======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
 幸田仙太郎・・・辻の高校時代の茶道部後輩。興信所所員。

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 私の名前は辻友紀乃。
 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
 旦那は「腹上死」した。嘘。
 本当は、がんだった。
 膵臓がん、って奴だ。
 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
 お馴染みさんは、これでも多い方だ。
 今日も、「お馴染みさん」の話。てか、幸田の話。
 「先輩。泣いていいですか?」
 「ええよ。お前なら。この大きな胸に縋って泣き。でも、オッパイは・・・。」
 「ちゃいますよ。」
 「何があったんや。ウチの依頼人に御厨言う男がおったんです。どうも、身内が金盗んだんやないか、って言うんです。所謂タンス預金やから、証拠はない。」
 「それで?」「本庄先生に、どういう罪になるか調べて貰って、俺は俺でサラ金で探したんです。被疑者は御厨の妹。母親が亡くなって、御厨は相続で姉と妹に多めに相続させたそうです。長男やのに。なんで金に困るのか?御厨もカツカツの生活してるのに。」
 「見つかったんやな、サラ金業者が。」
 「はい。刑事事件になるかも知れんから、『とばっちり』受けたく無かったら、って言ったら金額と日付を教えてくれました。今朝、昼前か。御厨の妹は警察に引っ張られました。死体発見者は、宅配食の配達員のおねえちゃんと、隣人の奥さん、そして、宅配便業者。明日、司法解剖の後、お通夜葬式。喪主は姉。」
 「妹の容疑は?」「死体遺棄。宅配食のおねえちゃんは、妹が持っている合鍵と別の鍵のありかを教えて貰っていました。独居やから、前回の弁当が残ってたら異常事態って判断してくれって言われてたそうです。胃の内容物がなく餓死らしいって分かっているけど、おかしいな、っていう所に、隣の奥さんの証言で、前日妹が訪ねていたらしい、って分かってます。俺は御厨の調査で分かった『借金』のこと、所長を通じて警察に報告しました。」
 「これやな。」と、私は幸田に夕刊を見せた。
 夕刊は、最近は午後3時半には来る。前は4時過ぎだったが、配達員の都合だろう。
 夕刊には、妹が財産相続の後、贅沢をしていたらしい。そして、幸田が調べたサラ金に手を出した。借金のことを報されると、全面自供した。妹は、有名な『政教合体』の総化学の会に入っていて、無論、小梅党にも入っていた。
 市橋内閣は、内閣改造で、連立与党の小梅党を切った。
 実際は、小梅党の新代表が、『市橋が嫌い』という個人的理由で連立解消したのだ。
 そして、資金繰りの「ツケ」の為、信者の負担が増えた。
 熱心な信者である、御厨の妹は、教団につぎ込んだ。
 そして、御厨が亡くなる直前、教団からの電話で急遽帰った。
 御厨が転倒した事を見て分かっていて、妹は帰った。
 「愚かやな。」声をかけた時、針が気持ちが良かったのか、寝息を立てて眠っていた。
 10分くらいなら、ええやろ。シーツは汚れてしまったが、まあ、多めに見ておこう。
 私って、優しい先輩やな、と思いながら、煎餅を囓った。

 ―完―