君がいた世界の色

病院の白い廊下を歩く陽菜と葵。

 診察室の扉の向こうから、医師の静かな声が漏れてくる。



「陽菜さんの検査結果ですが⋯⋯心臓に重い病気が見つかりました。」

 葵の胸がぎゅっと締め付けられる。

 医師の言葉はまるで凍りついた冬の空気のように冷たかった。



「残念ながら、余命は数ヶ月と考えられます⋯⋯」

 その瞬間、陽菜は小さく笑った。

 作り笑いのように見えたが、そこには強い意志が隠されているようにも感じられた。



「そう⋯⋯なんだ。」

 陽菜はまるで何かを覚悟していたかのように、淡々と話した。



「葵、私⋯⋯」

 彼女の声は震えていた。

「まだまだ、やりたいことがある。」

 葵は言葉を失い、ただ彼女の手を握りしめる。

「だから、お願いがあるんだ。」



 陽菜はそっと葵の瞳を見つめて。

「水族館に行こうよ。」



 突然の言葉に葵は驚いた。

「水族館?」



「うん。まだ行ったことないんだ。」

 陽菜は微笑みながらも、どこか切なさを帯びていた。



「時間は限られてるけど、葵と一緒なら、どんな場所も特別になると思う。」

 葵は涙をこらえながら頷いた。



「約束しよう、陽菜。必ず一緒に行こう。」

 陽菜の手が強く葵の手を握り返す。



「ありがとう⋯⋯葵。」