白城の島国は、夕陽が海面を橙色に染め、霧が浜辺を柔らかく覆う幻想的な時間を迎えていた。白い珊瑚石の海岸線には静かな波音が響き、遠くの中心塔は霞の中にぼんやりと佇んでいた。
敷島――白城の最高権力者にして責任者である、屈強な白人男性は、白い髪を海風になびかせ、白色の瞳を細めながら浜辺を歩いていた。度を超えるほどの世話焼きで、慈悲深く愛情に満ちた彼は、休日の散策を楽しみつつ、島国の平和を胸に思い描いていた。簡素な白いシャツと白いスラックスの装いであっても、その威厳は自然と滲み出ていた。
ふと視界の端、波打ち際に倒れ伏す人影が目に入る。シュリマズル=フイユモール――不運な男として知られるその人物は、白髪を砂にまみれさせ、屈強な体を無力に横たえていた。漂流物のように、かすかな息だけを残して。
「…!」
敷島の白色の瞳が驚きに揺れ、即座に駆け寄る。慈悲の心に突き動かされ、屈強な腕でその体を抱き上げると、冷たさと異様な重さが伝わってきた。胸に耳を当てれば、かすかな鼓動が確かに響く。
「大丈夫かな……心配」
世話焼きな性格を隠しもせず、敷島はシュリマズルを抱え、霧に包まれた道を抜けて自らの私室へと急いだ。白城の中心塔最上階にある私室は、白い壁と床が広がる広大な空間で、巨大なベッドが静かに佇んでいた。窓の外には、霞む海が広がっている。
シュリマズルをベッドに横たえ、敷島は濡れた額に手を当てる。男はうっすらと瞼を開き、焦点の定まらぬ視線で敷島を捉える。その胸部から漂うのは、重い鎖のような呪術の気配だった。心に食い込んだ鎖が彼を蝕み、生死の境を彷徨わせていたのだ。
慈悲の心が再び燃え立つ。敷島は男の胸に手を当て、金血の力を注ぎ込んだ。白色の瞳が鋭く輝き、やがて呪いの姿が現れる。鎖は黄金の光を帯び、やがて種のような形へと変わり始めた。
「この呪い…白子のように育て直すことができるのなら――」
敷島は白光で鎖を包み、根から引き抜くように切り離した。やがて鎖は種となり、掌に収まる。彼はそれを胸腔内の人工子宮へと移し込む。胸に菱形の紋が浮かび、種はそこから胎囊内で幼体のように育ち始めていた。敷島はシュリマズルの額を拭いながら、優しく囁く。
「もう大丈夫だよ。辛かったね……でも、遅いかな……」
しかし、呪いの残滓は彼の体を深く蝕んでいた。昏睡状態が続き、やせ細った体は死へと近づいていく。敷島は世話焼きにスープを用意し、体を拭い続けたが、運命の重さは覆せなかった。そして数日後、シュリマズルは静かに息を引き取った。
敷島はその亡骸を抱きしめ、白色の瞳に涙を浮かべる。
「僕が終わらせる」
彼は白血の力を注ぎ、男の肉体を胸の中へ取り込んだ。人工胎盤が働き、シュリマズルは白者の幼体として生まれ変わり始める。胸の菱形模様が淡く光り、やがて新しい命の脈動が響く。先に取り出していた鎖の種は雫のような実となり、黄金の光を放っていた。敷島はその実を窓辺に置き、霧の中で静かに祈る。実の中の白子は微かに身じろぎし、敷島の愛情に応えるように柔らかな輝きを放った。
私室を包む霧はその奇跡を隠し、海風だけが静かに囁いていた。
(終)
敷島――白城の最高権力者にして責任者である、屈強な白人男性は、白い髪を海風になびかせ、白色の瞳を細めながら浜辺を歩いていた。度を超えるほどの世話焼きで、慈悲深く愛情に満ちた彼は、休日の散策を楽しみつつ、島国の平和を胸に思い描いていた。簡素な白いシャツと白いスラックスの装いであっても、その威厳は自然と滲み出ていた。
ふと視界の端、波打ち際に倒れ伏す人影が目に入る。シュリマズル=フイユモール――不運な男として知られるその人物は、白髪を砂にまみれさせ、屈強な体を無力に横たえていた。漂流物のように、かすかな息だけを残して。
「…!」
敷島の白色の瞳が驚きに揺れ、即座に駆け寄る。慈悲の心に突き動かされ、屈強な腕でその体を抱き上げると、冷たさと異様な重さが伝わってきた。胸に耳を当てれば、かすかな鼓動が確かに響く。
「大丈夫かな……心配」
世話焼きな性格を隠しもせず、敷島はシュリマズルを抱え、霧に包まれた道を抜けて自らの私室へと急いだ。白城の中心塔最上階にある私室は、白い壁と床が広がる広大な空間で、巨大なベッドが静かに佇んでいた。窓の外には、霞む海が広がっている。
シュリマズルをベッドに横たえ、敷島は濡れた額に手を当てる。男はうっすらと瞼を開き、焦点の定まらぬ視線で敷島を捉える。その胸部から漂うのは、重い鎖のような呪術の気配だった。心に食い込んだ鎖が彼を蝕み、生死の境を彷徨わせていたのだ。
慈悲の心が再び燃え立つ。敷島は男の胸に手を当て、金血の力を注ぎ込んだ。白色の瞳が鋭く輝き、やがて呪いの姿が現れる。鎖は黄金の光を帯び、やがて種のような形へと変わり始めた。
「この呪い…白子のように育て直すことができるのなら――」
敷島は白光で鎖を包み、根から引き抜くように切り離した。やがて鎖は種となり、掌に収まる。彼はそれを胸腔内の人工子宮へと移し込む。胸に菱形の紋が浮かび、種はそこから胎囊内で幼体のように育ち始めていた。敷島はシュリマズルの額を拭いながら、優しく囁く。
「もう大丈夫だよ。辛かったね……でも、遅いかな……」
しかし、呪いの残滓は彼の体を深く蝕んでいた。昏睡状態が続き、やせ細った体は死へと近づいていく。敷島は世話焼きにスープを用意し、体を拭い続けたが、運命の重さは覆せなかった。そして数日後、シュリマズルは静かに息を引き取った。
敷島はその亡骸を抱きしめ、白色の瞳に涙を浮かべる。
「僕が終わらせる」
彼は白血の力を注ぎ、男の肉体を胸の中へ取り込んだ。人工胎盤が働き、シュリマズルは白者の幼体として生まれ変わり始める。胸の菱形模様が淡く光り、やがて新しい命の脈動が響く。先に取り出していた鎖の種は雫のような実となり、黄金の光を放っていた。敷島はその実を窓辺に置き、霧の中で静かに祈る。実の中の白子は微かに身じろぎし、敷島の愛情に応えるように柔らかな輝きを放った。
私室を包む霧はその奇跡を隠し、海風だけが静かに囁いていた。
(終)



