朝、エレーネは昨夜の思いつめた感じではなく明るくなっていた。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう。よく眠れたかい?」
「おかげさまで、ぐっすりでした」
「良かった」
「お兄様……ヨシお兄ちゃんも眠れましたか?」
「ふっ、もちろん」
宿の食堂で朝食を済ませて、まずは冒険者ギルドへ行く。大きな街とは違い、若干小さい建物だったが宿ぐらいの大きさはあり、騎士団と同じ町を護る施設として他の商業ギルドや鍛冶ギルドよりも立派だった。西部劇式の両扉を開き、中に入って冒険者カードの有効確認をする。
通常なら死亡して二百年も経っていれば社会常識としても廃棄処分をされている筈。下手にゴネずに新しく発行することになるだろう。そうすればFクラスでのスタートだ。講習などで時間が掛かるならリンドバーク伯爵領への出発が延びるが、エレーネが家に帰ると婚約者の家へ送られるからと無理に急ぎではなくなったため、ゆっくりするのも手だ……という話に決着した。
正面に並ぶ受付へと足を運ぶ。俺はともかく神官服の金髪美少女が一緒だったので注目を浴びた。十数人の冒険者がいた。
「あの、すみません」
「はい、ようこそ冒険者ギルドへ」
にこやかな笑顔で相手をしてくれる。やはり受付の女性たちは美人が多い。冒険者ギルドは荒くれ共の巣窟だったのが、こういう印象操作なのか好印象を地域に与えることとなった。
「冒険者カードの有効確認と更新をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あ、私のもお願いします。ポイントが付きますからね」
エレーネも俺に続いて自分のカードを受付に差し出した。
神官のエレーネはそういえば階級とか聞いてなかったな。横目で彼女の冒険者カードを見るとB級となっていた。まだ十四歳だというのに、よっぽどの優秀さを誇るのだろう。三十歳台でもC級、B級まで行けば将来安泰、というのが冒険者の常識だったから尚更すごい。A級は選ばれし素質を持つ冒険者だけで数少ない。S級は国に数人しかいない。以前のジャックさんはS級だ。
受付の女性は、エレーネのを先に作業し始めた。B級冒険者が田舎の町のギルドに来たからと対応も素晴らしい。遠目で観ていた冒険者たちが「Bクラスだ、スゲーー」とコソコソと喋っている。
「エレーネ様、リンドバーグ伯爵閣下より捜索手配の依頼が来ておりました。これにて解決という処理をしてもよろしいでしょうか?」
「え? お父様が……」
「はい。国中の冒険者ギルドに手配書が回って来ています。当冒険者ギルドが安全を確認しましたので解決処理も可能です。個人的にもエレーネお嬢様がご無事で良かったです」
「わたくしはこちらのヨシタカ様に命を助けられまして、危機一髪でした」
「ヨシタカ様ですか、あのギルドカードなのですが……」
「あ、はい。分かっています。有効期限が切れていますよね?」
「いえ、それが……初めて観ますので、ギルドマスターを呼んでもいいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
ヨシタカの了解を得ると、さっと立った受付嬢は駆け足で上階のギルドマスター室へと急いだ。
「???」
よく分かっていない顔つきのエレーナ。
「どうかしたのかしら、ヨシお兄ちゃんのカードって黒いミスリル製でしたよね? まさかオリハルコンかしら」
「うーん、多分、オリハルコン製だと思う」
「やっぱり人間の身体をした神様ですよね」
そんな雑談をしていたら、すぐにごつい筋肉質の大柄ギルドマスターを連れてきた受付嬢、さっそく紹介業務を始める。
「この方がリンドバーグ伯爵家のご令嬢エレーネ様です。そしてエレーネ様の命を救われたのが、そちらにいらっしゃるヨシタカ様。ギルドカードは特SSクラスです。判定水晶にて確認しました」
「わ、分かった。エレン、受付業務に戻ってくれ」
(あー、あの女の人エレンさんって言うんだ。奇麗な人だなぁ)
(お、お兄ちゃん……。特SS級って初めて聞きました……すごいです)
「えっと、わしはギルドマスターだ……です。初めてお越しの英雄ヨシタカ閣下、冒険者ギルド一同、歓迎いたします。お目にかかれて光栄です」
「へ?」
「閣下のギルドカードは勇者パーティでも採用されない唯一の恒久カードとなっています。今でも有効ですから、ご心配ありません。貯金は利子が乗っており、とんでもない金額になっております」
「ヨシお兄ちゃん、ギルドマスターの話も『?』ですし、何が起きてるのでしょうか?」
「うん、俺にも分らん。なんだか凄いサービスが付いているみたいだ」
「ヨシお兄様が凄くて偉いという事だけは分かりました!」
「いやいや、そんな偉いもんじゃないぞ?」
「ギルドマスター殿、私のカードは更新できて今でも有効なのですね? それの確認が取れれば問題ありません。態々お手数をおかけして申し訳ありません、ありがとうございました」
その言葉を聞いた大柄のギルドマスターが恐縮しながら話を続ける。
「はい英雄ヨシタカ閣下の特SS級冒険者カードは永久に有効となっています。ご説明は冒険者ギルド本部預かりになっております。支部ではこれ以上ご説明するのは権限を越えますので、王都の本部に寄られましたらギルド長にお尋ねください。本日はお越しくださり誠にありがとうございました。ご不便がございましたら何なりとご相談ください」
想定を超えた展開に驚くヨシタカであったが、意外なのが平然としていたエレーネであった。
「やはり人の身体をした神様だったんだ」と自分の人を見る目に自信をつけたという。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう。よく眠れたかい?」
「おかげさまで、ぐっすりでした」
「良かった」
「お兄様……ヨシお兄ちゃんも眠れましたか?」
「ふっ、もちろん」
宿の食堂で朝食を済ませて、まずは冒険者ギルドへ行く。大きな街とは違い、若干小さい建物だったが宿ぐらいの大きさはあり、騎士団と同じ町を護る施設として他の商業ギルドや鍛冶ギルドよりも立派だった。西部劇式の両扉を開き、中に入って冒険者カードの有効確認をする。
通常なら死亡して二百年も経っていれば社会常識としても廃棄処分をされている筈。下手にゴネずに新しく発行することになるだろう。そうすればFクラスでのスタートだ。講習などで時間が掛かるならリンドバーク伯爵領への出発が延びるが、エレーネが家に帰ると婚約者の家へ送られるからと無理に急ぎではなくなったため、ゆっくりするのも手だ……という話に決着した。
正面に並ぶ受付へと足を運ぶ。俺はともかく神官服の金髪美少女が一緒だったので注目を浴びた。十数人の冒険者がいた。
「あの、すみません」
「はい、ようこそ冒険者ギルドへ」
にこやかな笑顔で相手をしてくれる。やはり受付の女性たちは美人が多い。冒険者ギルドは荒くれ共の巣窟だったのが、こういう印象操作なのか好印象を地域に与えることとなった。
「冒険者カードの有効確認と更新をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あ、私のもお願いします。ポイントが付きますからね」
エレーネも俺に続いて自分のカードを受付に差し出した。
神官のエレーネはそういえば階級とか聞いてなかったな。横目で彼女の冒険者カードを見るとB級となっていた。まだ十四歳だというのに、よっぽどの優秀さを誇るのだろう。三十歳台でもC級、B級まで行けば将来安泰、というのが冒険者の常識だったから尚更すごい。A級は選ばれし素質を持つ冒険者だけで数少ない。S級は国に数人しかいない。以前のジャックさんはS級だ。
受付の女性は、エレーネのを先に作業し始めた。B級冒険者が田舎の町のギルドに来たからと対応も素晴らしい。遠目で観ていた冒険者たちが「Bクラスだ、スゲーー」とコソコソと喋っている。
「エレーネ様、リンドバーグ伯爵閣下より捜索手配の依頼が来ておりました。これにて解決という処理をしてもよろしいでしょうか?」
「え? お父様が……」
「はい。国中の冒険者ギルドに手配書が回って来ています。当冒険者ギルドが安全を確認しましたので解決処理も可能です。個人的にもエレーネお嬢様がご無事で良かったです」
「わたくしはこちらのヨシタカ様に命を助けられまして、危機一髪でした」
「ヨシタカ様ですか、あのギルドカードなのですが……」
「あ、はい。分かっています。有効期限が切れていますよね?」
「いえ、それが……初めて観ますので、ギルドマスターを呼んでもいいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
ヨシタカの了解を得ると、さっと立った受付嬢は駆け足で上階のギルドマスター室へと急いだ。
「???」
よく分かっていない顔つきのエレーナ。
「どうかしたのかしら、ヨシお兄ちゃんのカードって黒いミスリル製でしたよね? まさかオリハルコンかしら」
「うーん、多分、オリハルコン製だと思う」
「やっぱり人間の身体をした神様ですよね」
そんな雑談をしていたら、すぐにごつい筋肉質の大柄ギルドマスターを連れてきた受付嬢、さっそく紹介業務を始める。
「この方がリンドバーグ伯爵家のご令嬢エレーネ様です。そしてエレーネ様の命を救われたのが、そちらにいらっしゃるヨシタカ様。ギルドカードは特SSクラスです。判定水晶にて確認しました」
「わ、分かった。エレン、受付業務に戻ってくれ」
(あー、あの女の人エレンさんって言うんだ。奇麗な人だなぁ)
(お、お兄ちゃん……。特SS級って初めて聞きました……すごいです)
「えっと、わしはギルドマスターだ……です。初めてお越しの英雄ヨシタカ閣下、冒険者ギルド一同、歓迎いたします。お目にかかれて光栄です」
「へ?」
「閣下のギルドカードは勇者パーティでも採用されない唯一の恒久カードとなっています。今でも有効ですから、ご心配ありません。貯金は利子が乗っており、とんでもない金額になっております」
「ヨシお兄ちゃん、ギルドマスターの話も『?』ですし、何が起きてるのでしょうか?」
「うん、俺にも分らん。なんだか凄いサービスが付いているみたいだ」
「ヨシお兄様が凄くて偉いという事だけは分かりました!」
「いやいや、そんな偉いもんじゃないぞ?」
「ギルドマスター殿、私のカードは更新できて今でも有効なのですね? それの確認が取れれば問題ありません。態々お手数をおかけして申し訳ありません、ありがとうございました」
その言葉を聞いた大柄のギルドマスターが恐縮しながら話を続ける。
「はい英雄ヨシタカ閣下の特SS級冒険者カードは永久に有効となっています。ご説明は冒険者ギルド本部預かりになっております。支部ではこれ以上ご説明するのは権限を越えますので、王都の本部に寄られましたらギルド長にお尋ねください。本日はお越しくださり誠にありがとうございました。ご不便がございましたら何なりとご相談ください」
想定を超えた展開に驚くヨシタカであったが、意外なのが平然としていたエレーネであった。
「やはり人の身体をした神様だったんだ」と自分の人を見る目に自信をつけたという。



