======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
 幸田仙太郎・・・友紀乃の後輩。
 柳金吾・・・辻鍼灸治療院の常連。

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 私の名前は辻友紀乃。
 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
 旦那は「腹上死」した。嘘。
 本当は、がんだった。
 膵臓がん、って奴だ。
 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
 お馴染みさんは、これでも多い方だ。
 今日も、「おとくいさん」の話。
 彼は、左の軟骨を無くしている。

 「柳。あれから、どうなった?」
 「オンラインフィットネスは辞めました。退会届、あっさりしたものでした。予め、フィットネスのチーフトレーナーに話していたし。」
 「ああ、それでええ。どうせ『少数派』は切り捨てられる。方針転換したって言っても、ダイエット辞めただけなんやろ?『健康体の人間が病気予防で参加する』のと、『疾患のある人間が悪化せん為に参加する』のでは、根本的に違う。『健康体の人間が病気予防で参加する』のがメインなら、そら、無理な運動にはついていかれへんわな。」
 「はい。その分、自分の時間に割り当てられます。」
 「それでええんや。無理な運動は根性ではカバー出来へん。出来て当たり前って考える方がエゴや。柳。ここで泣くのはタダやで。愚痴だけやのうて、泣きたい時は泣き。治療代はとるけど、泣くのも笑うのも愚痴言うのもタダや。でも、泣くとき抱きつくなよ。服汚れるから。」
 柳の治療が終り、柳は10分位泣いてから帰った。
 入れ替わりに、幸田が入って来た。
 「待たせたな。お前の分、10分短縮な。」
 「ええ、吉村新喜劇でした。」
 「ああ。幸田もたっぷり泣かせてやるからな。」
 「おおきに。先輩は人情鍼灸師ですね。」
 「今日は、股間の真ん中も針打っておくか。」
 「何ですのん、それ。」
 「上皇后様、誕生記念や。」
 「何ですのん、それ。」
 「お前は、ええ後輩や。」
 「ありがとうございます。」

 ―完―