「伸也、田沢。明日から文化祭はじまるっていうのにマジやばいからな!!」
「優斗。わかってるけどさーー」
「兎に角。今日は準備最終日。その意味わかるよな」

 自分の後ろに、二人が渋い表情を浮かべついてくる。明日からとうとう堂鈴祭が始まるのだ。結局二人は準備には一回も参加していないものの、店番はあるわけで、その確認と手順のレクチャーをやるためである。ただこの状況で彼等達が手順諸々をやってくれるかは不透明。実際、店番等を除外する話しもあったが、それだとあまりにも人が少なくなってしまう事もあり、今回無理やり連れてきた。ただ、これでうまくいく気が全くしない。自分は一回溜息を吐きつつ、準備室前のドアを開けた。

「お疲れっす」

 すると、教室半分に一年学年役員が製作した学校の特色を説明が展示してある横に、屋台の雰囲気を醸す、輪投げと白い布の引き二段の射的場が並ぶ。その前には既に三人が用紙を見ながら確認をしていた。

「相変わらず早いっすね」
「そんな事はないよ。俺も今3年から解放されてここに来たばかりだから。それより……」

 千納時が背後の二人をじっと見た。二人は彼を見ることなく室内に入りつつ、三人のいる所の近くまで行く。

「とりあえず、集まったので最終確認始めるけど」
「ねえ。千納時君。話す前にちょっといいですか?」
「何、住川さん」
「これから、店番とかの話しもあるとは思うけど、あの二人、本当にローテーションにいれるの? 準備にも顔出していないし、絶対に来るわけない。まあ最初の印象通りですけど」
「はあ? お前等全日制の生徒はいつもそうやって見下してるから気にいらねーだよ!! なんでも見た目とかで決めつけて判断しやがって!!」

 言葉の勢いのまま、彼は、彼女の前へと向かう。

「やめろ伸っ」

 自分が止めに入る前に、住川は彼の圧に怯え後ずさる。と、射的の台に勢いよくぶつかったのだ。

「きゃっ」

 声を上げ倒れると同時に布が破ける音がし、彼女の体重が台に掛かる中、角俣が住川の手を掴む。そのお陰で、彼女は完全に転倒する事はなかった。とりあえず、安堵するものつかの間、自分等の目のお前には、斜めに崩れたような形になった台が視界に入る。暫し沈黙の後、角俣に腕を捕まれたままの住川がへたりと座り込む。

「ど、どうしようっ、明日からなのにっ、私っ」

 声を振るわせ、下を向く。

「お、俺っ、悪くねーしっ」
「そ、そうよっ、だって、あの人がこの前もそうだけど、喧嘩腰な事を言って来るからでっ、それに実際に壊したのは私達じゃないわよ」

 自分は二人を見る。

「だからって、伸と田沢は悪くねーとはいわせねーぞ!! お前等一回も準備きてねーだから、意見言えるような状態じゃねーし。まあ、確かに思う事は結構あるけど、それはやったやつが言うから周りが賛同してくれる話だろ」

 その言葉に気まずそうな表情を浮かべる2人に対し、自分はやんわりと微笑む。

「それよりもだ。せっかく全員久々に集まったんだし、これどうにかしようぜ」

 自分は伸也と田沢の背後に周り二人の肩を抱き笑う。

「で、どうするよ」
「はあああ、わかったよ。とりあえずこの台、何で出来てるわけ?」

 伸也は自分から離れ、台を見る。

「ふーん。簡易的な折りたたみスチール台かーー これなら俺日頃から板金仕事してるから直せそうだな。補強すればちったーー 強度増しそうだし」

 ツブツブ呟く彼に対し、田沢は破けた布を手にして、自分を見た。

「ねえ、優。これ屋台風にしなきゃ駄目。コンセプト変えても良い?」
「だって。どう3人」
「因みにどんなコンセプトにしたいんだい?」
「ゴスロリっぽく。今ってホラー流行っていうから。私、ゴスロリメインのアンテナショップの店員だから結構そういうアレンジ嫌いじゃないの」
「二人はどうだい?」
「明日からだからな。形になれば良しだろう」
「わ、私もですっ」
「うん。俺も輪投げとコンセプトが変わってしまうが、そのギャップも面白いと思う」
「って事でやりますかっ」

 その後、自分等6人は遅くまで、作業に勤しんだ。