「っつう」
「軽い脳震盪みたいだな」
「ああ、モロにくらっちゃたもんな」
アイシングをこめかみにあて病院の待合い室で座っていた。その隣には頬に青痣が残る千納時が腰をおろしている。
とりあえず、事情聴取も先程終わり、やっと落ち着いた所なのだ。まあ結局こんな騒ぎになり、学校も行くような状態ではなく欠席した。第一こんな状況で登校したらえらい騒ぎになる。
(まあ定時制だしある程度の小競り合いはあるけど、全日制ってどうなのよ)
思わず千納時に視線を送ると、それに気づいた彼が、『何』と聞いてきた。
「いや、何だ、その…… 痛々しいな顔」
「それはお互い様だろ」
「まあそうだけど」
その後、互いに沈黙する事暫し。彼が両膝に肘を突くと指を組み、今度は千納時が、こちらをチラリと見た。
「…… あの時何故、俺を庇った? 黙って見ていれば脳震盪にもならなかった。いやそれよりもどうしてあそこがわかったんだ?」
「いや、偶然見かけただけ。ただ、店の件もあったから、こうなるんじゃないかなって思ってさ。まあ庇ったのは、体が勝手に動いたっていうか…… 昼間の事もあったし、すげーあの時は有り難かったっていうのも作用したのかもしれねーー ただ、やっぱり顔見知りが目に前でヤられるの見てるって結構辛いんだよな」
つい言うつもりもなかったような話しをしてしまい、苦笑いを浮かべ、照れ隠しをしつつ、彼を見た。すると、千納時はじっと、翠眼をこちらに向け自分を凝視している。その瞳はどこかいつもそこはかとなく漂う鋭さはなく、ただただ、自分を見つめているのだ。
「あ、あのっ 自分そのっ、ははは」
「この前俺が言った言葉を訂正するよ。君は偽善者ではない」
「じゃあ。何だよ」
「超ド級のお人好しだ」
「はあ? それ前者と変わんなくねー」
「違う。お人好しの方がイメージが良いだろ」
「いや、50歩100歩だ。っていうかさ、その毒舌どうにかした方が良くね。一長一短だぜ」
「そうか。俺の随一の長所だと思うだけど」
「それは絶対ねー」
「全否定か。残念」
すると、千納時がクスリと笑ってみせたのだ。彼の含みのある笑いは何回も目にしてきたが、今目にしている笑いは今までとはまるで違うやんわりとした雰囲気だ。そんな顔を見るのは初めてで、一瞬驚きもしたが張っていた気が少し解けたような感じがすると共に、千納時につられ笑みを浮かべる自分がいた。
「軽い脳震盪みたいだな」
「ああ、モロにくらっちゃたもんな」
アイシングをこめかみにあて病院の待合い室で座っていた。その隣には頬に青痣が残る千納時が腰をおろしている。
とりあえず、事情聴取も先程終わり、やっと落ち着いた所なのだ。まあ結局こんな騒ぎになり、学校も行くような状態ではなく欠席した。第一こんな状況で登校したらえらい騒ぎになる。
(まあ定時制だしある程度の小競り合いはあるけど、全日制ってどうなのよ)
思わず千納時に視線を送ると、それに気づいた彼が、『何』と聞いてきた。
「いや、何だ、その…… 痛々しいな顔」
「それはお互い様だろ」
「まあそうだけど」
その後、互いに沈黙する事暫し。彼が両膝に肘を突くと指を組み、今度は千納時が、こちらをチラリと見た。
「…… あの時何故、俺を庇った? 黙って見ていれば脳震盪にもならなかった。いやそれよりもどうしてあそこがわかったんだ?」
「いや、偶然見かけただけ。ただ、店の件もあったから、こうなるんじゃないかなって思ってさ。まあ庇ったのは、体が勝手に動いたっていうか…… 昼間の事もあったし、すげーあの時は有り難かったっていうのも作用したのかもしれねーー ただ、やっぱり顔見知りが目に前でヤられるの見てるって結構辛いんだよな」
つい言うつもりもなかったような話しをしてしまい、苦笑いを浮かべ、照れ隠しをしつつ、彼を見た。すると、千納時はじっと、翠眼をこちらに向け自分を凝視している。その瞳はどこかいつもそこはかとなく漂う鋭さはなく、ただただ、自分を見つめているのだ。
「あ、あのっ 自分そのっ、ははは」
「この前俺が言った言葉を訂正するよ。君は偽善者ではない」
「じゃあ。何だよ」
「超ド級のお人好しだ」
「はあ? それ前者と変わんなくねー」
「違う。お人好しの方がイメージが良いだろ」
「いや、50歩100歩だ。っていうかさ、その毒舌どうにかした方が良くね。一長一短だぜ」
「そうか。俺の随一の長所だと思うだけど」
「それは絶対ねー」
「全否定か。残念」
すると、千納時がクスリと笑ってみせたのだ。彼の含みのある笑いは何回も目にしてきたが、今目にしている笑いは今までとはまるで違うやんわりとした雰囲気だ。そんな顔を見るのは初めてで、一瞬驚きもしたが張っていた気が少し解けたような感じがすると共に、千納時につられ笑みを浮かべる自分がいた。
