「かーちゃんマジ?」
母から電話が掛かってきた。どうやら、自分が住んでいるアパートで電気系統の故障が起き、家の家電が調子が悪くなってしまったようなのだ。うちの母親は家電関係は全くもってわからない人で、いつも自分が担当している分野であり、その故障は今朝一番にあったとの事。ただ、自分が休みを謳歌してると思い、朝一の連絡は避けたらしい。ただ、夕刻にバタバタするなら昼間に連絡をした方が良いと判断したようなのだ。
まあこちらも、海の家は午前中で終了し、片づけも丁度終わった所であり、この後は自由時間という矢先の電話。ぶっちゃけ海で泳ぎたかったが、致し方ない。自分は事情を説明し、荷物をまとめ民宿の玄関に向かう。すると、主人が労いの声と給料を渡し見送りをしてくれた。自分は会釈し外に出ると、水着に着替えた4人の姿が視界に入る。
「わりーー 俺も泳ぎたかったけど、先帰るわ」
「おう、気をつけて帰れよ。にしても残念だぜ。千納時も用事でさっき帰ったけど、優もかよ」
「家族の事だ。それはしょうがない話だ。にしても今回は本当に助かったぞ都築。また来年声かけるかもしれんが、その時もよろしく頼む」
「気をつけて都築君」
「…… また学校で、優」
なんとなく目を合わせてくれない田沢の姿が目に留まりつつ、4人は海辺に向かう。
「田沢っ」
自分は声を上げ彼女の名前を呼ぶ。
「ちょっと良い?」
すると、田沢は自分の前に立った。
「何?」
「あ、そのだなっ」
昨夜からずっと考えていた彼女の質問の答え。未だに朧気な所はある。ただ、彼女が勇気を持って言った事をなあなあに扱いたくないし、これらも友達でいたい。その気持ちは確かな事。だから、しっかりと伝えないと思ったから……
「昨日の夜の事、なんだけど…… 自分気になる人ならっ、いる…… ただそれはっ」
「私ではないって事でしょ」
「…… ああ。田沢もそりゃ気になるけど、恋愛的な気になる? とまた違うっていうか……」
「そっか。ハッキリ言ってくれて有り難う。気をつけて帰ってね優」
「お、おう」
すると彼女は走りだし、数メートル離れた所で振り返り手を振る。
「またそのうちに、優の気になる人教えてね」
笑みを浮かべた彼女はすぐさまそこから立ち去り、視界から消えた。
(田沢有り難うな)
最後、彼女かきっと無理をしながら笑ってくれたのだろう。感謝の思いを噛みしめ。自分は最寄り駅へと向かう。時間によっては本数の少ない単線である。時間を確認していなかったがどのくらい待つ事になるだろうか。自分は時刻表を見る。すると、後数分で到着するようだ。慌てて、ホームにでると、数人の人が待っていた。その中に千納時が立っていたのだ。
「先に出たのに待ちぼうけか?」
クスクスと笑い近づいていく自分に、驚きの表情を浮かべる。
「どうした都築」
「いやな。自分の住むアパートで電気系統がいっちゃたらしくて、うちの電化製品が大変らしいだわ。かーちゃんそういうのからっきしでさ、ヘルプ要請きた」
「そうか。でも残念だったな。せっかく海に泳げるはずだったのに」
「まあしょうがねーよな。にしもて千納時。自分より先に出たよな」
「ああ。電車が来ない。ただもう来る筈だ」
すると、ホームにアナウンスが流れ、間もなくして電車が到着した。自分等はそれに乗り込む。車内は人もまばらで座席も選び放題だ。自分等は隣同士で座り、車窓広がる海を見つめる。すると一回大きく揺れた後、ゆっくりと電車は動き出す。
「あっと言う間だったな都築」
「ほんとそれな。また明日からはいつもの生活か」
「ああ…… でも本当にっ……」
彼の言葉が途切れたと思いきや片方の肩が重たくなる。思わず視線を送ると、彼の後頭部が自分の肩にもたれていたのだ。瞬時に目を反らす。
(へっっっ)
叫びそうなったものの、それをぐっと堪えつつ、再度ゆっくりと彼の方を見ると、白く滑らかそうな肌に、長い睫と閉じられた瞼。耳を凝らせば、小さな寝息。
(寝た、のか?)
自分達よりやり慣れていない事をやったのだから、いつも以上に疲れて当然である。
(まあ、肩貸したからって減るもんでもないし)
自分はやんわりと笑みを溢し、寝息かく彼を目視しする。そんな無防備に近い彼を真近で見るのは初めてであり、どこかいつもより幼い。
(何だか、こんな顔見るとやっぱり思っちゃんだよな)
自分とて彼が他者よりも心を開いてくれている事はわかる。だから願ってしまう。
(灯篭に世界平和と書いたけど本当は、『琉叶に笑っていてほしい』って)
母から電話が掛かってきた。どうやら、自分が住んでいるアパートで電気系統の故障が起き、家の家電が調子が悪くなってしまったようなのだ。うちの母親は家電関係は全くもってわからない人で、いつも自分が担当している分野であり、その故障は今朝一番にあったとの事。ただ、自分が休みを謳歌してると思い、朝一の連絡は避けたらしい。ただ、夕刻にバタバタするなら昼間に連絡をした方が良いと判断したようなのだ。
まあこちらも、海の家は午前中で終了し、片づけも丁度終わった所であり、この後は自由時間という矢先の電話。ぶっちゃけ海で泳ぎたかったが、致し方ない。自分は事情を説明し、荷物をまとめ民宿の玄関に向かう。すると、主人が労いの声と給料を渡し見送りをしてくれた。自分は会釈し外に出ると、水着に着替えた4人の姿が視界に入る。
「わりーー 俺も泳ぎたかったけど、先帰るわ」
「おう、気をつけて帰れよ。にしても残念だぜ。千納時も用事でさっき帰ったけど、優もかよ」
「家族の事だ。それはしょうがない話だ。にしても今回は本当に助かったぞ都築。また来年声かけるかもしれんが、その時もよろしく頼む」
「気をつけて都築君」
「…… また学校で、優」
なんとなく目を合わせてくれない田沢の姿が目に留まりつつ、4人は海辺に向かう。
「田沢っ」
自分は声を上げ彼女の名前を呼ぶ。
「ちょっと良い?」
すると、田沢は自分の前に立った。
「何?」
「あ、そのだなっ」
昨夜からずっと考えていた彼女の質問の答え。未だに朧気な所はある。ただ、彼女が勇気を持って言った事をなあなあに扱いたくないし、これらも友達でいたい。その気持ちは確かな事。だから、しっかりと伝えないと思ったから……
「昨日の夜の事、なんだけど…… 自分気になる人ならっ、いる…… ただそれはっ」
「私ではないって事でしょ」
「…… ああ。田沢もそりゃ気になるけど、恋愛的な気になる? とまた違うっていうか……」
「そっか。ハッキリ言ってくれて有り難う。気をつけて帰ってね優」
「お、おう」
すると彼女は走りだし、数メートル離れた所で振り返り手を振る。
「またそのうちに、優の気になる人教えてね」
笑みを浮かべた彼女はすぐさまそこから立ち去り、視界から消えた。
(田沢有り難うな)
最後、彼女かきっと無理をしながら笑ってくれたのだろう。感謝の思いを噛みしめ。自分は最寄り駅へと向かう。時間によっては本数の少ない単線である。時間を確認していなかったがどのくらい待つ事になるだろうか。自分は時刻表を見る。すると、後数分で到着するようだ。慌てて、ホームにでると、数人の人が待っていた。その中に千納時が立っていたのだ。
「先に出たのに待ちぼうけか?」
クスクスと笑い近づいていく自分に、驚きの表情を浮かべる。
「どうした都築」
「いやな。自分の住むアパートで電気系統がいっちゃたらしくて、うちの電化製品が大変らしいだわ。かーちゃんそういうのからっきしでさ、ヘルプ要請きた」
「そうか。でも残念だったな。せっかく海に泳げるはずだったのに」
「まあしょうがねーよな。にしもて千納時。自分より先に出たよな」
「ああ。電車が来ない。ただもう来る筈だ」
すると、ホームにアナウンスが流れ、間もなくして電車が到着した。自分等はそれに乗り込む。車内は人もまばらで座席も選び放題だ。自分等は隣同士で座り、車窓広がる海を見つめる。すると一回大きく揺れた後、ゆっくりと電車は動き出す。
「あっと言う間だったな都築」
「ほんとそれな。また明日からはいつもの生活か」
「ああ…… でも本当にっ……」
彼の言葉が途切れたと思いきや片方の肩が重たくなる。思わず視線を送ると、彼の後頭部が自分の肩にもたれていたのだ。瞬時に目を反らす。
(へっっっ)
叫びそうなったものの、それをぐっと堪えつつ、再度ゆっくりと彼の方を見ると、白く滑らかそうな肌に、長い睫と閉じられた瞼。耳を凝らせば、小さな寝息。
(寝た、のか?)
自分達よりやり慣れていない事をやったのだから、いつも以上に疲れて当然である。
(まあ、肩貸したからって減るもんでもないし)
自分はやんわりと笑みを溢し、寝息かく彼を目視しする。そんな無防備に近い彼を真近で見るのは初めてであり、どこかいつもより幼い。
(何だか、こんな顔見るとやっぱり思っちゃんだよな)
自分とて彼が他者よりも心を開いてくれている事はわかる。だから願ってしまう。
(灯篭に世界平和と書いたけど本当は、『琉叶に笑っていてほしい』って)
