたのだろう。
「涼成くん、休憩なんだ」
「まあね」
涼成くんは、廊下側の壁にかるくもたれかかる。
「結局さ、二年六組はどうなるんだろう?」
天井を見ながらそう呟く涼成くん。
「さあ?」
私は楽譜に目を向ける。
「高辻さんってさ、毎年ゴールデンウィークには国内旅行で、夏は海外旅行してるじゃん」
「……それがどうしたの?」
いきなり話が変わり、私は少し戸惑ってしまう。
「ユーフォだって、買ってもらえてるし」
涼成くんは、私のユーフォニアムに目を向ける。
話の脈絡が分からない。
雨の音が妙に煩く聞こえる。
「色々と恵まれてるのにさ、何でこんなことするわけ? 高辻さん、いや……『暇つぶし』さん」



