Sの配信を最初に見たのは、三年前のことでした。
骨董市で手に入れたという壊れかけの日本人形をカメラに映しながら、子どもの頃の思い出を語るSの姿が印象的だったのを覚えています。恐怖を煽るわけでもなく、馬鹿にするでもなく……まるで自分の友達を紹介するように、カメラに向かって語りかけていた。

それがSのスタイルでした。
呪物をコレクションし、配信で披露する。視聴者は面白半分に盛り上がり、コメント欄は冗談や煽りで埋まる。けれどS自身は本気で、誰も信じていないものの中に、誰かの声を探していた。

私がマネージャーとして関わるようになったのは、その少し後です。人気が出始めて案件の依頼も増え、スケジュール管理やスポンサー対応が必要になった。私にとってSはクライアントでもあったけれど、それ以上に、あの狂気じみた情熱に惹かれていたのかもしれません。

ただ……Sの渇きは常に隣り合わせでした。
普通の呪物では満足できなくなり、もっと強いもの、本物を求めていく。配信の裏側で、Sは何度も私に言いました。

「俺は呪われてもいいんだよ。その分だけ、何かを拾えるなら、もっと強いものに出会いたい」

冗談に聞こえればよかった。でもSの目は笑っていなかった。
あの夜も、そうだったんです。例のメールが届いた夜、Sは興奮で顔を赤くしながら私にメッセージを見せてきた。

「やっとだ。俺にしか触れられないモノが来た」

そこから先の出来事を、決して忘れない。
私はSを探しています。
あの部屋に泊まってから、姿を消したんです。
記載するこれらは、彼の手がかりになりうる資料です。