鍼灸師辻友紀乃

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。

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 私の名前は辻友紀乃。
 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
 旦那は「腹上死」した。嘘。
 本当は、がんだった。
 膵臓がん、って奴だ。
 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
 お馴染みさんは、これでも多い方だ。
 今日は、後輩の幸田の話。一番の「おなじみさん」。と言っても・・・。

 私は、幸田の話を、針を打ちながら聞いていた。
 「大変な事件が続いているんやなあ。シーアイエーの人ていうのは分かったけど、何で、運転免許証2つ持ってたんやろ?素人やから、見当つかんな。」
 「そらあ、俺らかて同じですよ。警察が調べるのを待つしかないですわ。」
 「今日の仕事も、その続きか?」
 「いえいえ。いつもの仕事。浮気現場押えられても、『ちゃうねん、ちゃうねん!!』ちゃうねん教か!!って奴。」
 「そんな宗教あったら、おもろいな。ところで、ワコとは、どうなっってん?こましたか?倒したか?」
 「先輩、下品ですよ。後輩に浮気勧める先輩なんていないですよ。」
 「珍しいか?」「希有です、希有。ワコは妹みたいなもんやさかい。ポーズですよ、ポーズ。ワコは俺に気イある振りしてるだけで、ホンマは誰か他に好きな人いて、俺はカモフラージュです。カモフラージュ。」
 「コモフラージュ?」
 「カモフラージュ。見せかけ、ですわ。」
 「見せかけ?すると、社交辞令か。」「はい。」
 「そうか?名付け親になったろ思うてるのに。」「不要です。そんな心配ご無用です。」
 「けど、澄子は、子供産めるんか?」「まあ、難しいでしょうね。」「
 希有やろ、希有。」
 幸田は、私が針を抜き終えると、さっさと服を着て、財布を出した。
 「もう帰るんか。」「もう帰るんか・・・って、どんな台詞・・・。」
 幸田が言いかけると、幸田のスマホが鳴った。
 「え?無理心中?」
 幸田の後輩の調査員の倉持の声だ。
 私は、出しかけた財布から札を抜き出し、幸田に返した。
 「出番やな、幸田探偵。日本の治安は、君たちにかかっている。ガンバレ!!」
 幸田は、何か言いかけて、出て行った。全く可愛い後輩や。
 私は、菓子箱から、かりんとうを出して頬張った。
 「旨い。希有やな、希有。」
 ―完―