ゐ二し古ゑ乃宮中妖りんレん花恋絵巻

…ぽぅぽぅと仄のあかる
夕月の傾く藍夢闇のなかを、花化野をゆく。

……トントン。…たたた。
…トン。…たたた。

…夕雅楽の囃子太鼓がかける。

…夕涼宮夜のふける花野を夏衣を
なびかせて変わりゆく、季節の中をましろ行く。

茄子や胡瓜の胴体に木を指した
馬や牛の背に乗って、彼岸花の咲く

田畑の小道を揺られてゆく。

蝉の声が鳴り響く、並木道を通って、
鳥居をくぐると、花化野の社ロにつく。

石で積み上げた奥津城が並ぶ。
花化野では、たくさんの石の神庫があった。

…雨上がりの匂い。
…夕立の上がった空に夏風が吹く。

彼は、精霊馬に乗って、
三途の川を渡った。

…目の前に美しい花畑が広がる…。

三途の川を渡ると、美しい
姫鬼が一人花畑の野のなかで墓守をしている。

彼は黒の正装に身を包み、
黒髪をなびかせると、その美しい方をみた。

……                      ……
 …                      …

‐…パチパチパチ…‐

〈…火花が咲る…〉

…線香花火の先がおちる。

‐…パチパチ…ポタリ…‐

雷みたいに走った花の火がはじける。

…遠くの煙の送り火…

…大きな恋君瞳で、彼名タがみつめた…。

「…私を、みてはいけない…。」

…美しい鬼が言う。

‐…パチパチパチ…‐

〈…火花が咲る…〉

…花が赤や黄に染まる…

…花畑のなか美しい眠り姫は、
静かに横抱きになる…。

…彼が手を伸ばす…

‐…とても、恋しい人だった…‐

…私を、決して、みてはいけない…

‐…パチパチパチ…‐

〈…火花が咲る…〉

…線香花火の先がおちる。

‐…パチパチ…ポタリ…‐

…火薬の匂い。子ども達の笑う声。

…ぼっこが名を、呼んでいる…。

‐…とても、恋しい人だった…‐

…私を、決して、みてはいけない…

……                      ……
 …                      …

花化野のなかで、その美しいをとめは
村の子ども達を連れて、花畑を歩いてゆく。

…水を巻き、米をまいて、花を飾る。

…線香に火をつけて、片手で消す。

…念仏を唱えて、仏を供養する。

…ぼっこ達が言う。

「…野菜を供えて‐!」

花茨ノ君はぼっこを手に取り、
頭を取って、野菜にした。

「…するなよ!」

頭を押さえながら、ぼっこ達が言う。

野菜だけになったぼっこを彼が、
村の子ども達におかげにして渡していた。

子ども達が「…供えて‐!」って
言うと、「…供えてやんない!」って

ぼっこ達が言う。

彼が「…供えてやんないとダメだろ。」って
さとしたら、「…供えてやんない!…ば‐か!」って

ぼっこが言うと、走って逃げた。

そう言って、お供え物を
ぼっこが彼にぶつけると、

「…するなってば!」

って彼が叫ぶ。

「…腹わたを食うぞ。」

と彼がぼっこをおどすと、

「…できるもんならやってみろ!」

と言って、ドロン!て消えた。

❀❀❀

…夕宵宮夜(ゆうよいみやい)…。

…星の瞬く宵宮に百鬼夜行の夜がゆく。

花化野の無縁仏の魂が集まって、
墓前で話をする。

空の上を急ぎ足で走ってゆく
牛鬼が牛車を引いて、鬼に食われた

娘の魂を運んでゆくのがみえた。

…夏祭りがゆく。

…囃子太鼓の笛の音が響く。

…ぼっこ達の笑う声が聞こえてきて、
並ぶ屋台の甘い匂いがする…。

…浴衣を着た子ども達がかけて行って、
花火の音に空見上げる。

…花火で染めタ。夕宵宮の夜空…。

…響き渡る花空の音に
火薬の色と匂いとが、辺り一面に広がった。

……                      ……
 …                      …