白城の島国は、真昼の陽光が白い珊瑚石の壁を強く照らし、海風が霧をやわらかく運ぶ、静穏に包まれた日を迎えていた。
城の中心塔の最上階――敷島の私室は、白一色の壁と床が広がる広大な空間。そこから突き破るように、黄金の巨木が生えていた。
幹は太古の神樹を思わせ、枝葉は天へ向かって突き抜けていく。半透明の果実が揺れ、その内部では何かが脈動するように光を放っている。白城全体を揺らす異様な輝きは、まるで巨大な鼓動のようだった。
沖合に停泊する初瀬――豪華客船型戦艦は、その巨木を悠然と見上げていた。
荘厳な紳士の声が響く。
「朝日様とサキマ様。あの大木の根元を調べてください。そして金色の果実――必ず破壊を」
サキマは黄金の羽根を大きく広げ、空へと飛翔した。眼下に広がる枝と果実を狙い撃ち、二丁拳銃を閃光と化す。
銃声が轟くたび、透明な果実が砕け、霧となって散り、鐘のような澄んだ音だけが残された。
同時に、朝日は塔の内部へ。階段を駆け上がり、敷島の私室の扉を踏み破った。
そこは黄金の森に変じていた。白い寝台から幹が突き出し、天井を裂き、部屋一面を根と枝で覆い尽くしている。
中心に聳える幹は圧倒的な存在感を放ち、その根元が荒々しく脈打っていた。
朝日は眉を吊り上げ、大剣を握り直す。
「ここでッ、終わらせる!」
果実や蔓を斬り払いながら突進し、根元へ達すると渾身の力で大剣を振り下ろした。
轟くような衝撃とともに根に深い亀裂が走り、私室全体が激しく震えた。
だが、砕けかけた幹の奥からは新たな蔓と果実が脈動し、再生を試みていた。
その刹那、サキマが窓を破って私室に舞い込む。羽根をはためかせながら空中で両腕を交差させ、二丁の銃口を幹へ突きつける。
「甘いぞ――まだ息がある!」
黄金の弾丸が連続して撃ち込まれ、再生しかけの果実が次々に爆ぜて弾け散る。
最後に残った巨大な果実ひとつ。サキマは床に着地し、大きく羽根を広げながら冷徹に引き金を引いた。
閃光。轟音。巨大果実は内側から燃え尽きるように崩壊した。
根元は完全に断たれ、黄金の巨木は呻き声のような軋みを上げながら倒壊していった。
枝葉も花も次々と霧散し、部屋を覆っていた光が消えていく。
朝日は肩で荒い呼吸を繰り返し剣を収め、サキマも銃を下ろして羽根を閉じた。
そのとき、部屋の奥に――寝台に敷島の姿があった。
黄金の根の源となっていた彼は、汗に濡れた安らかな顔で横たわり、浅い呼吸を繰り返していた。生きてはいるが、その肉体は極限にまで衰弱している。
静寂の中、外から初瀬の声が艦橋越しに響いた。
「……お疲れ様でした。掃除はこちらでやります」
朝日は敷島を見下ろしながら大きく吐息をつき、サキマは静かに頷いた。二人の眼差しに宿るものは、戦いの疲労と、それでも仲間を見捨てなかった誇りだった。
窓の外から吹き込む海風が、わずかに残った黄金の花弁をさらい去っていった。
残ったのは、静寂と――なお脈打つ敷島のかすかな生命だけであった。
城の中心塔の最上階――敷島の私室は、白一色の壁と床が広がる広大な空間。そこから突き破るように、黄金の巨木が生えていた。
幹は太古の神樹を思わせ、枝葉は天へ向かって突き抜けていく。半透明の果実が揺れ、その内部では何かが脈動するように光を放っている。白城全体を揺らす異様な輝きは、まるで巨大な鼓動のようだった。
沖合に停泊する初瀬――豪華客船型戦艦は、その巨木を悠然と見上げていた。
荘厳な紳士の声が響く。
「朝日様とサキマ様。あの大木の根元を調べてください。そして金色の果実――必ず破壊を」
サキマは黄金の羽根を大きく広げ、空へと飛翔した。眼下に広がる枝と果実を狙い撃ち、二丁拳銃を閃光と化す。
銃声が轟くたび、透明な果実が砕け、霧となって散り、鐘のような澄んだ音だけが残された。
同時に、朝日は塔の内部へ。階段を駆け上がり、敷島の私室の扉を踏み破った。
そこは黄金の森に変じていた。白い寝台から幹が突き出し、天井を裂き、部屋一面を根と枝で覆い尽くしている。
中心に聳える幹は圧倒的な存在感を放ち、その根元が荒々しく脈打っていた。
朝日は眉を吊り上げ、大剣を握り直す。
「ここでッ、終わらせる!」
果実や蔓を斬り払いながら突進し、根元へ達すると渾身の力で大剣を振り下ろした。
轟くような衝撃とともに根に深い亀裂が走り、私室全体が激しく震えた。
だが、砕けかけた幹の奥からは新たな蔓と果実が脈動し、再生を試みていた。
その刹那、サキマが窓を破って私室に舞い込む。羽根をはためかせながら空中で両腕を交差させ、二丁の銃口を幹へ突きつける。
「甘いぞ――まだ息がある!」
黄金の弾丸が連続して撃ち込まれ、再生しかけの果実が次々に爆ぜて弾け散る。
最後に残った巨大な果実ひとつ。サキマは床に着地し、大きく羽根を広げながら冷徹に引き金を引いた。
閃光。轟音。巨大果実は内側から燃え尽きるように崩壊した。
根元は完全に断たれ、黄金の巨木は呻き声のような軋みを上げながら倒壊していった。
枝葉も花も次々と霧散し、部屋を覆っていた光が消えていく。
朝日は肩で荒い呼吸を繰り返し剣を収め、サキマも銃を下ろして羽根を閉じた。
そのとき、部屋の奥に――寝台に敷島の姿があった。
黄金の根の源となっていた彼は、汗に濡れた安らかな顔で横たわり、浅い呼吸を繰り返していた。生きてはいるが、その肉体は極限にまで衰弱している。
静寂の中、外から初瀬の声が艦橋越しに響いた。
「……お疲れ様でした。掃除はこちらでやります」
朝日は敷島を見下ろしながら大きく吐息をつき、サキマは静かに頷いた。二人の眼差しに宿るものは、戦いの疲労と、それでも仲間を見捨てなかった誇りだった。
窓の外から吹き込む海風が、わずかに残った黄金の花弁をさらい去っていった。
残ったのは、静寂と――なお脈打つ敷島のかすかな生命だけであった。



