友達以上ですが何か?

 暑い日差しが差す街並みを自分は汗を拭きつつ、店へ向かう。本当は今日のシフトは夕方からだったのだが、暑すぎて家にいられないからだ。まあ、エアコンはあるのだが、使うと電気代がバカにならず、妹は学童に行っている為、1人しかいない部屋で使うにはもったいない。
 なので最初は図書館に行ったのだが、席が空いておらず、他のクールスポットに行ったが、どこも満員御礼だったのだ。なのでだいぶ早いが、カフェへと向かい、店内で時間をつぶそうと思ったのである。
 兎に角この暑さをどうにかしたい一心で、人が闊歩するいつもの道を歩き進めて行くと、前から見た事のある人物が視界に入った。すると相手も自分に気づき大きく手を振る。

「優斗」

 自分も小走りで彼に近づく。肩まであるセミロングブラウンの髪を靡かせ、年齢も26歳なので若い女性のような嫋やかな空気を纏った人物。ただ身長が190を越えているので、周りより頭一つ出ている。そんな彼は自分が働き初めて一番お世話になった人。

「和実屋店長。元気でしたか!! っていうかも店長じゃないっすよね。すいません」
「気にする事ないよ。確かに今はその役職じゃないけど、優斗にとっては店長のまんまだろうからね」
「にしても今日はどうしたんすか?」
「うん。ちょっと店に用事があったんだけど、優斗今から仕事?」
「仕事は夕方からなんです」
「そうか。時に優斗暑くない?」
「めっちゃ暑いです」
「どっか入らない?」
「良いっすね!!」
「じゃあ、君の好きな所行こう」
「でもっ」
「良いんだよ。これでも昇進した身で、前より給料貰ってるから。それにこういう時は学生なんだし、変な気を遣わない」
「じゃあ、言葉に甘えて」

 自分はそう良い店とは反対方向へと向かう。

「和実屋さんこっちっす」

 久々に会えた嬉しさに思わずテンションが上がる中、軽い足取りで、目的の店へと向かった。



「これだけで、良かったの?」

 昭和レトロの喫茶店に入っている。ベルベットのフカフカソファに、年期の入ったテーブル。その上にはコーヒーとサンドイッチが置かれている。前から気になっていたのだが、昼間営業の為、入った事がなかったのだ。

「はい。ずっと気になってた店だし、これただけでも満足っす」
「そう? なら良いんだけど」
「にしても、今回店に来るなんて何あったんすか?」
「大した事じゃないけど、防犯カメラの画像を本部でもリアルタイムでチェックする事が出来るようにしたんだ。まあ二重チェック体制って感じかな。店舗もチェック画面あるけど、基本パソコン画面だし、他の機能と併合してるだろ? 今回本部は防犯カメラオンリーの代物だから性能が良いだよ。まあでもそもそも店の防犯カメラあるの事務室だけだから、優斗は入った事ないか」
「そうすっね。あそこは入った事ないです」
「まあ。あの店舗全国でエフィールートが20店舗あるんだけど、二番目に古いんだよ。だから働いていても大変だろ?」
「まあ、箇所箇所色々とガタは来てる感じはあるっす」
「事務所もそうなんだよね。私が店長やってた時なんて、見た目ではわからないんだけど袖机が接している壁が変に凹んでしまっていて、袖机との間に思ったより大きな空間が出来てしまっていたんだよ。しかもその袖机が、少し立て付けもおかしくなってて斜めなの。だから度々なんかないーー て事あったんだけど、それ知ってからは、万事解決。とりあえず、その事は近藤店長にも話してあるんだけど…… 時に優斗」

 彼がいきなり真面目な表情に変わる。

「ど、どうしたんすかいきなりっ」
「風村が帰り際にコソっと教えてくれたんだけど、近藤店長のあたりが強いらしいな」
「はははは。まあそんな感じはあるっすね。でも自分的にはそういう人もいるって事わかってるつもりだし、第一に他のスタッフが皆良い人なんで、大丈夫っすよ」
「そうか。でも、ちゃんとした君の意志がある時は発言するように。君は君が思っている以上に有能なんだよ。臆する事もなければ卑下する事もないんだから」
「和実屋さん……」

 本部に行っても尚、こうやって気にかけてくれてる事がとても有り難い。ただそらがうまく言葉に出来ない。そんな自分に気を遣った和実屋がメニューを手にした。

「ほ、ほら優斗ホットサンドもあるみたいだよ。食べる?」
「良いんすかっ、食べたいっす!!」

 結局当初は頼むつもりもなかったがその後、ホットサンドと共に、コーヒーをもう一杯お替わりした。