======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
 瀬戸内輝男・・・常連客。
 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。高校の茶道部の後輩だから。

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 私の名前は辻友紀乃。
 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
 旦那は「腹上死」した。嘘。
 本当は、がんだった。
 膵臓がん、って奴だ。
 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
 お馴染みさんは、これでも多い方だ。
 今日も、長い付き合いの瀬戸内輝男がやってきた。
 瀬戸内は、長い介護生活が祟ってか、毎週1回の治療の筈が、今週は3回だ。
 「瀬戸内さん。今日は『矯正』やったるわ。」
 『矯正』は柔道整復師の技だ。体の『ゆがみ』をほぐすことで、凝りをほぐす。保険は効かない。だが、文句言う人間はいない。
 整形外科のリハビリでは頼りないから、来るのだから。
 一通り、処置を終った後、瀬戸内さんは、スマホでどこかに電話した。
 「おかしいな。名前と生年月日聞くからデータ調べてるのかと思ったら、『後で担当者がかけ直します』って・・・。」
 私はピンときた。「取り込み詐欺」の類いに違い無い。
 スマホを奪って、履歴を確認した。
 ショートメールで『折り返し発信』をしてしまっている。確かに名前と生年月日を言っていた。
 どうしたらいい?詐欺にも色々ある。「オレオレ詐欺」に「特殊詐欺」、訪問詐欺」。今、警察が一番困っているのが「フィッシング詐欺」あるいは「取り込み詐欺」だ。
 敵は、「アシ」が付かないように、色んな手を使う。「非通知発信」にしたり、「使い捨てケータイ(スマホ)」にしたりする。
 とにかく、「折り返し電話」は、相手に協力したことになる。相手の「善意」につけ込むのだ。
 その電話番号は登録され、「カモ名簿」に登場。何度でもどこからでも、どの電話番号からでも「アタック」してくる。言葉は丁寧だが、悪意が裏に潜んでいる。
 メールでも電話でも、自分が登録した相手以外には、簡単には相手しないことだ。
 着信拒否は「かけてきた相手」にだけ有効だ。
 さて、どうすれば、一番有効か?
 私は、頼りになる後輩を電話で呼び出した。
 「幸田。すぐ来い!!」
 ―完―