ユキシは村へ帰ると一応の雇者であるヨシタカと合流、見聞きしたことを報告した。明日にでも彼を誘って彼女に会いに行こうと考えている。
「その娘、年齢はいくつぐらいだ? そんな場所にいたら熊はじめ猛獣の餌食になるぞ。とはいえユキシを送ってくれて家も近所なのか。親御さんもきっと居ることだろうな」
「あ、はい、僕と一緒で十歳前後ですかねー。可愛い娘で白のブラウス、ワンピースが可愛くて驚き、天女さまかと思ったり。まさか、こんな田舎に都会的な美少女がいるなんて誰も考えませんよ」
「なんだユキシ、そのマナちゃんって娘に惚れたのか」
とユキシをカラかってくすくす笑うと、ぶすっとした黒い顔で睨んできた。
「あのですねー、今日の今日で惚れるわけないっしょ、可愛い娘という点、少し寂しそうな表情をしていたり、渓流でまた会おうということで、僕は一応報告がてらヨシタカ兄貴に話しているだけでさ……」
「ごめん、ごめん。マナちゃんと明日、待ち合わせに時間とか決まってるのかい?」
「何もないよ。ただ会いに行ったら居るならラッキー、居なかったのなら残念、そんな適当なのが子供の約束さね」
えっへんと胸を張るユキシだったが、表情から恋する男子の雰囲気が滲み出ていた。彼は両親を亡くし早くも独りで働いて生きているだけに考え方も早熟だ。悪戯で好きな娘の気を引くような少年時代とは異なる優しさを持つ印象である。だからヨシタカは割とユキシのことを気に入っていた。
「そうだ、湯で体洗いでもするか。ユキシは泥だらけだぞ。俺がきっちり洗ってやろう」
「ああ、それなら湯をもらってくるぜ。兄貴は先に体を拭きな。一応、俺は雇われだからな、後で自分で拭くよ」
「妙に遠慮がちだなユキシお前、でも、そういう点は将来なかなか良い男になるぜ、出世頭まっしぐらだな」
「とにかく今から湯をもらってくる」
夜は更けていき、各自のベットでくつろいで明日に備える。明日は特にやることも何もなく、ユキシの発見した渓流の穴場に行くということだけ。そこに行けば偶然にマナちゃんという女の子に会えるかもしれないという、非常に適当な且つゆっくりしたところだ。
ただ二人は重要視していなかった。この宿には座敷童が出るということを。すっかり忘却の彼方であった。
★★★★★
「あ、あにき! ヨシタカ兄貴! 起きて、起きてーーー」
「なんだ、どうしたユキシ」
「見てよ、食べ物が全部空、菓子もなくなってる! 甘いお気に入りの飴ちゃんやお菓子が……」
「あーこれは座敷童の仕業だな。そんなに気にするなよ」
「へっ? いいのかい兄貴。お菓子とか……」
「いいよ、実は昨夜さ、俺は目を覚ましていたんだ。座敷童が出てきたとき」
「兄貴、捕まえようとしなかったのかい?」
「ああ、三人いたな。部屋に入って来てな、目が合ったら彼らはしずしずと頭を下げて挨拶していた。とてもメルヘンちっくで良かったぞ。たぬきぐらいの大きさだったかな。危害を加える感じはなかったのでそのまま放置したよ」
「座敷童はもし目撃できたら幸運をくれるんだって伝説があるさ、兄貴やったな」
「そうか……まぁ期待しておこう。幸運があればいいな」
「でも幸運の代わりに飴ちゃんが無くなるとは……」
「ユキシ、朝飯食いに行こう」
「うん」
「朝食後、それはそうと例の穴場へ行くか?」
「うん、甘いもの、あの娘に持って行ってあげたかったな」
「その娘、年齢はいくつぐらいだ? そんな場所にいたら熊はじめ猛獣の餌食になるぞ。とはいえユキシを送ってくれて家も近所なのか。親御さんもきっと居ることだろうな」
「あ、はい、僕と一緒で十歳前後ですかねー。可愛い娘で白のブラウス、ワンピースが可愛くて驚き、天女さまかと思ったり。まさか、こんな田舎に都会的な美少女がいるなんて誰も考えませんよ」
「なんだユキシ、そのマナちゃんって娘に惚れたのか」
とユキシをカラかってくすくす笑うと、ぶすっとした黒い顔で睨んできた。
「あのですねー、今日の今日で惚れるわけないっしょ、可愛い娘という点、少し寂しそうな表情をしていたり、渓流でまた会おうということで、僕は一応報告がてらヨシタカ兄貴に話しているだけでさ……」
「ごめん、ごめん。マナちゃんと明日、待ち合わせに時間とか決まってるのかい?」
「何もないよ。ただ会いに行ったら居るならラッキー、居なかったのなら残念、そんな適当なのが子供の約束さね」
えっへんと胸を張るユキシだったが、表情から恋する男子の雰囲気が滲み出ていた。彼は両親を亡くし早くも独りで働いて生きているだけに考え方も早熟だ。悪戯で好きな娘の気を引くような少年時代とは異なる優しさを持つ印象である。だからヨシタカは割とユキシのことを気に入っていた。
「そうだ、湯で体洗いでもするか。ユキシは泥だらけだぞ。俺がきっちり洗ってやろう」
「ああ、それなら湯をもらってくるぜ。兄貴は先に体を拭きな。一応、俺は雇われだからな、後で自分で拭くよ」
「妙に遠慮がちだなユキシお前、でも、そういう点は将来なかなか良い男になるぜ、出世頭まっしぐらだな」
「とにかく今から湯をもらってくる」
夜は更けていき、各自のベットでくつろいで明日に備える。明日は特にやることも何もなく、ユキシの発見した渓流の穴場に行くということだけ。そこに行けば偶然にマナちゃんという女の子に会えるかもしれないという、非常に適当な且つゆっくりしたところだ。
ただ二人は重要視していなかった。この宿には座敷童が出るということを。すっかり忘却の彼方であった。
★★★★★
「あ、あにき! ヨシタカ兄貴! 起きて、起きてーーー」
「なんだ、どうしたユキシ」
「見てよ、食べ物が全部空、菓子もなくなってる! 甘いお気に入りの飴ちゃんやお菓子が……」
「あーこれは座敷童の仕業だな。そんなに気にするなよ」
「へっ? いいのかい兄貴。お菓子とか……」
「いいよ、実は昨夜さ、俺は目を覚ましていたんだ。座敷童が出てきたとき」
「兄貴、捕まえようとしなかったのかい?」
「ああ、三人いたな。部屋に入って来てな、目が合ったら彼らはしずしずと頭を下げて挨拶していた。とてもメルヘンちっくで良かったぞ。たぬきぐらいの大きさだったかな。危害を加える感じはなかったのでそのまま放置したよ」
「座敷童はもし目撃できたら幸運をくれるんだって伝説があるさ、兄貴やったな」
「そうか……まぁ期待しておこう。幸運があればいいな」
「でも幸運の代わりに飴ちゃんが無くなるとは……」
「ユキシ、朝飯食いに行こう」
「うん」
「朝食後、それはそうと例の穴場へ行くか?」
「うん、甘いもの、あの娘に持って行ってあげたかったな」



