SNSのダイレクトメッセージで、一人の女性から連絡が入った。

「2010年度の卒業アルバムに、知らない生徒が写っていたんです。
今は写っていませんが、本当です……信じていただけないかもしれませんが。
当時、そのことに気づいた男子が失踪して、大騒ぎになったんですよ」

場所は長野県・西高校。
三年四組の集合写真に「渡部」という名の男子が写り込んでいたという。

最初に異変を口にしたのは、長谷川博人さん(当時18歳)だった。

彼は仲間を集めて「渡部」の正体を突き止めようとしたが、2011年3月、通学途中に姿を消した。それから一年間消息不明ののち、無事に発見されたという。

現在はオーストラリア在住と聞き、直接の取材は叶わなかった。

代わりに、当時の担任だったS先生(55)に話を聞くことにした。

「当時の状況を、覚えている範囲で構いません。詳しくお話しいただけますか」

S先生は咳払いをひとつしてから、静かに語り始めた。

「点呼はいつも合っていました。卒業式の日も欠席者はいなかった。そう記憶しています」

「つまり、何の異常もなかった、と」

「はい。ただ、後になって写真を見返したとき、『知らない生徒』が写っていると騒ぎになった。その子を調べていたのが長谷川君で……一週間後にいなくなった」

先生はそこで声を落とした。

「……その後、長谷川君が帰ってきたんです。まるで何事もなかったように。でも、あの一年間の記憶がすっぽり抜け落ちていたんですよ」

「卒業式の日が、最後の記憶だと?」

「そうです。本当に、不思議なことなんですけどね……」

S先生の証言はそこまでだった。

新しい手がかりを得られると思ったが、やはり簡単ではない。

今後はより大規模な調査が必要になるだろう。
当面はSNSを通じて、幅広く情報提供を呼びかけるつもりだ。