妹ユアイの所在は冒険者ギルドへ着いたらすぐに判明した。
やはり一軒家を借りて住んでいた。ギルドの職員の話によると、彼女がこの世界に降り立ってからすぐにオークやオーガを中心とする魔物がスタンピードで街を襲い、領主の騎士団や冒険者たちが抗戦するもジリジリと劣勢になっていた時に、妹が颯爽と現れ、たった一発の拡散エクスプロージョンで敵を撃破、あまりの強烈な破壊力で周囲を唖然とさせた。
それ以来、強力な敵が現れるたびに妹の出番がやってくるらしく既に街の守り神のように敬われているという。
俺とユキシは、ギルドで貰った簡単な地図を手に、ユアイの自宅へ向かった。二階建ての大きな家だそうで、ギルドや不動産屋(領主)が自ずから大きく立派な家を提供したのだという。賃貸だがお金は滞りなく支払われているそうで、きっちりしている妹らしいと兄として誇らしかった。
冒険者ギルドから街の中心を貫く大手通を真っ直ぐに領主邸へ向かって三十分ほど歩くと、その通りに面した大きな家が見えてきた。まるで屋敷と言えるほどに大きかった。こんな広くて大きい家に妹が一人で住んでいるのか? 掃除はきちんと出来ているのか? と疑問に思うほどだったが、門から家の方を見るとメイドさんが数人働いているのが見えた。むむむ……妹がお嬢様になっているのか……。
門から中に入って屋敷に近づくと、一人のメイドさんがこちらに気づき、俺達は頭を下げて「こんにちはお邪魔します」と声を掛けた。「あらあら、お客さんね、ユアイ様に御用かしら」と問われたので、会話を続ける。
「はい、私たちはヨシタカとユキシと申します。私はユアイの兄です。妹は在宅でしょうか?」
「はらはら、お兄様でいらっしゃいますか。ユアイ様はご在宅です。少しお待ちくださいませ」
妹に会いに来たのに、間にメイドさんという人が介し、想定していなかったせいで何となく居心地が悪くなった気がした。こじんまりした家に住んでいるとばかり思いこんでいたので、こちらも想定外といった感じだ。ユキシは「ほぇ~~」と感嘆の声を上げながらキョロキョロしていた。
すると、屋敷の二階の方から「どーーーーん」という扉を破壊するような音がして、ドドドド……という足音と共に誰かが降りてくる音がした。間違いない、妹のユアイだろう。自宅は屋敷にグレードアップしたが彼女は変わっていないようだ。
「おにいちゃーーーん」
「ユアイ!」
小さな体のどこにそんな力がというほどの勢いで玄関の大きな扉を激しく開け、妹ユアイが飛び出してきた。真っ直ぐにヨシタカの方へ走ってくる。ヨシタカも両腕を広げてユアイを抱き留める体勢になった。妹の弾丸のようなスピードの身体を軽く受け止め、ぎゅっと抱き締めた。家族ハグだ。
「久しぶりだなユアイ。元気にしてたか?」
「お兄ちゃんがいなくて寂しかったよぉ~~」
「よしよし、遅くなってごめんな、これからはずっと一緒だぞ」
「もう遅いよ~遅いよ~~待ちくたびれたよ、お兄ちゃんっ」
いつものようにヨシタカの胸に顔を埋めたユアイは、久しぶりの兄の香りに包まれ、幸せを感じていた。こんなに会いたかったなんて!と少しの期間離れていただけで相当な久しぶり感を持ち、自分はまだまだ兄離れが出来ないなと思っていた。
ユアイの頭を撫でながらヨシタカが言った。
「ユアイ、驚かないで聞いて欲しい。こちらにいる男の子はユキシ。下働きで雇っているんだ。途中の村で大人たちに交じって一生懸命に働く姿を見て、馬車の荷物の上げ下ろしを手伝ってもらってる。いい子なんでよろしく頼むよ」
「うん、いいよ。メイドさんも五人しかいないし」
「五人もいるのかよ」
やはり一軒家を借りて住んでいた。ギルドの職員の話によると、彼女がこの世界に降り立ってからすぐにオークやオーガを中心とする魔物がスタンピードで街を襲い、領主の騎士団や冒険者たちが抗戦するもジリジリと劣勢になっていた時に、妹が颯爽と現れ、たった一発の拡散エクスプロージョンで敵を撃破、あまりの強烈な破壊力で周囲を唖然とさせた。
それ以来、強力な敵が現れるたびに妹の出番がやってくるらしく既に街の守り神のように敬われているという。
俺とユキシは、ギルドで貰った簡単な地図を手に、ユアイの自宅へ向かった。二階建ての大きな家だそうで、ギルドや不動産屋(領主)が自ずから大きく立派な家を提供したのだという。賃貸だがお金は滞りなく支払われているそうで、きっちりしている妹らしいと兄として誇らしかった。
冒険者ギルドから街の中心を貫く大手通を真っ直ぐに領主邸へ向かって三十分ほど歩くと、その通りに面した大きな家が見えてきた。まるで屋敷と言えるほどに大きかった。こんな広くて大きい家に妹が一人で住んでいるのか? 掃除はきちんと出来ているのか? と疑問に思うほどだったが、門から家の方を見るとメイドさんが数人働いているのが見えた。むむむ……妹がお嬢様になっているのか……。
門から中に入って屋敷に近づくと、一人のメイドさんがこちらに気づき、俺達は頭を下げて「こんにちはお邪魔します」と声を掛けた。「あらあら、お客さんね、ユアイ様に御用かしら」と問われたので、会話を続ける。
「はい、私たちはヨシタカとユキシと申します。私はユアイの兄です。妹は在宅でしょうか?」
「はらはら、お兄様でいらっしゃいますか。ユアイ様はご在宅です。少しお待ちくださいませ」
妹に会いに来たのに、間にメイドさんという人が介し、想定していなかったせいで何となく居心地が悪くなった気がした。こじんまりした家に住んでいるとばかり思いこんでいたので、こちらも想定外といった感じだ。ユキシは「ほぇ~~」と感嘆の声を上げながらキョロキョロしていた。
すると、屋敷の二階の方から「どーーーーん」という扉を破壊するような音がして、ドドドド……という足音と共に誰かが降りてくる音がした。間違いない、妹のユアイだろう。自宅は屋敷にグレードアップしたが彼女は変わっていないようだ。
「おにいちゃーーーん」
「ユアイ!」
小さな体のどこにそんな力がというほどの勢いで玄関の大きな扉を激しく開け、妹ユアイが飛び出してきた。真っ直ぐにヨシタカの方へ走ってくる。ヨシタカも両腕を広げてユアイを抱き留める体勢になった。妹の弾丸のようなスピードの身体を軽く受け止め、ぎゅっと抱き締めた。家族ハグだ。
「久しぶりだなユアイ。元気にしてたか?」
「お兄ちゃんがいなくて寂しかったよぉ~~」
「よしよし、遅くなってごめんな、これからはずっと一緒だぞ」
「もう遅いよ~遅いよ~~待ちくたびれたよ、お兄ちゃんっ」
いつものようにヨシタカの胸に顔を埋めたユアイは、久しぶりの兄の香りに包まれ、幸せを感じていた。こんなに会いたかったなんて!と少しの期間離れていただけで相当な久しぶり感を持ち、自分はまだまだ兄離れが出来ないなと思っていた。
ユアイの頭を撫でながらヨシタカが言った。
「ユアイ、驚かないで聞いて欲しい。こちらにいる男の子はユキシ。下働きで雇っているんだ。途中の村で大人たちに交じって一生懸命に働く姿を見て、馬車の荷物の上げ下ろしを手伝ってもらってる。いい子なんでよろしく頼むよ」
「うん、いいよ。メイドさんも五人しかいないし」
「五人もいるのかよ」



