渓の砂場に腰掛け、砂を手に取ってサラサラと目の前で流すと水晶のかけらが含まれているためキラキラと光が反射して美しかった。

 歩き疲れたユキシは川辺に行き水をすくって飲んでみた。冷たくて美味しかった。これが春だと雪解けの水になって手が切れそうなぐらい冷たい。今は初夏で良かった、快適な冷たさである。

 こんな時間をつぶしていると、ふいに後ろから声がした。川のせせらぎと混じり合って声っぽく聞こえることは多くある、人の声と周波数が近い(せせらぎ)が発生するからだ。だがしかし……それは本物の人間の声だった。

 ユキシは振り返った。

「わ、びっくりした!」

 女の子はいう。

「こんにちは、ここへはどうして来たの?」

 女の子は、涙袋が大きく目がやや垂れ目気味、おかっぱの黒髪、白いワンピースの服を着て、清楚な笑顔であった。ユキシはホッとして心を開いて説明をした。

「いや藪漕(やぶこ)ぎをして草木のトンネルを抜けたらここに来れたんだ。こんなに奇麗な場所で驚いちゃった。しかも淵には大きなヤマメやイワナがいるし、地元の人たちも滅多に来られない穴場なのかな。上流下流を壁に挟まれた僅かな砂の間だから、遡上で来るのも険しいし」

 女の子はきょとんとした顔をしながら横に掲げ、名前を名乗った。

「私はマナ。友達になりましょう。君の名前は?」

「僕はユキシ。旅の乗合馬車で働いているよ。ここに来たのは偶然だ。友達になろう、よろしく」

 ユキシとマナは子供同士ということで、あっという間に友達となった。ユキシは乗合馬車で荷下ろしをしているため人見知りをせず、わりと友好的に接することができるため、マナの境遇を察したりして、マナが警戒心で心を狭めることもなく接近していった。

「話疲れたね。そろそろ夕方だ。マナはご飯は? どこに住んでいるのかな?」

「あ、私はアッチの方角よ。今日は楽しかった、また明日ね」

「そうかい? じゃ、僕は村に戻るよ」

「うん気をつけてね。そこまで送るわ」

 マナは草木のドームの場所まで見送りに来てくれた。僕は先に村へ帰ることになった。少しだけ歩くからだ。山の中では暗くなると歩けなくなる。月が三つあるこの世界でも満月が重ならないと薄明かりにもならない。

 妙な出会いだった。兄貴にも会わせたいな……とユキシは歩を速めた。