ユアイの屋敷に拠点を移したヨシタカたちは共同生活を始めた。女神様から受け取っていた金貨が潤沢(じゅんたく)にあるので共同生活や様々な計画は破綻しなかった。

 メイドさんは五人おり、ユキシも仕事を手伝った。そこで男の子っぽい服装からメイド服に着替えたユキシは、驚くほど可憐な姿に変貌した。顔が黒かった泥などの汚れは奇麗さっぱりと消え、きめ細かい白い肌が露出した。スタイルは幼児体型であったが、意外とサラシを巻いていたために、さらしを巻かなければ胸はまずまずあった。

 言っては悪いが、まさしく合法ロリと一部界隈で話題を振りまきそうだ……。ツインテールにしないだけ良かったかもしれない。ショートカットのボブがよく似合っている。ユキシの危険回避のため、彼女はあまり外へ連れ出すのは避けようと考えたのは、ユアイには内緒である。

 初めてサラシの巻いてないユキシのメイド服姿を観た際、ついヨシタカは凝視してしまい、ユアイに怒られていた。ユキシは満更でもない感じで好印象だった。そのせいか何を思ったのか、ユアイまでメイド服を着るようになってしまった。ユアイは常にサラシを巻いておらず、いつものように腕に抱き着いてくるものだから、柔らかさを感じて兄として欲情を抑えるのに大変であった。

 それから毎日兄と一緒に居られると感情を高ぶらせたユアイは、毎晩、ヨシタカの部屋にお邪魔していた。前世で死別したという記憶が蘇っている為、ひと時でも離れたくないとの希望だった。布団の中にはさすがに入ってこなかったが。

 いつものようにヨシタカの部屋で家族ハグをしてもらっていたユアイが思い出したかのように話し始めた。

「そういえば二か月後に王都で武闘大会があるんだよ。それにミズハ姉さんも賓客というVIP観客として行くらしいよ。サトシさんもミキオさんも出場するんだって。お兄ちゃんも出場すれば全員が揃うね」

「……なるほど。全員集合にはもってこいだな」

(国民へのお披露目も兼ねていそうだな。そんな処だろうとは思ったが)

「ん? ユアイは出場しないのか?」

「わたしはお兄ちゃんの活躍を観るので忙しいから……」

「兎にも角にも楽しそうだ。参加するかな」

「あとね、勇者パーティの人たちも出るんだって」

「勇者パーティ? 俺たちのことじゃなくて?」

「うん、今の世界にはもう一つの勇者パーティが存在するんだって」

「俺も同じことを聞いたよ。やっぱりサトシの聖剣エクスカリバーも二本あるのかな?」

「うーん、よく分かんない。女神様(ハルちゃん)に聞いてみないとね」

「現代の勇者パーティか、強敵なんだろうな。少し燃えてきたかも」

「ふふふ……お兄ちゃんなら優勝間違いなしよ」

「そのユアイのお兄ちゃん推しは全くブレないな。いいこ、いいこ」

「ご褒美にチューもして欲しい」

「へっ?」

「ちゅーして」

「なんだか甘えたスキルがレベルアップしてないか?……ちゅっ」

「んふーーー」

(#ほっぺです)

「あの……大変恐れながら申し上げますが、お二人は兄妹ですよね? ぼくは何を見せつけられているのでしょうか……」

 メイドとして扉の外に待機していたユキシは、少し扉を開いて兄妹の家族ハグを観ていた。その仲良しな光景は、自分の家族がいなくなり羨ましいなと心の中で思いを募らせるに充分だった。家族愛に飢えているユキシもいつかは自分もと願う次第である。そして夜も更けていった。

「武闘大会は二か月後か……」